イラガ(蛾)の飼育記録#2016-11
2016年9月中旬・午前8:04〜午後22:14
▼前回の記事
繭を紡ぎ始めたイラガ(蛾)終齢幼虫
イラガ(Monema flavescens)終齢幼虫cが小枝(メタセコイア)に営繭する一部始終を微速度撮影してみました。
100倍速の早回し映像をお楽しみ下さい。
これは長年自分で撮ってみたかったテーマなので、ようやくものにできて感無量です。
何度も飼育に失敗していたのです。(原因不明)
▼関連記事(2012年)
イラガ(蛾)幼虫の営繭異常【早回し映像】
斜めに立てた小枝の下面に足場糸を敷き詰めてから、自分の体の周囲に絹糸を張り巡らし始めました。
白い糸を紡ぎながら繭内でグルグルと激しく動き回る幼虫の腹面が赤っぽいことから、なぜか木星の大赤斑を連想しました。
こんなに繭内で擦られても、ヤドリバエの卵の殻らしき白い異物が幼虫の体表(左側面後部)から剥がれ落ちないことが意外でした。
網目の粗い繭の表面に突然、白い縞模様が左端から見え始めました。(@3:50)
イラガ幼虫のマルピーギ管で大量に作られた白いシュウ酸カルシウムは肛門から脱糞したのか口から吐き出したのか、気になるところですが早回し映像ではよく分かりませんでした。
繭内部の繊維全体に白い液体を染み込ませています。
次に硬化剤のタンパク質を含む褐色の液体を分泌しました。(これもどこから出たのか映像では不明。)
自らの全身を完全密閉して封じ込めてしまう繭の中でイラガ幼虫がどうして窒息しないで激しく動き回れるのか、不思議でなりません。
閉所恐怖症のヒトには想像するだけで悪夢でしょう。
もう一つの疑問は、成虫の羽脱に備えて硬い繭の内部に予め丸く切れ込みを作るのですが、その方法が映像では全く分かりませんでした。(※追記参照)
名著『イラガのマユのなぞ』でも未解決の難問です。
蛹化する前に幼虫が繭の内側に口器で齧りながら回転して丸い切れ込みを入れるのか、それとも微量の酸などを分泌して化学的に溶かすのでしょうか?
硬い繭をX線(レントゲン)で透視しながら微速度撮影すれば何か分かるかもしれません。
15:08 pm |
18:38 pm |
最後は幼虫の動きが止まりました。
回転楕円体の小さな繭が完成し、硬化・黒化が進行します。
名著『イラガのマユのなぞ』で探求されているように、イラガの繭に現れる白い縞模様のパターン形成はとても興味深いテーマです。
この個体では残念ながらカメラに向いた面にはあまり白い縞模様が形成されませんでした。
おそらく偶然だと思いますが、撮影用の眩しい明かりを照射し続けた影響があったのかもしれません。
飼育中のもう一匹の幼虫が新たに営繭しそうなので、次に期待しましょう。
『繭ハンドブック』によると、イラガの繭は
白地に濃褐色の不規則な縞模様がある楕円形、硬い。繭は糸で作られるが、幼虫はお尻からシュウ酸カルシウムの白い液を、口からはタンパク質を含む褐色の液を出し繭層に塗りつけ、これが繭の模様となる。
表面の模様は様々で個体差が大きい。(p82より引用)
つづく→#12:営繭中に排便するイラガ(蛾)終齢幼虫
※【追記】
鈴木知之『さなぎ(見ながら学習・調べてなっとく)』によると、
イラガ科の繭は、蛹の頭部側の内壁だけが薄く、ここが羽化に際して出口となります。羽化が近づくと、蛹は破繭器 を使って脱出孔を開け、半身を繭外にせり出して羽化します。破繭器は、繭内で体を回転させて缶切りのように使ったり、梃 のように押し上げて使うようです。 (p77より引用)
22:28 pm(裏側にはきれいな縞模様)
22:28 pm |
22:29 pm |
22:30 pm |
【おまけの映像】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速およびオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
営繭の過程をもう少しじっくり観察したい方は、こちらをご覧ください。
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