2022年9月下旬・午後18:57〜19:15
里山の林道で年中水溜りのある湿った区間をトレイルカメラで見張っています。
動画の冒頭は明るい昼間に撮った現場の様子です。
ある日の晩に1頭のニホンカモシカ(Capricornis crispus)が林道を右から左へ足早に通り過ぎました。
カメラの起動が遅れ、下半身の左側がちらっと写っただけです。
おそらく母親♀だろうと後に判明します。
約1分後に画面の右端からカモシカの幼獣がやって来ました。
先行する母親♀の後を追いかけてきたのでしょう。
水溜りの手前で立ち止まり、下草を採食し始めました。
闇夜の林道でカモシカの幼獣が単独で採食していても安全なのでしょうか?
ニホンオオカミが絶滅し野犬も駆除された現代の日本では、カモシカを襲う捕食者はほとんどいないと考えられています。 (大型の猛禽やキツネはカモシカ幼獣を狩るか?)
大型肉食獣の不在こそが日本の山林で生態系が荒廃する深刻な遠因になっているのですが、ここでは深く立ち入らないことにします。
林道のこの区画には山から沢の水が流れ込み、水溜りが乾くことなく常にジメジメしています。
その結果、ミゾソバなどの湿地帯を好む下草が林道一面にびっしりと生い茂っています。
したがって、ニホンカモシカ幼獣はミゾソバを主に採食しているようです。
カモシカにとってこの林道は食草が豊富に生えていて、食べ放題の餌場になっています。
この幼獣はほとんど移動せずに立ち止まったまま、監視カメラの前で採食を続けています。(サービス精神旺盛?)
カモシカ幼獣が急に採食を中断し、振り返って林道の右を凝視しました。(@1:12〜)
音量を上げても私には何も聞き取れませんが、カモシカ幼獣は油断なく耳をそばだてています。
やがて警戒を解くと、採食再開。
しばらくすると、遠くから別個体のカモシカがフシュ♪と鼻息を荒らげました。
その鼻息威嚇を聞きつけると、幼獣はすぐに頭を上げて辺りを警戒しました。(@3:07〜)
何事もなかったので、幼獣はすぐに警戒を解いて採食再開。
カメラに写ってないだけで、実は母親♀が幼獣の近くに居るのかもしれません。
ニホンザルは群れの仲間とはぐれないように、常に鳴き交わしています(コンタクトコール)。
カモシカの鋭い鼻息は威嚇のディスプレイだとばかり思っていましたが、親子間のコンタクトコールとしての役割もありそうです。
しかし今回のカモシカ幼獣は、採食中に鳴き声を全く発しませんでした。
(そもそもニホンカモシカは滅多に鳴きません。)
1分間の録画時間が終わってもすぐにまた熱源センサーがカモシカ幼獣の動きを感知して撮影を再開します。
カモシカ幼獣は水溜りの岸辺から離れようとしません。
その辺りの下草が一番みずみずしくて美味しいのでしょう。
採食の合間にカモシカ幼獣が体を曲げて右脇腹(または右腿?)を舐めました(または口で掻いた?)(@8:09〜)
手前に生えた幼木の枝葉が邪魔でよく見えませんが、 おそらくヤブ蚊に喰われて痒かったのでしょう。
ときどき耳をパタパタと動かしているのは、顔にたかるヤブ蚊を払っているのでしょう。
延々と道草を食っていたカモシカ幼獣が遂にカメラの近く(画面の手前右)に近づいてくれました。
道端に自生する幼木の葉に興味を示したものの、匂いを嗅いだだけで結局食べませんでした。(@10:45〜)
最後は画面の右下隅に消えました。
林道を外れて谷側に降りる獣道を利用したのかもしれません。
1頭の野生動物がこれほど長時間トレイルカメラの前で立ち止まって自然な採食行動を披露してくれたのは初めてです。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
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