2022/11/13

沢の源流で水を飲み排尿する夏毛のホンドテン♂(キテン)

 

2022年8月上旬・午後14:10頃・晴れ 

山中の湧き水が溜まっている泉で私がオタマジャクシの定点観察をしたり、池畔に設置したトレイルカメラの電池を交換したりと、独り静かに長時間作業していると、意外な珍客が現れました。 
野生のホンドテンMartes melampus melampus)です。 
いわゆるキテン(黄貂)と呼ばれる夏毛の個体でした。 

スルスルと崖を降りて、池から流れ出る小川の右岸まで来ると、首を伸ばして水面に口を付け、冷たい流水を飲み始めました。 
途中で私を見上げても、逃げたり恐れたりする素振りが全く無くて、無邪気な様子でした。

次にホンドテンは草むらをかき分けて水路に入ると、下流を向いてチョロチョロと小便を排泄しました。 
テンが水洗トイレで用を足すとは知らず、衝撃を受けました。 
飲み水となる水場を汚染しないように、ちゃんと池から流れ出る水路に小便しています。
他の多くの哺乳類のように、尿で匂い付けマーキングしないのは不思議です。 
テンは肉食獣ですから(厳密には雑食性)、獲物となる小動物に尿の匂いで自分の存在を知られたくないのかもしれません。 
テンは尿ではなく糞で縄張りのマーキングを行うのでしょう。
▼関連記事(2ヶ月前の撮影) 
ホンドテンの糞を舐めて吸汁するイチモンジチョウとニクバエ
野生動物のフィールドサインに関する書籍を読むと、テンの糞のことはサインポストとして有名でも尿については何も書いていません。

排尿を済ませたホンドテンは、林道へと歩き去りました。 
ミゾソバなどの下草がテンの目線より高く生い茂っている林道を、長い胴体でピョコピョコ飛び跳ねるように走ります。 
名残惜しい私は、テンが立ち止まってくれないかと(テンの気を引こうと)撮影しながら舌を鳴らしてみたのですが、全く無視されました。 
後ろ姿で尾を上げたときに股間に白毛で覆われた睾丸が見えたので、どうやら♂のようです。 
林道を横断すると、スギ植林地の斜面を下って谷へ降りて行きました。 

動画の最後に、水場の全景を記録しておきます。 
湧き水(地下水)の溜まった池から流れ出る小川が蛇行しながら林道を横断し、杉林の斜面を下る沢の源流となっています。 

トレイルカメラを池畔に設置し直す直前だったので、ホンドテンの出没シーンを別アングルの映像で撮れてないのが残念です。 
それでも、この夏一番嬉しい野生動物との出会いでした。 

ヒトを全く恐れないということは、生まれてから一度もヒトを見たことがないウブな個体なのかな? 
平凡社『日本動物大百科1:哺乳類I』の記述を読むと、今回私はとんでもなく幸運だったようです。
 テンはきわめて神経質な動物で、観察者の衣服のこすれる音にも敏感に反応する。日中に人前に姿を見せることはあまりないため、完全な夜行性と思われがちである。野生のツシマテンに電波発信機を装着させたテレメトリー調査により1日の活動を追跡すると、森の中では日中でもかなり活動していることがわかった。(p138より引用)
この日の私の出で立ちは、本格的な迷彩服ではないものの、目立たない服装が奏功したようです。 
 テンは夏の間は動物食が強く、小鳥やネズミ、リスやムササビなどを襲っている。いわば毎日「命のやりとり」をしているわけだから、警戒心も強くてなかなか姿を見ることもできない。 (熊谷さとし『動物の足跡学入門 ‐形とつき方から推理する‐』p164より引用)
もしかすると、それまで水場で私が作業する様子をテンが崖の上からじっと見ていて、人畜無害だと判断してくれたのかもしれません。 
あるいは暑い夏に喉の渇きを我慢し切れずに水場にやって来たのでしょうか? 

この水場を監視するトレイルカメラに以前記録されていた謎の獣の正体は、アナグマではなくホンドテンだったのかもしれません。
関連記事(1月前の撮影)▶ 夜霧が立ち込める山中の池に現れた謎の野生動物!【トレイルカメラ:暗視映像】



【追記】

今回の個体が小川で排尿したのは、私が見ていたせいで草むらに隠れて用を足しただけかもしれません。 

一般的な排泄行動なのかどうか、もっと観察例を増やさないといけませんね。


つづく→深夜の水場で排便する夏毛のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

ブラックベリーの完熟果実から吸汁するモンスズメバチ♀

 

2022年8月上旬・午前10:20頃および午後17:00頃・くもり 

民家の庭に植栽されたブラックベリー(=セイヨウヤブイチゴ)の群落で果実(液果)が熟すと赤から黒くなります。 
甘い熟果を目当てに様々なスズメバチ類が集まり、食害していました。 
どの個体を撮るか目移りするぐらいでしたが、まずはモンスズメバチVespa crabro)を紹介します。 

ワーカー♀が黒い熟果を噛んで滲み出る果汁を舐めています。 
齧られたブラックベリーには食痕が残ります。 
ブラックベリーを大規模に栽培する農家にしてみれば、せっかく熟した液果を食害するスズメバチ類は害虫扱いになってしまうでしょう。 
同じ日の夕方に再訪しても、モンスズメバチ♀は夢中で吸汁していました。 
一度モンスズメバチ♀が大顎でブラックベリー熟果から一粒をもぎ取って咥えたのですが、 そのまま惜しげもなく落として捨てました。 

吸汁しながら排尿するのではないかと期待して長撮りしてみても、モンスズメバチ♀のオシッコは観察できませんでした。 
最後はキイロスズメバチ♀が飛来したものの、餌をめぐる争い(占有行動)にはならずに近くの別なブラックベリー熟果に降り立ちました。 


他にはショウジョウバエの仲間とキンバエの仲間もブラックベリーの甘い香りに誘われて熟果に来ていました。 
餌資源が潤沢にあるので、モンスズメバチ♀は横に居るキンバエを追い払うことはしませんでした。 
キンバエもモンスズメバチ♀が近づいたら少し横にどくだけです。

2022/11/12

隻眼のハクビシンは川の洪水を生き延びたか?【トレイルカメラ:暗視映像】

前回の記事:▶ 仲間を待つ間に夜の獣道で毛繕いするハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

2022年8月上旬 

トレイルカメラで川沿いの獣道を監視していると、集中豪雨による川の増水前後に常連のハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)が登場しました。 

シーン1:8/3・午前3:47 
2頭のハクビシンが相次いで左から(上流から)歩いて来ました。 
おそらく♀♂つがいだろうと想像しているのですが、私には性別を外見で見分けられません。 

右目が潰れている(失明した)隻眼の個体は、いつものように健常個体のパートナーに先導してもらっています。 
立ち止まってコンクリート護岸に生えた下草の匂いを嗅いでから右へ(下流へ)立ち去りました。 

ハクビシンの家族群は少なくとももう1頭いたはずです。 
子別れした後なのかな? 

その日の晩から激しい大雨が降り続き、川の水位が急上昇しました。 
増水した川の水がコンクリート護岸を越えて河川敷へと氾濫する前に、水位が下がり始めました。 


シーン2:8/6・午後21:30頃 
川の増水がすっかり引いた3日後、ハクビシンが右から(下流から)通りかかりました。 
両目が白く光っている健常個体です。 
そのまま左へ(上流へ)立ち去ったと思いきや、ハクビシンはすぐに獣道を引き返してきました。 
左から右へ(上流から下流へ)カメラの前を一気に駆け抜けました。

顔見知りのハクビシンが水害(洪水)を無事に乗り切ったのは喜ばしいことですが、片目というハンディキャップを持つパートナーがカメラに写らなかったのは気がかりです。
両眼視ができないと距離感が掴めませんから、不測の事態で何か障害物を咄嗟に飛び越えないといけないときや木登りなどに支障が出るはずです。
(隻眼の個体が珍しく先に通過してトレイルカメラが撮り損ねた可能性もなくはありませんが…。) 
その後、都合によりトレイルカメラをこの調査地点から撤去してしまったので、隻眼ハクビシンの安否は不明のままです。

 

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