2021/06/14

ニセアカシアの枝を運んで高架橋の側面に巣作りを始めたハシブトガラス♀♂(野鳥)

 

2021年3月下旬・午前9:00〜9:30頃・くもり 

高速道路が田園地帯を通り川を渡る手前の地点で高架橋の周囲を飛び回るハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が嘴に長い枝を咥えていました。 
近くの電柱の天辺に止まり直して休んでいる間も、細長い枝を持て余しています。 
春はカラスの繁殖期ですから、巣材を運んでいる途中だと私には予想がつきました。 
ハシブトガラスはおそらく作りかけの巣の位置を私に知られたくなくて、巣材の運搬途中に油を売っているのでしょう。 
自分の体長より長い小枝を咥えたハシブトガラスが電柱天辺の水平支柱に止まっています。 
枝の中央部を咥えるように器用に持ち替えて、枝の左右のバランスを取り直しました。 
そこから飛び立つと高架下をくぐって別の電柱の天辺に止まり直しました。 
そこでもバトン回しのように長い小枝を器用に取り扱いました。 
カラスがこんなに長い枝を巣材として運んでいる例を私はこれまで見たことがありません。 
造巣の初期段階では長い枝が必要なのでしょうか。

二箇所に寄り道してからカラスは私の存在が危険ではない(人畜無害)と判断したようで、ようやく巣材を巣に搬入しました。 
ハシブトガラスがせっかく新しく運んできた巣材を積み上げたら、下の巣材を1本落としてしまいました。 

判明した営巣地は意外な場所でした。 
高架橋の目立たない側面に太い排水パイプが水平(やや斜め)に取り付けてあり、その端の上にハシブトガラスは小枝を組み上げて造巣中でした。 
同じパイプで右に少し離れた所にも巣を試作した痕跡があります。 
どうやらこのパイプは、高速道路に降った雨水を路肩に流し、それを集めて下の地面まで排水するために設置されたようです。 
実は最近、河川敷のニセアカシア河畔林が次々に伐採されています。 
おそらく水害(洪水)対策および外来樹駆除のためと思われますが、カラスが長年使っていた営巣木の多くが失われ、深刻な住宅難に陥りました。 
このつがいも仕方なく人工物に営巣するようになったのかもしれません。 
高速道路の高架橋ですから、終日車が走っています。
車の騒音や振動を気にせずに営巣したということは、ヒトが簡単には近づけないという安全性を重視したようです。

巣材を追加した直後に親鳥は澄んだ声でカーカーカーカー♪と4回鳴きました。 
すぐに巣から飛び立つと、次の巣材を採取するために河畔林の方へ向かって行きました。 
河川敷ではヒバリ♂の囀り♪が聞こえますね。 

巣作り中のカラスは巣の位置を極力ヒトに知られたくないはずなので、私は高架橋の巣がある側面とは反対側に回り込んで離れたところから観察することにしました。 
(それでもカラスからは丸見えです。)
すると案の定、ハシブトガラスは寄り道せずに真っ直ぐ帰巣するようになりました。
しばらくすると、♀♂つがいの片方が空荷で(巣材を持たずに)帰巣しました。
(この短いシーンだけ、1/5倍速のスローモーション。) 
出巣するときも、私の目を欺くように高架橋の死角を利用してわざと撒くような飛び方をすることもありました。(行方を見失った) 

出巣したハシブトガラスが高架橋の近くの電線に止まってカーカー♪鳴きました。 
電線から飛び立つと高架下をくぐり抜け、私のほぼ頭上を通り過ぎて河畔林へ向かいます。 
落葉したニセアカシア(別名ハリエンジュ)の樹上に止まり、枝先の生木を嘴で折り始めました。 
落枝を拾い集めるのではなく、わざわざ生木を折るとは驚きました。 
小枝を折る作業中は細い枝先に止まってバランスを保つのに苦労しています。 
採取した小枝を咥えてすぐに巣へ搬入します。 

またしばらくすると、2羽のハシブトガラスが連続して小枝を巣に搬入しました。 
交尾中でもなければ私はカラスの性別を見分けられないのですが、つがいの♀♂共に協力して巣作りしていることが分かりました。 
このとき1羽が巣材の小枝を珍しく左右非対称に咥えて空輸していました。 
小枝が軽ければ左右のバランスを厳密に取る必要がないのでしょう。 

今思うと、三脚を立てて初期巣の建設過程を微速度撮影でじっくり記録すればよかったですね。 
ところが私を警戒したのか、カラスは巣になかなか戻ってこなくなってしまいました。 
私のせいで巣作りを中止しないと良いのですが…。 

撮影が一段落した後で、ハシブトガラスが巣材の枝を採取していた河畔林を訪れました。 
営巣地からの直線距離は約160mでした。 
ただし、ハシブトガラス♀♂は毎回同じニセアカシアの木から小枝を折り取っていた訳ではありません。 
未だ落葉していたものの、ニセアカシア(別名ハリエンジュ)だと樹種が判明しました。 
ニセアカシアの枝には丈夫で鋭い刺が並んでいるので、巣に組み上げた時に互いに刺がひっかっかってずれにくく、巣材として適しているのかもしれません。 
棘だらけの材料で巣作りしたら雛が傷つくと心配になるかもしれませんが、巣の内側には柔らかくてふわふわした素材を敷き詰めて産座を作りますから安心です。

▼関連記事(同じ日に別の場所で撮影:産座の巣材を集めるカラス)



つづく→営巣地に領空侵犯したトビを追い払うハシブトガラス(野鳥)
排水パイプ上の2か所に初期巣を試作している。

【追記】
この営巣地はアクセスが悪く、定点観察に通えませんでした。
6月中旬に現場を再訪すると、雛が巣立った後と思われる空巣(古巣)が残っていました。
初期巣の段階では排水パイプの上2か所に巣材を組み上げていましたが、左側の巣に統一したようです。


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