2023年5月下旬・午前12:55頃・くもり
山麓の駐車場に咲いたツツジの植え込みで見慣れない白黒模様の蛾が訪花していました。
一瞬ダイミョウセセリかと思いきや、よく見ると違います。
後で調べると、サカハチクロナミシャク本州以南亜種(Rheumaptera hecate hecate)という昼行性の蛾でした。
和名はサカハチチョウと似たネーミングですが、漢字の八の字を上下逆さまにしたような白い斑紋が黒地の翅表に描かれていることにちなんでいるのでしょう。
ツツジの赤紫色の花筒に正当訪花で頭部を突っ込んで、がっつくように吸蜜しています。
正面に回り込んで撮影したいところですが、こういうとき私が無理して動くと虫は警戒して逃げてしまうので、じっと我慢して撮り続けます。
ツツジの花から勢い良く飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:33〜1:03)
隣の花に歩いて移動するかと思いきや、予想が外れました。
サカハチクロナミシャクは少し飛んでツツジの葉の表側に止まり直しました。
初めは翅を半開きで開閉していましたが、全開した状態で落ち着きました。
風が吹いたら再び翅を開閉するようになりました。
次にツツジの葉から飛び立つシーンをハイスピード動画でも撮ろうとしたのですけど、なかなか飛んでくれません。
仕方なく帽子を投げつけたら、狙いどころが悪くて失敗しました。
調べてみると、サカハチクロナミシャクの幼虫はツツジ科が食樹とのことで、ツツジの生垣に来ていたことに納得しました。
この種類の蛾は初見ですし、性別の見分け方を知りません。
吸蜜後もツツジの葉に産卵しませんでした。
交尾相手の♀を待ち伏せしている♂なのかな?
「Digital Moths of Japan」サイトでサカハチクロナミシャクについて調べると、
・昼飛性で, 晴天の目中によく花に飛来するし, 湿地に群をなして止まっていることがある.
・幼虫はレンゲツツジ,ホツツジ,ウラジロヨウラクなどツツジ科やシラカンバの葉をつづって中にひそむ.次は幼虫を探してみるのも面白そうです。
【追記】
サカハチクロナミシャクについてネット上で調べ物をしていたら、面白いブログを見つけました。
「サカハチクロナミシャクを巡る3種の鱗翅目に関する考察」by かんきちのフィールドレポート
シラフシロオビナミシャク、サカハチクロナミシャク、ダイミョウセセリ間3種の間にベイツ型擬態系が形成されていることを提唱する。
ツツジ科は有毒植物が多いので、それを食べて育つサカハチクロナミシャクの幼虫および成虫は毒成分を体内に溜め込んでいると予想されます。
したがって、成虫の白黒斑紋が似ている鱗翅目成虫はチョウ・ガによらずサカハチクロナミシャクにベーツ擬態しているのではないか?という仮説です。
こういう考察や予想は私も大好きです。
以下に私の見解を示しますが、この仮説には懐疑的です。
見た目の類似性だけで言うと、サカハチチョウ夏型も含まれませんかね?(ちょっと赤色の斑点がありますけど)
フィールドでの個人的な印象では、このグループで無毒のダイミョウセセリやサカハチチョウが一番多い普通種で、他の種類(シラフシロオビナミシャクや有毒のサカハチクロナミシャク)は少ないです。※
※ もちろん定量的にきっちり調査した訳ではありませんし、私の探し方が下手なだけかもしれません。
これでは鳥などの捕食者は味見して痛い目にあう学習の機会が確率的に(ほとんど)なくてベーツ擬態が成立しないのではないでしょうか?
つまり、鳥がミミック種(無毒)を忌避しているのであれば、個体数がミミック種(無毒)<<モデル種(有毒)という状態で均衡しているはずです。
とりあえず実際に鳥に飼育下で給餌してみて、有毒種のサカハチクロナミシャクを忌避するかどうか、確かめてみたくなります。
サカハチクロナミシャクが本当に有毒で不味いのであれば、もっと派手な警告色を身に纏うように進化しなかったのは不思議です。
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