2024年4月中旬・午後14:10頃・晴れ
里山の麓でビロウドツリアブ♀(=ビロードツリアブ;Bombylius major)が低く飛び回っていました。
入山口付近で沢の水が流れ出る轍 の泥濘の上をホバリングしながら低く飛び、濡れた枯草や草の根などあちこちに着地しては口吻で味見しています。
やがて気に入った場所が見つかると、1箇所に留まって吸水を始めました。
地面に倒伏した枯草に止まり、濡れた表面を口吻の先で舐めています。
口吻の先端が枯草から外れると、再び探り当てようとするので、ビロウドツリアブ♀が自発的に舐めている行動で間違いありません。
吸水およびミネラル摂取の行動と思われますが、水たまりの泥を直接舐めないのはなぜでしょうか?
枯草の繊維が毛細管現象で泥水を吸い上げてくれ、濾過した水を飲めるのかもしれません。
ビロウドツリアブ♀は大量の水を飲んでいるはずですが、吸水中に余分な水分を腹端から排泄(排尿)することは一度もありませんでした。
ビロウドツリアブの口吻は黒くて細長い(真っ直ぐ)のですが、その先端部をよく観察すると、左右二股の先割れ状態になっていることに気づきました。
吸水しながら、この口吻先端部を頻りに開閉しています。 (I⇔Y⇔T)
チョウ類の場合は、泥などを舐めている(mud-puddling)のは主に♂です。
性成熟に必要なミネラル成分(ナトリウム塩やアンモニア塩など)を摂取していると考えられてます。
しかし、今回のビロウドツリアブは、左右の複眼が離れている♀でした。
蛭川憲男『水場に集まる生きものたち: 里山から高原、山地の自然』という本には、吸水するビロードツリアブの写真は掲載されていませんでした。
しかし、長野市松代町の水場で1994年〜2004年に観察された計72種類の虫をまとめた中に、ビロードツリアブが含まれていました。(p21「表2:水場へ集まったチョウ類以外の生きもの」)
インターネットで検索すると、ビロウドツリアブの吸水行動を写真に撮ったブログがいくつかヒットしました。
関連記事()▶
・ビロウドツリアブ♂吸水20200319 @KONASUKEの部屋
・ビロードツリアブの吸水行動 @居眠り蛸の自然観察
しかし、ビロウドツリアブの性別を♀と見分けた上で記述している例や、口吻の先端部が開閉していることを記述したブログは見つかりませんでした。
ビロウドツリアブ♀は吸水中も休むことなく高速で羽ばたき続けていますが、枯草に足を掛けているので、ホバリングではありません。
240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみても(@2:22〜)、ビロウドツリアブ♀の羽ばたきが高速過ぎて、ほとんど止まって見えます。
これはストロボ効果と呼ばれる現象です。
ビロウドツリアブは同じ枯草にしがみついたまま、ゆっくり向きを変えながら吸水しています。
おかげで私が動かなくても、色んな角度から吸水シーンを撮影することが出来ました。
ときどき別種のハナアブやハエ?など他の昆虫が飛来して、吸水するビロウドツリアブ♀に興味を示し、ニアミスすることがありました。(@17:26〜、@25:30〜)
しかし、ビロウドツリアブ♀はほぼ無反応で、一心不乱に吸水を続けています。
長々と吸水してからようやく満足したのか、ビロウドツリアブが飛び立ちました。
後脚だけ後ろ向きで、残りの4本脚は前方に揃えて飛んでいます。
離陸直後に、ホバリング(停空飛翔)しながら空中で脱糞しました!
黄色く濁った液体を1滴ポトリと排泄しました。
ビロウドツリアブの体と比べると、結構大きな水滴でした。
執念の長撮りが報われた瞬間です。
その後は低空ホバリングで高度を保ちながら、段階的に方向転換して(ヨー回転)周囲を見回しています。
ところが、ビロウドツリアブ♀は先ほどと全く同じ枯草に止まり直して、羽ばたきを止めずに吸水を再開しました。
よっぽど、この枯草のミネラル含有量が多くて気に入ったのでしょう。
素人目には羽ばたくカロリー消費がおそろしく無駄だと思うのですが、不安定な足場で体勢を保つには、羽ばたき続けないといけないのでしょう。
天敵(捕食者)に襲撃されそうになったら直ちに飛んで逃げられるように、準備運動(アイドリングの羽ばたき)を怠らないようにしているのかもしれません。
もうひとつ別の解釈を思いつきました。
高速羽ばたきによる下向きの強風(ダウンウォッシュ、downwash)で濡れた枯草からの蒸発を促進し、毛細管現象による泥水の吸い上げを促進していたのかもしれません。
ビロウドツリアブの吸水行動を初めて観察できて、感動しました。
ハイスピード動画のパートが第三者(視聴者)にはいくらなんでも長過ぎるかもしれません。
思い入れが強い私は、いくらでも見てられます。
編集でカットするのが忍びなくて、そのままお届けします。
愚直に長撮りしたおかげで、吸水後に排泄する決定的瞬間も記録することが出来ました。
つづく→
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