2024年2月下旬〜3月上旬
シーン0:2/20・午後13:10・くもり・気温23℃(@0:00〜)
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。
休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が越冬する巣穴を自動センサーカメラで見張っています。
異常な暖冬で積雪量が少なく、あちこちで地面が露出しています。
少なくとも3つの巣口(左から順にL、M、R)が点在しています。
シーン1:2/24・午後23:40・気温-4℃(@0:04〜)
深夜に監視カメラが誤作動したようです。
晴れて静かな夜でした。
新雪が積もり、雪原を往来するタヌキなど野生動物の足跡が残されています。
シーン2:2/25・午前4:01・気温-7℃(@0:07〜)
シーン3:2/27・午前5:57(@0:11〜)日の出時刻は午前6:12。
夜明け前にホンドギツネ(Vulpes vulpes japonica)がまた左から現れました。
フサフサした尻尾を水平にピンと伸ばして歩きます。
雪面は固く凍結しているようで、キツネが歩いても足跡が残りません。
タヌキの巣穴がある左をちらっと見ました。
画面の右端で、落葉したオニグルミ樹上から垂れ下がったクズの蔓の下をくぐろうとしたキツネが、後足を滑らせたように見えました(スリップ?)。
死角で見えないのですが、足で雪を後方に掻いたようです。
凍った雪面で転んだのかと思ったのですが、どうやら雪面に体を投げ出して転げ回っているようです。
右の死角から雪を後方に掻いたようです。
しばらくすると、キツネが右から戻ってきました。
再び監視カメラの死角で雪面に寝転がったようです。
立ち上がって、タヌキの巣穴を見ています。
シーン4:2/27・午前5:58(@0:50〜)
約20秒後に同一個体のキツネが右から来て、手前をぐるっと回り込んでタヌキの巣口Lの横を通り過ぎました。
次は巣口Mを覗き込んで匂いを嗅いでいます。
再び巣口Lに戻ると、鼻面を浅く突っ込みました。
驚いたことに、巣口Lの手前でキツネは腹這いになり、雪面に体を投げ出しました。
おそらく匂い付けの行動なのでしょう。
それとも、わざと物音を立てて巣内に潜むタヌキの動向を伺っているのかな?
続けて雪原を右へ回り込み、巣口Rに向かいかけたところで、1分間の録画が打ち切られました。
シーン5:2/27・午前6:00(@1:50〜)
約25秒後に監視カメラが再起動すると、キツネは画面の右端で再び雪原に腹這いになっていました。
立ち上がると、タヌキの巣穴の方を見て反応を伺っています。
巣口Mに忍び寄り、中を覗き込みました。
右奥の巣口Rに立ち寄りかけたところで、録画が打ち切られました。
この間、巣内の主であるタヌキは一度も外に出て来ませんでした。
専守防衛の籠城作戦なのか、それとも留守にしているのかな?
シーン6:2/27・午後17:45・気温3℃(@2:50〜)日の入り時刻は午後17:32。
同じ日の日没直後の様子です。
昼間はよく晴れて雪解けが急速に進みました。
林縁に近い手前の地面が完全に露出しています。
シーン7:2/29・午前2:45・気温-1℃(@2:54〜)
2日後の深夜に右からキツネが登場しました。
画面の右端で、枯草に覆われた地面に転がって匂い付けをしています。
この個体は前回とは違い、疥癬に感染して尻尾の毛がひどく抜け落ちて細く見える個体(細尾)でした。
細尾のキツネは立ち上がると、タヌキの巣口Mを点検してから巣口Lの匂いも嗅ぎ、最後は巣口Rの窪みに飛び込みました。
驚いた野ネズミ(ハタネズミ(Microtus montebelli)?)が巣口Rから飛び出してきたのか、枯野を走って逃げ回る獲物をキツネが追い回しています。(@3:25〜)
この時期は気温がまだ氷点下なので、休眠越冬中の昆虫が逃げ出したという可能性は除外できそうです。
監視カメラの赤外線があまり届かないぐらい遠くて暗いです。
動画を自動色調補正して拡大しても、逃げ回る獲物の正体が見えずに残念でした。
狩りの成否は不明です。
細尾キツネは、身震いしてから右に立ち去りました。
シーン8:2/29・午前4:10・気温-1℃(@3:47〜)
約1時間半後に、細尾のキツネがタヌキの営巣地に戻ってきました。
画面の右端で地面を何度も転げ回っています。
立ち上がると身震いしてから画面手前を通って左へ立ち去りました。
シーン9:3/2・午前1:41・気温-3℃(@4:05〜)
2日後の吹雪が降き荒れる深夜に、キツネがまた現れました。
新雪が積もった雪面に新しい足跡が残っているのに、そのシーンが監視カメラに写っていません。
どうやら奥から右下手前へ来たばかりのキツネの足跡のようです。
やはり熱源が画面の前後方向に動くと、トレイルカメラのセンサーは反応しにくいようです。
画面の右下隅の雪原でキツネが転げ回っていました。
立ち上がったキツネは、尻尾がふさふさの健常個体でした。
身震いしてから左へ立ち去りました。
※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。
【考察】
キツネが地面で何度も転げ回る行動は初めて見ました。
キツネ関連の書籍でも読んだことがありません。
しかし、飼い犬が散歩中に気に入った匂いが付いた地面で興奮したように転げ回る行動はよく見られます。
イヌ科の動物で見られるこのような行動は、英語でscent-rollingまたはperfume-rollingと呼ばれているのだそうです。(確立された訳語なし)
おそらく、雪面や地面の気に入った匂いをキツネが自分の身にまとうための匂い付けの行動と思われます。
逆にキツネが自分の匂いを残して縄張り宣言をしたいのであれば、小便を排泄していたはずです(排尿マーキング)。
体外寄生虫対策の砂浴びだとしたら、どこでやっても良いはずなのに、わざわざ特定の地点で繰り返す理由が説明できません。
監視カメラをもう少しだけ右に向けて設置し直し、この地点を重点的に監視すべきですね。
後に私が現場検証しても分からなかったのですが、もしかするとこの地点にタヌキが大小便を排泄していたのかもしれません。 (営巣地の端の溜め糞場)
雪面や地面に残るタヌキの小便跡の上でキツネが転げ回り、体臭を偽装しようとしていた可能性があります。
キツネがタヌキの巣穴を乗っ取ろうと企んでいるとしたら、寄主の巣穴に侵入する前に体表を化学擬態する社会寄生性の女王蜂や女王アリを連想しました。
暗闇の巣内では、匂いさえ同化していれば侵入しても反撃されにくいはずです。
近くのスギ防風林の中にあるタヌキの溜め糞場wbcでもキツネが転げ回って匂い付けしているかどうか、確かめたいところですが、撮影機材が足りません。
キツネの目当てはタヌキの巣穴という不動産物件ではなく、そこに居候している野ネズミなのかもしれません。
獲物に気づかれないよう、巣口に近づく前に自分の体臭を消してタヌキの体臭を身にまとったのかもしれません。
関連記事(同所で1ヶ月前の撮影)▶ ホンドタヌキの越冬用営巣地で野ネズミを狩ろうとする雪国のホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】
ホンドギツネの健常個体と疥癬個体が代わる代わる同一地点で転げ回り、匂い付けしたことは、大問題です。
疥癬の原因となる体外寄生虫のヒゼンダニが健常個体にも移った可能性があるからです。
つまり、匂い転がりをする地点がヒゼンダニの温床になってしまいます。
雪国の冬なら宿主から離れたヒゼンダニは低温で死滅してしまうかな? (低温耐性が問題になります。)
キツネにとって疥癬という皮膚病は予後が悪く死に至る病なので、事態は深刻です。
さらには、この営巣地で暮らすタヌキの家族にも疥癬が拡大しかねません。
困ったことになりました。
登場した2頭のホンドギツネは行動圏が重なっていますから、もしかすると♀♂番 なのかもしれません。
この地点で興味深い匂いを先に見つけた健常個体が転がり行動をして匂いを持ち帰り、パートナーの疥癬個体(細尾)に情報伝達した可能性も考えられます。
キツネの家族が寝床を共有したり交尾するなどの濃厚接触でもヒゼンダニは感染を広げてしまいます。
つづく→
【追記】
キツネが反応したのは、タヌキの小便跡とは限りませんね。
野ネズミも自分の営巣地の周辺の決まった場所に糞尿でマーキングすることが知られているらしい。
肉眼で現場検証しても分からなかったのですが、ブラックライトで紫外線を照射すると野生動物の尿は発光するそうです。
ビタミンB2(リボフラビン)という蛍光物質が含まれているためで、紫外線照射で発光するのは野ネズミの尿に限りません。
野外にトレイルカメラを設置すると野ネズミがよく写るのですが、私はこれまでマーキング行動(排泄)を観察したことがありません。
私がただ見過ごしているだけかもしれません。
野ネズミの排泄やマーキング行動時には、以下のような特徴的な姿勢が見られる可能性があります:
- 後ろ足で立ち上がる姿勢
- 尾を少し持ち上げる
- 体を少し前傾させる
- 短時間静止する
これらの姿勢は、尿や糞を正確に配置するために必要な体勢です。
以上、Perplexity AIと相談しながら追記しました。
次回からは、ブラックライトを持参してフィールドサインを探してみようと思います。(明るい昼間でも蛍光が見えるのかな?)
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