2010/12/13

オオハキリバチによる巣穴の閉鎖:5完了




2010年9月上旬

(承前)
オオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)による巣穴閉鎖の仕上げ作業が続きます。
砂質の湿った土塊に植物のひげ根が混じっていても蜂は気にせずそのまま巣口に塗りつけました。
樹脂と木屑を充填するそれまでの工程と比べると一転して繊細な作業ですが、左官作業の専門家であるドロバチやヒメベッコウ(ヒメクモバチ)と比べると実に下手糞です。
せっかく運んできた砂粒を殆どこぼしてしまい無駄が多いです。
巣穴の真下は砂が散乱しています。
ドロバチの作る泥壁のような防水塗装は施されていないらしい※。
だからオオハキリバチ♀は雨水の入らない下向きの穴を選定したのだろう。
木屑の使い方も本職のスズメバチ科と比べると稚拙でした。
それでもオオハキリバチは多彩な巣材を目的に応じて使い分けるゼネラリストと言えるでしょう。 


※ 『ハチの博物誌』(青土社)第7章「樹脂の匠:オオハキリバチ」 p110より





夢中になって動画で記録していたらデジカメのSDメモリーを使い切ってしまいました。
撮影終了してからも蜂は5回土塊を運んで塗布しました。
最後は作業中に巣口から滑落して落ちた衝撃で口から砂粒を落としてしまい、そのまま悔しそうに飛び去りました。
これが仕上げ作業の最後となりました。
改めて大顎で表面を整地するとホバリングしつつ次の営巣地を物色し始めました。
新成虫は羽化脱出の際に体が樹脂でベトベトしないのだろうか。
時間が経つと樹脂は硬化するのかな。 
本で読んだ知識からこれで営巣完了だと思い込み満足して正午に帰ったのですが、15日後に再訪すると巣穴に変化がありました。
蜂はこの上に更に樹脂を厚塗りしていたようです。
観察の画竜点睛を欠きました。




これほど厳重に戸締りしてもオオハキリバチの巣は高頻度で寄生されるそうです。
意外なことに隣の無関係な巣穴b(オオフタオビドロバチの巣?)の泥栓にも上から樹脂が塗られていました。
寄生対策の偽装工作なのか老化による真空行動、転移行動だろうか? 
(シリーズ完)


 ≪追記≫
 この丸太には穴が3つ並んでいます。
右端の巣穴aでオオハキリバチの営巣活動を一通り観察することが出来ました。
最後に泥を塗って塞いだ様子が似ていることから、左端の穴cも本種の巣穴だろうと推定されます。
同一個体の♀が初めに使った巣穴かもしれません。
中央の穴bは泥による閉鎖がすっきりしているので、近くに設置した竹筒トラップで活動していたオオフタオビドロバチのものだろうか。

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