2026/07/12

ベニシジミ♀♂の激しい求愛飛翔【ハイスピード動画】

 

2026年6月下旬・午前11:30頃・晴れ 

田んぼの農道で2頭のベニシジミLycaena phlaeas daimio)が激しくもつれ合うように低く飛び回っていました。 
とんでもなく動きが速いので、初めから240-fpsのハイスピード動画で撮影してみました。 
固定焦点になりますが、1/8倍速のスローモーションで長く記録することができました。 
初夏の陽射しが強いので、ハイスピード動画の撮影をするにはうってつけの条件です。 
激しく乱舞する蝶の影が地面にくっきり落ちています。 

これが求愛飛翔なのか同性間の縄張り争いなのか正しく解釈するためには、ベニシジミの性別を見分ける必要があります。 
ゼフィルス(ミドリシジミ族)と同様に、♂同士が誤認求愛した結果、激しい卍巴飛翔になっているのかもしれません。 

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ベニシジミには、翅表の斑紋が赤っぽい春型と黒っぽい夏型という季節型があります。 
6月下旬という初夏の時期は、ちょうど春型から夏型への移行期になります。 
同一個体で翅の赤い鱗粉が剥げ落ちて春型から夏型に変わるのではなく、新しく羽化してくる夏型の個体は生まれつき翅表の鱗粉が黒っぽいのです。

今回のベニシジミは、サイズにやや大小の差があるペアでした。 
傾向としては、♀>♂らしい。(大きさだけで性別を決めつけるのは危険) 
森上信夫『虫のオスとメス、見分けられますか?』という本でベニシジミについて調べると、(シジミチョウ科の)雌雄の識別点は前脚の跗節なのだそうです。 (p20より) 
しかし、それは採集した標本で見比べたり静止している状態で接写しないと使えません。 
翅頂の角度が尖っているか丸みを帯びているかで性別を見分ける方法も図鑑に書いてありました。
しかし今回のように2頭が激しく飛び回っている状態では、羽ばたく翅の角度が刻々と変化するので、スーパースローでも見比べることが不可能です。

映像で行動をじっくり観察した結果、翅表の紅色が鮮やかな大型個体は春型♀で、色褪せた(黒っぽい)小型個体は夏型♂だろう、と推測することができました。 

2頭のベニシジミは、ときどき互いの翅が触れ合いそうなぐらい、ぶつかるように飛んでいました。 
早く交尾したい♂は、♀の前に回り込んで飛び、着陸を促しているのでしょう。 
一方、♀が♂の求愛を嫌がって逃げ回っているようには見えません。 
ただし、風のせいで♀の逃避行動が分かりにくくなった可能性もあります。
♀が本気で嫌がっているのなら、着陸して草むらに隠れたり、明確な交尾拒否姿勢を♂に見せつけるはずです。
♀は求愛する♂を焦らすように飛び続け、♂のスタミナ(持久力)を試しているのかもしれません。 
手前に飛来したモンシロチョウPieris rapae)が高速で横切っても、求愛行動に夢中のベニシジミ♀♂は見向きもしません。 (@0:29〜)

途中から風が吹いたようで、ベニシジミが全力で羽ばたいても前進できず、風下にどんどん流されていきます。 
(周囲の草も風で揺れています。)
農道を離れて横の畦道や水田の方へ飛んでいきました。 
田んぼの水面の上を低く飛び続けます。 
うっかり着水してしまったら、蝶にとっては危険です。(溺れるリスク) 
なんとか飛び続けて田んぼから畦道を経て農道に戻ることができました。 

残念ながら今回も交尾まで見届けられませんでした。 
結局ベニシジミ♂の必死な求愛は成就せず、やがて♂は諦めて♀から離れて行きました。 
空中で飛びながら♀が交尾拒否の合図を♂に出していたのかどうか、私にはよく分かりませんでした。 
性フェロモンも関与しているとなると、嗅覚の鈍いヒトがベニシジミの配偶行動を読み解くのは難しくなります。





【考察】 
スーパースローでじっくり見ると、ゼフィルスのような卍巴飛翔ではありませんでした。
今回のペアの飛翔高度は低空に終始していました。
蝶の縄張り争いでは、高く舞い上がることが多いはずです。
初めのうち、ベニシジミ♂は♀の進路を塞ぐように前方に位置して飛んでいました。
羽ばたく翅の模様を見せつけて、自分が同種の♂であることを♀にアピールしているのでしょう。
(このとき♂が性フェロモンを分泌しているかもしれません。)
♀が高度を下げて地面近くになると、♂は♀の上を飛ぶようになり、上から押さえつけるような(着陸を促す)位置取りになりました。

鈴木芳人. ベニシジミ雌の交尾回避行動. 蝶と蛾, 1978, 29.3: 129-138.
という古い文献をPerplexity AIに紹介してもらったのですが、JstageでPDFファイルをダウンロードして読んでみると、筆者が丹念に観察した焦点は求愛飛翔ではありませんでした。 
約50年前の当時はハイスピード動画などという文明の利器はありませんから、留まった状態のベニシジミ♀へ♂がアプローチする様子を主に観察しています。 

参考ブログ:ベニシジミの求愛行動(4月2日)by 探蝶逍遥記 


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