2026/07/18

ホンドタヌキはヤブコウジの赤い実を食べるか?【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2025年4月上旬・午前0:05頃・気温4℃ 

スギ防風林の林床に群生する常緑の小低木ヤブコウジに秋になると果実(液果、核果)が赤く熟しました。 
冬になってもヤブコウジの赤い実は残ったままでした。
雪国でヤブコウジの群落は雪の下に埋もれてしまったのですが、春になって雪が溶けたので、種子散布者が熟果を食べに来る様子を自動センサーカメラで見張ることにしました。 
ちなみに、このスギ林には野生動物が行き交う獣道が形成されています。 

深夜に近所のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がやって来ました。 
ところが監視カメラに気づいたようで、方向転換して引き返してしまいました。 
と思いきや、すぐにまた戻って来ました。 
怪しいカメラに気を取られたせいか、残念ながらタヌキはヤブコウジの赤い実を食べずに迂回してしまいました。 

ヤブコウジの小さな赤い果実は熟しても芳香がしないので、夜行性のタヌキは存在に気づかないのでしょう。 
しかし、明るい昼間でも食べに来ることはありませんでした。 
赤色を好む果実食性の鳥類を誘引するようにヤブコウジは進化してきたのでしょう。 

関連記事(同所同時期の撮影)▶ キジ♂はヤブコウジの赤い実を食べるか?【野鳥:トレイルカメラ】 


【考察】 
今回はトレイルカメラを設置した位置が低くてタヌキにバレてしまいました。
トレイルカメラでしばらく監視しても結局、ヤブコウジの赤い実を食べに来る種子散布者の証拠映像は撮れず、このプロジェクトは失敗に終わりました。 
諦めてカメラを撤去した後で、いつの間にかヤブコウジの熟果が少しずつ無くなっていったので、もっと粘ればよかったかもしれません。 


Q1: 哺乳類の野生動物がヤブコウジの赤く熟した果実を食べることはあるか? 

A1: ヤブコウジ(十両)の赤い果実は、主に鳥類(ヒヨドリ、ツグミ類、メジロなど)によって採食・散布されることが研究で確認されていますが、哺乳類による摂食記録は限定的です。以下に具体的な知見を整理します:

哺乳類の関与に関する証拠

  1. 中型哺乳類の可能性

    • タヌキやアナグマなどの中型哺乳類は、液果を採食する習性があり、ヤブコウジ科の植物(例:モクタチバナ)の種子散布に関与する可能性が指摘されています[nagoya.repo.nii.ac]。ただし、ヤブコウジに特化したデータは不足しています。

    • 自動撮影カメラを用いた調査では、ヤブコウジの果実を食べる鳥類(ヒヨドリなど)が優先的に記録され、哺乳類の関与は明確に確認されていません[bird-research]。

  2. 生態的な条件

    • ヤブコウジの果実は直径5~7mmと小さいため、ネズミなどの小型哺乳類が対象となり得ますが、現地調査では鳥類が主要な散布者とされています[bird-research]。

    • 哺乳類の関与が疑われる場合でも、鳥類に比べて種子の運搬距離が短く、発芽率への影響も未解明です[agriknowledge.affrc.go]。

考察

  • ヤブコウジの果実は赤色で鳥類に認識されやすい一方、哺乳類には視覚的なアピールが弱い可能性があります[akaitori3.web.fc2]。

  • 哺乳類が関与する場合、竹林や密生した林床など、鳥類のアクセスが困難な環境で観察される傾向がありますが、具体的な事例は稀です[city.kamakura.kanagawa]。

結論

現時点では、ヤブコウジの種子散布は鳥類依存型とされ、哺乳類の関与は補助的または偶発的と推測されます。今後の研究では、自動撮影カメラや糞分析による哺乳類の役割解明が待たれます。



Q2: 溜め糞場を形成するタヌキの糞内容物調査で、ヤブコウジの種子が検出されたことはあるか? 


A2: 結論から言うと、「タヌキの溜め糞場の糞分析でヤブコウジ Ardisia japonica の種子が検出された」という、種レベルまで明示した報告は、少なくともよく知られた文献では確認されていません。

既存のタヌキ糞内容物研究の傾向

タヌキの溜め糞場(ため糞場)に関する研究では、果実・種子の利用が詳しく調べられていますが、検出種として頻繁に挙がるのは以下のような樹木やツル植物です。

  • エノキ(Celtis sinensis)、ムベ(Stauntonia hexaphylla)、アケビ類など、比較的大型の液果をつける木本。[wmo.co]

  • サルナシ(マタタビ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)などのつる性植物、ズミなどバラ科の果実。[tenbou.nies.go]

これらの研究では、溜め糞場から大量の種子が発芽し、実生群を形成することや、タヌキ・アナグマが二次種子散布者として機能しうることが示されていますが、掲載されている「種子リスト」にヤブコウジが含まれている例は見当たりません。[kyoto-u.ac]

ヤブコウジ種子が検出されない理由として考えられる点

  • ヤブコウジは林床の常緑小低木で、果実も小型で目立ちにくいため、タヌキの主要な餌資源としては相対的に重要度が低い可能性があります。

  • 多くの糞分析研究では、樹上や林縁の比較的大きな液果(サルナシ・エノキ・アケビ等)に焦点が当たりやすく、林床小低木の果実は検出されても「種レベル同定が困難」としてまとめて扱われている場合があります。

その結果、「ヤブコウジを明示的に同定して報告する」段階まで至っていない可能性があります。

現時点で言えること

  • タヌキが果実を多く食べること、溜め糞場に多種の種子が堆積すること、そして林床の実生形成に関与しうることは、多数の研究で示されています。[tenbou.nies.go]

  • しかし、「ヤブコウジの種子が溜め糞場から検出された」と明記した既存の糞分析結果は、少なくとも主要な報告・要約ベースでは確認できません。

したがって、可能性はあるものの「検出例が文献として示されている」とまでは現状言えず、「未確認/未報告(あるいは未同定)」と扱うのが妥当だと思われます。

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