2026/02/14

カナムグラの葉を食べ歩きクズの葉裏に眼下腺マーキングするニホンカモシカ♂:両角欠け

 

2024年10月中旬・午後13:30頃・くもり 

里山をトラバースする林道を私が静かに歩いていたら、前方横の茂みからニホンカモシカ♂(Capricornis crispus)が慌てて山側に逃げました。 
このとき鼻息を荒らげて威嚇♪したと思うのですが、今となっては記憶があやふやです。 
(撮影はここから。) 

落ち着きを取り戻すと、カモシカは山腹を斜めにゆっくり登り始めました(ほぼトラバース)。
蔓植物にびっしり覆われた斜面を苦労して薮漕ぎしているというよりも、おそらく通いなれた獣道があるのでしょう。 

股間に睾丸が見えたので、性別が♂と判明しました。(@2:57〜) ニホンカモシカは外見の性差が乏しく、長々と観察しても外性器が見えるのはごくまれです。 

顔にズームインすると、角が短い個体でした。 
幼獣にしては体格がごついので注意深く見ると、左右の角の先端が欠けていました。 
おそらく成獣♂同士の喧嘩(縄張り争い)で角を突き合わせた際に、破損したのでしょう。 
その後に自分で角を研いで、短いながらもなるべく尖らせているようです。 
毎年角が生え変わるシカ♂とは異なり、カモシカ♀♂の角は再生しません。 
これだけ分かりやすい特徴(両角欠け)があれば、個体識別に使えます。 
記録を遡ると、同じ山系の尾根道で出会ったカモシカと同一個体かもしれません。 



ニホンカモシカ♂は獣道のあちこちで立ち止まって道草を食っています。 
ときどき短い尻尾を左右に振ったり、顔を振ったり、毛皮を器用にぴくぴく動かしたりして、しつこく集まって来る吸血性昆虫やハエ類を追い払っています。 

採食メニューを知りたくてズームインすると、どうやら蔓植物カナムグラの葉を食いちぎっていました。 
明らかに食餌植物の好き嫌いがあるようで、カナムグラだけを選んで食べています。 

関連記事(1ヶ月前の撮影@平地)▶ 蔓植物カナムグラの旋回運動【4000倍速映像】 


蔓植物でもクズの大きな葉をこのカモシカ♂個体は食べず、その代わりあちこちのクズの葉裏に顔を擦りつけました。 
眼下腺からの分泌物で縄張り宣言しているのです。 

有蹄類の草食獣でも食性からグレイザーに分類されるホンシュウジカとは異なり、ブラウザーのニホンカモシカは笹などグラミノイドの葉を全く食べません。 
この点は本で読んだ通りです。
この急斜面は毎年冬になると雪崩が多発するため、激しい撹乱によって樹木はほとんど育つことが出来ません。 
低山なのに草本植物しか生えない森林限界?のような植生になっています。 
カモシカは落葉性広葉樹の葉を好んで食べると言われているのですが、ここでは広葉草本を選択的に採食しています。 

このカモシカ個体がキイチゴ類の葉を食べなかったのは、茎が鋭い棘で守られているからでしょう。 
シダ植物(ワラビ?)の葉も一度も口にしませんでした。
カモシカ研究者が書いた本によると、餌の乏しい冬になればシダを食べるらしい。

ミゾソバのピンクの花や白い花も咲いているのに、花の匂いを嗅いだだけで食べませんでした。(@6:17〜) 
これは興味深い(意外な)観察結果です。 
これまでトレイルカメラによる撮影では、同じ山系で暮らすニホンカモシカは秋になると湿った林道に咲いたミゾソバを食べに複数個体が繰り返し通っていたからです。 

関連記事(2年前の撮影)▶  

カモシカ♂はときどき頭を上げると、私をじっと見下ろしながら臼歯で餌をもぐもぐと咀嚼しています。 
私から安全な距離を取っている上に、カモシカにとって有利な高所に位置しているので、さほど警戒していません。 
もしかすると、近視のカモシカの目にはもう私の姿がよく見えないのかもしれません。 

曇天ですがニホンアマガエルHyla japonica)が鳴いたので♪、これから雨が降りそうです。 


【考察】
直接観察でカモシカの採食メニューのひとつを突き止められたのは、嬉しい収穫です。 

Perplexity AIで掘り下げてみました。
食害を防ぐために二次代謝物(毒)を蓄積する戦略はコストがかかるので、カナムグラは選ばなかったらしい。
それなのに、カナムグラの葉を食べる野生動物は意外にも知られていないそうです。
昆虫ではキタテハ幼虫の食草として有名です。
カナムグラは蔓に棘が生えていて、食べると苦味が強いのだそうです。



※ 編集時に動画素材の順番を入れ替えました。 
後半部(8.05〜)は撮り初めの記録なのですが、茂みに隠れて採食シーンが上手く撮れませんでした。(採餌植物が不明) 
山中で私と鉢合わせして逃げた直後なので、初めはやや緊張しているようです。
私はいつも同じ服装で山に入るようにしているので、顔馴染みのヒト(人畜無害な奴)だとすぐに認識して安心したようです。
視覚ではなく嗅覚(私の体臭)で私を認識しているのかもしれません。
いまいちの映像とは言え、せっかく撮れたのに丸々カットするのも惜しいので、最後に付け足しました。 


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