2025/03/11

死んだニホンアナグマから乗っ取った巣穴でホンドタヌキの群れが早春の夜に繰り広げるドラマ【トレイルカメラ:暗視映像】いざりタヌキ他

 



2024年3月下旬 

平地の二次林で死んだニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)を乗っ取ったホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)を自動撮影カメラで監視しています。 
今回は2日間で少なくとも計4頭のタヌキが登場します。 
♀♂ペアがこの巣穴の新しい主で、他には(交通事故で?)麻痺した下半身を引きずって歩く「いざりタヌキ」が登場します。 


シーン1:3/24・午後20:18・降雪・気温5℃(@0:00〜) 
小雪がちらつく晩に、2頭のタヌキabが巣口R付近に来ていました。
採餌から戻ってきた♀♂ペアでなのでしょうか? 
尻尾の黒斑で個体識別できるかな? 

多数の落枝で戸締まり(隠蔽)された巣口Rに1頭♀aが苦労して潜り込みました。 
2頭目♂bが巣口Rで順番待ちしていると、画面の右下から3頭目cがやって来ました。 
♂bに誰何されたcは、怯えたように腹這いの服従姿勢になりました。 
それを見た♂bはcを攻撃するでもなく左に引き返すと、巣口R横に左足を上げながら排尿マーキングしてから、入巣R。 
独り残されたcは欠伸してから立ち上がり、巣口Rに近づきました。 
その背後から4頭目の個体dが右下から登場。 
dは右後脚を引きずって歩く「いざりタヌキ」でした。 


シーン2:3/24・午後20:20・降雪(@1:00〜) 
「いざりタヌキ」はどこに行ったのか、姿が見えません。 
巣穴の主♀♂に入巣Rを許されたのでしょうか? 

出巣Rしたばかりの家主と思われるタヌキが単独で身震いしました。 
辺りを見回してから入巣R。 
しばらくすると、同じ巣穴Rからタヌキが外に出てきました。 
身震いしてから左の巣穴Lに向かい、匂いを嗅ぎました。 


シーン3:3/24・午後20:30・降雪・気温7℃(@1:39〜) 
10分後に2頭のタヌキが戻ってきて、夜の営巣地をうろついています。 
1頭は「いざりタヌキ」で、麻痺した右後脚を痛々しく跛行しています。 
もう1頭は林縁をうろつき、2つの巣口LRを順に点検して回ります。
この2頭で行動を共にしているということは、♀♂ペアなのかもしれません。 


シーン4:3/24・午後20:34・降雪・気温8℃(@2:39〜) 
3頭のタヌキが仲睦まじく顔を寄せ合い、巣口Rを覗き込んでいます。 
なんとなく、巣穴の主である♀♂ペアではなく、余所者の3兄弟っぽい気がするのですが、個体識別ができていません。 
1頭が(勇気を出して?)巣穴Rに入り、それを巣口Rで見守る2頭(どちらかが「いざりタヌキ」?)が対他毛繕いを始めました。 
家主のタヌキがせっかく落枝で戸締まりしても、同種のタヌキに対しては防犯効果が薄いようで、あっさり突破されてしまいます。 


シーン5:3/24・午後20:59・降雪・気温5℃(@3:39〜) 
25分後に監視カメラが起動すると、3頭の健常タヌキが写っていました。 
そのうちの1頭が入巣R。 
残りは1頭が巣口Rに留まり、もう1頭が奥の林内に立ち去りました。 


シーン6:3/24・午後21:00・降雪(@4:22〜) 
奥の林内を左から右へ白く光る眼がやって来ました。 
その正体はタヌキ♀でした。 
途中で立ち止まって林床に腰を低くかがめて放尿マーキングしたようです。 
排尿姿勢から♀と分かります。 
営巣地には近寄らず、そのまま右へ向かいました。 

健常タヌキ♀がマーキングしたシーンを1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@4:56〜) 


シーン7:3/24・午後22:26・降雪・気温2℃(@5:03〜) 
左から来たタヌキが手前に回り込んで巣口Rを見たものの、そのまま右へ立ち去りました。 
実は画面の右下済で、別個体のタヌキがじっと座り込んでいました。 
映像を早回しにすると、身動きしていることが分かります。 
カノッサの屈辱のように、入巣Rが許されるまでじっと待っているのでしょうか? 

その辺りで3日後の3/27にニホンアナグマの死骸を私が発見したのですが、3/24の時点でタヌキが死骸を見つけて食べ始めたのかどうか不明です。 
アナグマの死骸が残雪の下にまだ埋もれていたり、あるいはタヌキが別の場所から引きずって来た可能性があるからです。 


シーン8:3/25・午前2:10・降雪・気温2℃(@5:29〜) 
日付が変わった深夜になっても、小雪がちらついていました。 
健常タヌキが営巣地をうろつき、地面の匂いを嗅ぎ回っています。 


シーン9:3/25・午前3:02・降雪・気温1℃(@6:29〜) 
1頭のタヌキaが巣口Rを見下ろすように佇んでいます。 
実はもう1頭bが左の暗がりへ立ち去るところでした。 
さらにもう1頭のタヌキcが巣口Rから顔だけ出して振り返り、侵入者?aを警戒しています。 
巣口LRの中間地点でaが座り込み、辺りを警戒しています。 
苦労してようやく出巣Rしたタヌキcが巣外でaと挨拶を交わしました。 
cは「いざりタヌキ」でした。 
巣口Rのちょっとした崖(窪地、アナグマが掘ったアクセストレンチ)をよじ登るのにも苦労しています。
aと「いざりタヌキc」は♀♂ペアなのかもしれません。


シーン10:3/25・午前3:08・降雪・気温2℃(@7:29〜) 
5分後に監視カメラが起動すると、左端の暗がりを1頭のタヌキが左へ立ち去るところでした。 
そして営巣地には誰もいなくなりました。 
特に「いざりタヌキ」の行方が気になります。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
下半身を麻痺した「いざりタヌキ」も巣穴Rに出入りしていることが新たに分かりました。 
てっきり家主のタヌキ♀♂ペアに入巣を拒まれていると思っていたので、意外でした。 
もしかすると、家主の♀♂ペアが留守だったのでしょうか? 
巣穴Rの中は広くて、♀♂ペアと「いざりタヌキ」は別々の居住区に住んでいるのかもしれません。
♀♂ペアと血縁関係にあるヘルパーが一緒に住み着いている可能性もあり得ます。

「いざりタヌキ」は歩行スピードがきわめて遅く、採餌効率が悪いため、自然治癒で回復しなければ長生き出来そうにありません。 
この辺りに野犬はいませんが、例えばキツネやテン、イタチなどの小型(中型)肉食獣が手負いの「いざりタヌキ」と出会ったら、襲って捕食するでしょうか?

アナグマから乗っ取った巣穴を巡って、近隣から集まったタヌキ同士で何かすごく興味深い複雑なドラマが連日起こっているようです。 
早春はタヌキの発情期であることも複雑なドラマに関係がありそうです。 
しかし、タヌキの個体識別ができないことには深い解釈が出来ず、歯痒い限りです。 
今後AIや画像認識がさらに発達して、トレイルカメラの定点映像から自動的に野生動物の個体識別をしてくれる時代が到来するのを心待ちにしています。 
それまで私は定点監視の動画を撮り貯めておきます。


つづく→

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