2021/10/24

八重桜の樹洞の上下に入口があるモンスズメバチの巣:門衛と外役ワーカー♀の空中戦

 

2021年7月中旬・午後17:10頃・晴れ

関連記事のまとめ(1年前の撮影)▶ 八重桜の樹洞に営巣するモンスズメバチ:2020年

前年に定点観察したヤエザクラ(八重桜)の樹洞が今年も気になり、ときどき様子を見に来ています。 
去年は8月上旬に モンスズメバチVespa crabro)の巣を発見したのですが、今年はもっと早くモンスズメバチの活動に気付くことができました。 
昨年と全く同じ樹洞に今季もモンスズメバチ創設女王が営巣してくれたことになります。 
昨秋(9月末)に駆除された際の殺虫剤が樹洞内に残留してないことが分かり、一安心です。 
7月上旬(17日前)に見たときには、この樹洞でモンスズメバチ♀を1匹も見ませんでした。 
このとき樹洞内で創設女王による営巣の有無をしっかり確認すべきでした。

最近になって羽化したワーカー♀の数が急増したのでしょうか? 
別なところの初期巣(一次巣)から最近引っ越してきた二次巣という可能性も考えられます。
巣の引っ越し(nest relocation) モンスズメバチとキイロスズメバチにおいて越冬後の女王蜂によって狭い空間に巣が創設された場合、巣の発達に応じて広い場所に新たな巣を造り移動すること。最初の巣を母巣(primary nest)、後の巣を移動巣(第二次巣:secondary nest)という。(小野正人『スズメバチの科学』p171より引用)
縦に長い樹洞の開口部を、上端からパルプの薄い外皮を張って狭くしようとしています。 
これは去年も見られた同じ現象です。 
ガバガバの巣口を狭くした方が、外敵に対してコロニーの防衛力が高まります。 
ときどき外役から戻ったワーカー♀が飛来して、この1番目の巣口から樹洞の中に入りました。 

今年の巣では、新しい発見がありました。 
営巣木の幹の中程に太い枝を根本から伐採した跡があり、その古い切り株に複数のワーカー♀が集まっていました。 
私が上から覗き込むように撮影してみると、枝の古い切り口にモンスズメバチが作った外皮の鱗模様が見えました。 
モンスズメバチが営巣している樹洞の天井部にも開口しているようです。 
つまり巣口がもう一つあって、やはり外皮の膜で狭くなっていました。 
この2番目の巣口の存在を、去年の私は全く気づきませんでした。 
今年になって新たに出来た穴なのか、去年も穴があったのに私が気づかなかっただけなのか、不明です。 
上向きの巣口があるスズメバチの巣は初見です。 
雨が降っても樹洞内の巣が濡れないように何らかの工夫がされているのでしょうか? 

樹洞上部にある2番目の巣口付近で、3匹ほどの門衛が常駐していました。 
門衛はピリピリとかなり警戒を高めた状態で、離着陸を繰り返しています。 
巣口から出入りする蜂を門衛が誰何して、同じコロニー出身の仲間かどうか確かめているのでしょう。 
外役から戻ったワーカー♀が飛来する度に、門衛がスクランブル発進で飛び立ち、空中で迎撃していました。 
門衛同士が空中戦の小競り合いになることもありました。 
外役ワーカー♀は門衛のスクランブルをかいくぐって帰巣する必要があるのです。 
外役ワーカー♀が巣口から飛び立つ際にも門衛は一瞬緊張・警戒していました。
素人目には過剰防衛に見えるのですけど、これは私がモンスズメバチの巣を見つける度にいつも見られる行動です。 
門衛が過敏に巣口を守っているのは、モンスズメバチに特有の習性なのかな? 
門衛が何に対して巣口を厳しく防衛しているのか、仮想敵の正体を知りたいところです。(オオスズメバチ?) 
木にスズメバチが群がって激しく飛び回っているのを見るだけで恐怖を感じる一般人が多いのですけど、落ち着いてじっくり観察してみると、ほとんどの場合はヒトに対する攻撃性ではありません。
ヒトが巣を駆除しようとしない限り、忙しいスズメバチはヒトのことなど眼中にありません。

門衛のスクランブル行動を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:42〜) 
出巣した個体とつられて飛び出した門衛が空中で衝突事故を起こしました。(@3:30) 
スクランブルした門衛が帰巣ワーカー♀を巣口の手前の空中で迎撃・撃墜しています。(@3:54) 

不思議なことに、樹洞下部の広い巣口を守る門衛は1匹も居ませんでした。
今年の巣ではこれから下の巣口を完全に塞いでしまい、上の小さな巣口から出入りする方針なのかもしれません。

余談ですが、樹洞内の底には木屑が堆積していて、その上にマイマイガ♀(蛾)成虫の死骸が転がっていました。 
ちなみに昨年はこの樹洞内でマイマイガの蛹を見つけています。 

今年も定点観察に通うことにします。

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