2019/11/17

クロウリハムシがカラスウリの葉でトレンチ行動を始めるも…



2019年7月下旬・午後18:32〜18:36
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カラスウリの葉を徘徊するクロウリハムシ

道端に蔓延るカラスウリの群落で夕方にウロウロしていたクロウリハムシAulacophora nigripennis)aがようやく摂食場所を決めたようで、葉縁に陣取るとトレンチ行動を始めました。
本で読んで知ってはいたものの、実際に観察するのは初めてです。
夕暮れでやや薄暗いのですが、固唾を呑んで見守ります。

トレンチ行動とは:
石井誠『昆虫のすごい瞬間図鑑:一度は見ておきたい!公園や雑木林で探せる命の躍動シーン』によると、

 クロウリハムシは、ウリの葉を円形に傷つけていく。それから、その円の中の葉を食べる。この奇妙な習性は、先に周りを傷つけておくことで、植物が出す防御物質や苦い汁液の流入を止めていると考えられている。円の傷の中の葉っぱは、きっと食べやすくておいしくなるのだろう。(p178より引用)


そこへお邪魔虫の登場です。
左から別個体bが飛来し、同じ葉に着陸しました。(@0:15)
上の葉に移動してくれたので一安心。
クロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀も同じ葉を徘徊しています。
アリはクロウリハムシとニアミスしてもトレンチ行動の邪魔はしませんでした。

一方、トレンチ行動に励むクロウリハムシaは葉の表面に噛み傷を付けながら腹端を中心にゆっくり弧を描いています。
噛み傷は細くて白っぽい線のように残るものの、葉裏まで貫通していません。
ハキリバチのように葉片を切り抜く訳ではないのです。

トレンチ(塹壕)の円弧がようやく1/4まで描けた辺りで、お邪魔虫が戻ってきてしまいました。
しばらく別の葉を徘徊していた別個体bが同じ葉に戻って来て、作業中の個体aに近づいて来ました。
正面からの衝突を避けるように、クロウリハムシaはトレンチ行動を中断すると、惜しげもなく飛び去ってしまいました。
クロウリハムシaの逃避行動をまずは1/5倍速のスローモーションでご覧下さい。
後ずさりしながら黒い鞘翅をパカッと広げると、カラスウリの葉から転がり落ちるように飛び去りました。

クロウリハムシの性別を私は見分けられませんが、もしかすると♂bが♀aと交尾しようと近寄ってきたので、食前にセクハラされそうになった♀aが嫌がって逃げ出したのかもしれません。
サンクコストの呪縛」(コンコルド効果)に囚われない見事な(潔い)逃げっぷりに感心しました。
きっと食事前の下処理であるトレンチ行動は大した負担(コスト)ではないのでしょう。
もしも先客aを追い払った個体bがトレンチを引き継いでカラスウリの葉を食べ始めれば、一種の労働寄生(盗み寄生)と呼べるでしょう。
しかし当時の私はその可能性に頭が回らず、その後の顛末を見届けずに観察を止めてしまいました。
逃げた個体aは、ほとぼりが冷めると元の葉に戻って来てトレンチ行動を再開するのでしょうか?
食草の量が豊富なので、落ち着いて食事のできる別の葉でトレンチ行動を新たに始めるのではないかと私は予想しています。




↑【おまけの映像】
未完のトレンチ行動を5倍速の早回し映像にしてみました。
お忙しい方はこちらをご覧下さい。(ブログ限定公開)
三脚を使わず手持ちカメラでの撮影です。

今回はトレンチ行動を最期まで見届けられずに残念でした。
初めて見たクロウリハムシのトレンチ行動は意外に速く進行しました。(もっと時間がかかるのかと想像していました。)
微速度撮影でトレンチ行動を記録してみたいものです。
次回のチャンスを逃さぬように、三脚を常に持ち歩くことにします。

カラスウリの植物体を傷つけると苦い汁が滲み出すことを要確認。



つづく→トレンチ行動の微速度撮影にチャレンジ

クロウリハムシa@カラスウリ葉+トレンチ行動開始
クロウリハムシb@カラスウリ葉+トレンチ行動跡(中断)

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