2024/04/05

獣道に片方だけ捨てられた古い長靴の謎

 



2023年7月上旬・午後14:05頃・晴れ 

休耕地にあるホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の営巣地を久しぶりに見に行こうとする途中で、林縁の獣道にボロボロになった古いゴム長靴が片方だけ転がっているのを見つけました。 
近隣の家から親タヌキが盗んできたのでしょう。
履いたヒトの足裏の匂いで親タヌキが獲物(死肉)と誤認して持ち帰ったものの、結局は食べられずに子ダヌキが遊ぶ玩具になったのだろうと思われます。 
逆に、野外で古靴が不自然に落ちていたら、近くにタヌキやキツネなど野生動物の巣穴があるというフィールドサインになるかもしれません。

二次林を抜ける獣道の横は、下生えにノイバラの群落が密生しているのが動画でも見えています。
ノイバラの藪は鋭いトゲだらけで歩きにくいのですが、たまにタヌキもうっかりノイバラの棘を足で踏んでしまうのではないかと推察しています。




原っぱで複数の巣穴を見て回っても、タヌキ幼獣の姿はもう見られませんでした。
なんとなく、タヌキの古巣をアナグマ家族が乗っ取ったのでは?という気がするのですけど、確かめたくてもトレイルカメラを設置できません。
雑草の生い茂った夏の休耕地とトレイルカメラは相性が悪くて使い物にならないのです。
巣穴の横に普通に三脚を立ててトレイルカメラを設置すれば撮れそうですけど、三脚を原っぱに長期間放置すると通行人から目立ってしまいます。
カメラを盗まれたりタヌキの巣穴が第三者にばれたりするトラブルを避けるために、自重しています。
人目につかない夜だけ三脚の高さが自動的に高くなり、昼間は低くなって草むらに紛れる装置があれば良いのですが、自作するしかなさそうです。

休耕地や林内に不法投棄されたゴミを悪戯盛りのやんちゃな子ダヌキが食いちぎって遊んだりしているようです。
プラスチックなどの不燃ごみはいつまで経っても自然分解されません。
あまりにも散らかって見苦しいですし、野生動物が誤飲して健康を害する可能性があるので、ゴミを少しずつ拾って持ち帰ることにしました。


【追記】
塚田英晴『野生動物学者が教えるキツネのせかい』という本を読むと、「キツネはなぜ靴を盗むの?」と題したコラムが含まれていました。
靴が盗まれるのは春から夏の時期に集中し、冬には起きていないのです。(中略)春から夏といえば、キツネの子育て時期にあたります。盗まれた靴が見つかる場所についても、共通点がありました。子ギツネの姿が見られたり、巣穴が近くにあったりするのです。(中略)実験から、子ギツネはサンダルを食べものと思っていないことがわかりました。しかし親ギツネの方は、特に履き古したサンダルを食べものとまちがえ、子ギツネに運ぶのにちょうどよい大きさのエサのように反応していたと考えられました。キツネは腐った肉などを食べることもあるので、このようなまちがいが起きていたのでしょう。(コラム5より引用)
今回の事例では、古靴がいつ盗まれて放置されていたのか分からないのが問題です。
休耕地にあるホンドタヌキの営巣地は、もともと二ホンアナグマが掘ったのではないか?と推測していたのですが、ホンドギツネが掘った可能性も浮上しました。
タヌキにしてみても、子育てに必要な巣穴を確保するのに、キツネの力を借りています。というのも、タヌキは自分で巣穴を掘らないので、他の動物がつくった巣穴を間借りします。そんなとき、キツネが掘ってくれた巣穴はとても役に立ちます。巣穴でキツネの家族を観察していたつもりが、ある日からタヌキの家族の暮らしを観察することになった、なんてこともあります。さらに、いくつもの入り口がある大きなキツネの巣穴では、使っていない入り口をタヌキが利用しておとなりさん同士になる、なんてことも起こるようです。 (同書kindle版49%より引用)
真犯人の正体を突き止めるには、獣道や営巣地に監視カメラを設置して、靴を盗んだり運んだりしている現行犯の証拠映像を撮るしかなさそうです。








余談ですが、7月中旬に里山の細い林道で履き古した黒いスニーカーが片方だけ放置されていました。
登山客が履いていた靴を片方だけ山中に落として忘れるなんてことは有り得ません(あったとしたら、事件性を帯びてきます)。
おそらく野生動物が麓の里から盗んできたのだと推察しました。
この辺りに巣穴があるのでしょうか?

この古靴を何気なく裏返してみたら、無数のアリ(種名不詳)が下からわらわらと這い出てきました。
羽アリも混じっていました。
靴の下で営巣していたようです。
暑い真夏の山行でひどくバテていた私は、アリの観察をする余力がありませんでした。
このスニーカーも自然界では分解されないゴミですから、アリには気の毒ですけど、拾って持ち帰りました。








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