2010年8月中旬
オオフタオビドロバチ(Anterhynchium flavomarginatum)が営巣したと思われる竹筒を一本回収し、女竹をナイフで割ってみました。
入口は泥で閉鎖されており、筒の中は薄い泥の隔壁で仕切られています。
竹筒を割るのは初めてだったので力の加減が分からず、独房が幾つ作られていたのか分からなくなってしまいました。
独房内に貯食物や蜂の子は残されておらず、赤褐色の蛹が幾つか塊となって転がっているだけでした。
明らかに寄生虫の蛹と分かりましたが、密室ミステリの謎を解き明かすために飼育してみました。
密閉容器に採集して放置していたら、6日後にハエの成虫が羽化していることに気づきました。
慌てて容器の蓋をサランラップに張り替えて撮影開始。
ドロバチヤドリニクバエ(Amobia distorta)成虫が囲蛹を割って脱出する様子※は見逃しました。
翅原基が萎んだ状態で容器の壁に頭を下に止まっています。
腹部および翅原基がときどき小刻みに動き、身繕いします。
頭頂部の膨らみが風船のように脈動します。
これは前頭嚢と言って、体液の内圧で膨らむことで囲蛹を中から押し開くのに使うそうです。
ドロバチの巣から脱出する際は、泥壁を粘液で濡らしながら前頭嚢の風船運動で穿孔するらしい(『ハチの博物誌』 青土社 p54より)。
鋭い大顎や角も持たず弱々しく見えますが、ツリアブの仲間とはまた違った脱出戦略ですね。
やがて、しわくちゃの翅原基に変化が現れました。
体液の内圧で見る見るうちに膨らみ、約3分で伸び切りました。
白かった腹部には黒い縞模様が現れました。室温27℃。
「一寸のハエにも五分の大和魂BBS」にて問い合わせたところ、ドロバチヤドリニクバエだろうとご教示頂きました。
竹筒ハチ図鑑サイトによると、ドロバチヤドリニクバエの♀はドロバチ類の巣に卵ではなく幼虫を産下するらしい。
この蛆虫は寄主の貯食物(蜂に狩られ麻痺状態の蛾の幼虫)を食べて育つそうです(労働寄生)。
つづく
【追記】
ドロバチの巣に寄生したハエが泥壁を破って脱出する様子を飼育下で記録した見事な映像をYouTubeで見つけましたのでご覧下さい。
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