2010年10月下旬
飛行機雲…ではなく飛行蜘蛛の映像です。
道端で黒い小さな徘徊性クモがススキの茎(直径4mm)に止まっていました。
触肢が膨らんでいるので♂だろう。
茎を少し前進し、腹端を持ち上げてそよ風に糸を吹き流しています。
糸疣から複数の糸が風に乗って伸びているのが分かります。
風でススキが揺れて接写しにくいので、後半は左手で茎を摘まみながら撮りました。
逆バンジーのように飛んで行く瞬間がばっちり撮れてラッキー♪
風が弱かったようでそれほど飛距離は稼げなかったものの、クモを見失ってしまいました。
バルーニング行動の撮影と採集は両立できないのが悩みです。
秋晴れですが前日に降り続いた雨のせいで肌寒い午前中。
いつもお世話になっている闇クモ画像掲示板に投稿したところ、ワシグモ科の一種だろうとご教示頂きました。
『クモの科学最前線:進化から環境まで』p91によると、
糸疣を高く突き上げる“tip-toeing(つま先立ち)”と呼ばれる行動は、バルーニングの際にさまざまなクモで見られる特有の行動である。飛んでいく方向は風任せであるが、バルーニングに関わる一連の行動は特定の気象条件が揃った場合に限られ、能動的な行動であると考えられる。
↑【おまけの動画】
最新の研究によると、クモのバルーニングは空気の静電気も関与しているらしい。
2010年6月下旬
コガタスズメバチ(Vespa analis insuralis)初期巣の定点観察記録
次の招かれざる客は蟻です。
ムネアカオオアリ(Camponotus obscuripes)と思われる働き蟻が餌を求めて巣の外被上を徘徊しています。
遂に巣口から中に侵入しました。
スズメバチはアシナガバチのように天敵である蟻の忌避物質を巣の表面に塗布していないみたいです。
コガタスズメバチの初期巣に特有の長い首にいわゆる「アリ返し」の効果があるんじゃないかと個人的に思っていたのですけど、それも無さそうです。(時間稼ぎにはなるでしょうけど。)
しばらくすると中から這い出てきたアリが巣口の辺りでウロウロしています。
コガタスズメバチ女王が帰巣すると慌ててアリは退散しました。
単独営巣期に初期巣外被の長い首を人為的に壊すと女王は修復するだろうか?
中の幼虫・蛹がアリや寄生虫などの天敵に襲われ易くなるのだろうか?
(つづく)
【追記】
森林生物データベースによるとコガタスズメバチの「初期巣の円筒部分は北日本より南日本のほうが長くなる」らしい。
南方で特に跋扈するアリ対策として初期巣の首が長く発達したことを示唆しているように思います。
2010年6月下旬
いつものようにコガタスズメバチ(Vespa analis insuralis)初期巣の定点観察を始めたら、いきなり大事件が勃発しました。
創設女王が外出中にチャイロスズメバチ(Vespa dybowskii)の女王が飛来したのです。
本種はキイロスズメバチやモンスズメバチの巣を乗っ取り、社会寄生することが知られています。
乗っ取る巣を品定めしているのだろう。
興奮したように羽ばたきながら外被を触角で調べて回ります。
巣内の幼虫の発達状況を外から匂いや物音で探っているのだろうか。
巣の外被を丹念に調べるも、巣内には侵入しませんでした。
入り口を探し当てられないでいるようです。
コガタスズメバチの単独営巣期の巣に特有の長い首の外被が奏効したのかもしれません。
諦めて飛び去ったり戻ったりを何度か繰返しました。
チャイロスズメバチが居なくなってから4分後、巣の主が帰巣しました。
おそるべき天敵と 鉢合わせしたときの防衛行動を見たかったです。
面白い展開になってきました。
これは目が離せません。
果たしてチャイロスズメバチはコガタスズメバチの巣も乗っ取るのだろうか。
(つづく)
≪参考図書≫
『日本の真社会性ハチ:全種・全亜種生態図鑑』 信濃毎日新聞社 p115