前回の記事:▶ 池の岸辺で息継ぎ体勢のまま煮干しを食べるクロゲンゴロウ
2026年4月下旬・午後14:30頃・晴れ・気温24℃・水温20℃(煮干しを給餌した岸辺)
同種間で餌をシェアするかと思いきや、独り占めしようとする占有行動(争奪戦)が勃発しました。
同じ煮干しを巡ってクロゲンゴロウ同士が争っているというよりも、協力して餌を解体し始めた、という見方もできそうです。
煮干しを噛んで引きちぎると、自分の分け前を持って急いで泳ぎ去ります。
対岸の抽水植物の茂み(スゲの根元)などに隠れ、持ち込んだ餌をゆっくりと食べるのです。
餌から滲み出る匂いが拡散しにくい場所を隠れ家として選んでいるようです。
そこなら鳥などの捕食者からも見つかりにくくて安全です。
しかし、隠れ家でも餌の独り占めは長く続きません。
遅かれ早かれ煮干しの匂いが水中に拡散するために、周囲を泳いで探索していたクロゲンゴロウが集まってきてしまい、再び争奪戦が勃発することになります。
ヤマアカガエル(Rana ornativentris)の幼生も一部の個体が煮干しに群がって食べ始めました。
意外にも、クロゲンゴロウは同じ餌に群がるオタマジャクシに対して攻撃や捕食することはありませんでした。
しかしクロゲンゴロウがオタマジャクシに対して寛容な訳ではありません。
しばらくすると、クロゲンゴロウは息継ぎするために煮干しを抱えたまま水面まで浮上し、ついでにライバルのオタマジャクシから逃れて安全な隠れ家まで持ち去りました。
クロゲンゴロウは、煮干しの争奪戦の最中にも定期的に浮上して水面で息継ぎする必要があります。
しかし、息継ぎした直後に急いで潜水しても、池の底に沈んでいる煮干しを見失うことがありました。
ライバルが息継ぎでいなくなった隙に、残った個体が急いで煮干しを持ち去る事例も多いです。
つまり、息継ぎするのはせっかく手に入れた餌を失うリスクがあるのです。
大庭伸也 編『ゲンゴロウ類の生態学』という専門書を読んでみると、まさしくこの問題を取り上げていました。
水深が浅い水域においては、息継ぎ後に餌を再発見できる確率が高いため、餌を置き去りにする。一方、水深が深い水域においては息継ぎ後に餌を再発見できる確率が低いため、餌を持ち去る戦略をとることが多いという。 (p94より引用)
同じ餌を巡ってライバルがいる間は、息継ぎするのをなるべく我慢しないといけません。
ゲンゴロウは鞘翅の下に空気の層を溜め込みますから、大きな酸素ボンベを持っている大型の個体の方が長時間潜水できて有利なのでしょうか?
しかし、大型の個体が水中を激しく泳ぎ回ると、酸素の消費量も多そうです。
水生昆虫のクロゲンゴロウはとても優秀なスカベンジャー(死骸の掃除屋)であることがよく分かりました。
こうして水中の死骸をクロゲンゴロウが寄って集ってきれいに食べ尽くし、池の水質はきれいに保たれます。
今回、餌として用意した煮干しは無塩タイプです。
予め頭部を取り除き、背骨に沿って半分に割ってから投入しました。
煮干しを丸ごと池に投入すると、水中のクロゲンゴロウが餌に気づくまで長引くようです。
食べ残しが出ると水質を汚染するので、各池に1匹ずつしか煮干しを給餌していません。
水中を泳ぐクロゲンゴロウは、角度によって鞘翅が緑色を帯びて見えることがありました。
3〜4匹のクロゲンゴロウが煮干しに群がって奪い合いを繰り広げると、なかなか迫力があります。
水底の泥を激しくかき回すので、水がどんどん濁って観察しにくくなります。
つづく→
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