2024年10月下旬〜11月上旬
地の二次林にあるニホンアナグマ(Meles anakuma)の営巣地(セット)をトレイルカメラを使って長期間の定点観察をしています。
独立した2つの巣穴L、Rの入口付近に(秋になると?)現れる小さな徘徊性昆虫の正体がずっと気になっています。
アナグマの巣穴に居候している謎の虫は、夜になると活動が活発になるようです(夜行性)。
アナグマ以外の野生動物(タヌキなど)がここに通って来るのは、居住空間をアナグマから乗っ取るのが目的ではなく、穴居性の虫を捕食するためだということが分かってきました。
アナグマや他の野生動物が巣穴に入ると、その虫の大群が入れ替わるように巣穴からピョンピョン跳んで脱出するのです。
シーン1:10月下旬・晴れ(@0:00〜)
暗いトンネルの内部を観察できる内視鏡(スネークカメラ)を持ってないので、手持ちの撮影機材でなんとか方法を考えました。
赤外線の暗視映像が撮れるハンディカムを伸ばした一脚に取り付けて、巣穴の奥に差し込むことにしました。
このアイディアの実行になかなか踏み切れなかったのは、もしもアナグマが巣内に居た場合、怖がってこの営巣地から逃去してしまうのではないかと恐れたからです。
現場入りしてトレイルカメラの電池を交換するときも、巣穴の入口に私の足跡や匂いを付けないように、必要以上には決して近寄りませんでした。
しかし、どうしても巣内に居候する謎の虫の正体を確かめたくて(好奇心に負けて)、決行することにしました。
直前に監視カメラをチェックして、おそらくアナグマは留守だろうと確かめました。
作業中にハンディカムの液晶モニターは見れませんから、手探りで(勘で)一脚を突っ込み、撮れた動画をその場で再生して確かめます。
確かに留守だったようで、ハンディカムを突っ込んでも巣内のアナグマが怒ってカメラに噛み付いたり、外に飛び出して来たりすることはありませんでした。
まず初めに、巣穴Rを調べます。
巣口Rから斜め下にトンネルが伸びてから、向きが変わっているようです。
途中ですぐにハンディカムを付けた一脚が引っかかってしまい、奥まで撮れませんでした。
真っ直ぐで剛性のある一脚は、柔軟に曲げることが出来ないのです。
坑道には落枝が散乱していました。
やや下向きに固定したハンディカムでトンネルの床面を撮っても、虫は写っていませんでした。
次に、別の巣穴Lを調べてみましょう。
入口Lには落ち葉が散乱しています。
ハンディカムを暗視モードに切り替えてから、巣穴Lの奥に突っ込んでも、羽アリ?が1匹写っていただけでした。
巣穴Lは入口から斜めに降りた後は南に向かってまっすぐ伸びているようですが、奥までハンディカムが届きませんでした。
シーン2:11月上旬・晴れ(@3:52〜)
2週間後に、同じ作戦で再挑戦してみました。
謎の穴居性昆虫はおそらくカマドウマだろうと予想しているのですが、前回は時期が少し早かったのかもしれません。
しかし、トレイルカメラに撮れた映像では、アナグマやタヌキが巣穴に潜り込むと、それと入れ替わるようにカマドウマ?の群れが中からワラワラと外に逃げ出して来る様子が何度も写っていました。
謎の穴居性昆虫はトンネルの床面ではなく天井面に居るのだとしたら、前回は撮影アングルの問題で写っていないだけかもしれません。
これ以上先延ばしにすると、謎の虫が連日のように野生動物に捕食されて全滅するかもしれません。
そこで今回はハンディカムをポールに固定する際に水平よりも少し上を向けて、坑道(トンネル)の天井部を狙って撮ることにしました。
前回は一脚がやや太すぎたので、それよりも細いスキーのストックを使ってみたら、だいぶスムーズにカメラを出し入れできました。
スキーのストックは細くても十分な剛性があります。
まずは、巣穴Rの内部を調べます。
すると予想通り、カマドウマの群れがトンネルの天井部に逆さまになって蠢いていました。
白黒の暗視映像ですが、どうやらマダラカマドウマ(Diestrammena japanica)のようです。
大小様々の個体が集結しています。
腹端に産卵管を持つ♀成体も混じっていました。
小さい個体は幼虫なのでしょう。
ハンディカムを盲滅法に動かしているので、映像が見にくいのは仕方がありません。
見やすくするために、1/3倍速のスローモーションでリプレイ。
次は、もう一つの巣穴Lの中を覗いてみましょう。
巣口Lには落ち葉が大量に溜まっています。
ハンディカムを差し込むと、トンネルの天井部に逆さまに止まって居たカマドウマが奥に逃げて行きます。
撮れた映像を見比べる限り、巣穴Rよりも巣穴Lの方がカマドウマの生息数が多いようです。
巣穴に突っ込んだポールを引き出してハンディカムを回収すると、ボディもレンズも土で汚れていました。
撮影機材の角でトンネル内部を擦ってしまったようです。
こういう過酷な撮影環境では、GoProなど小さなアクションカメラの方が適していそうですが、予算不足で持っていません。
※ 動画編集時に暗視映像をモノクロに加工しています。
撮影直後にカマドウマが1匹だけ巣外に跳び出してきました。
しかし、私がもたついている間に逃げられてしまい、証拠の写真や動画を自然光下で撮ることができませんでした。
【考察】
試行錯誤で悪戦苦闘した結果、前年からの謎が解けてスッキリしました。
百聞は一見に如かず、案ずるより産むが易し、という諺の通りでした。
夜行性のカマドウマは、隠れ家としてアナグマの巣穴を昼間に利用しているだけなのでしょうか?
アナグマは寝床として大量の植物(落ち葉だけでなく緑の生葉も含む)を巣内に持ち込みます。
古くなった巣材は巣穴の外に捨てられますが、巣穴の中には腐葉土になりかけた落ち葉が大量に溜め込まれているのです。
カマドウマは雑食性ですから、そのような有機物(リター)そのものを食べたり、そこに集まる土壌生物を捕食したりして成長するのかもしれません。
ちなみに、巣穴Lの横に生えたミズキ灌木の幹に粘着トラップを設置したところ、マダラカマドウマの触角や自切した脚が大量に付着していました。
つまり、カマドウマは木登りもするのです。
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トレイルカメラの記録によると、野ネズミがアナグマの巣穴に居候していた時期もあったのですが、今回の撮影では野ネズミについての手がかりを得られませんでした。
アナグマの巣穴の内部を非破壊でもっと詳しく調べるには、ファイバースコープ(スネークカメラ、内視鏡)を導入すべきでしょうか?
売られているファイバースコープの多くは、細いパイプの中を調べることを想定して作られています。
アナグマの巣穴はファイバースコープの太さに対してだいぶ広いのが問題になります。
入口から送り込むファイバースコープにある程度の剛性がないと、フニャフニャでは曲がりくねったトンネルの奥まで差し込めないはずです。
リアルタイムで画面を見ながら挿入する向きを手元で細かく操作できる高級品のファイバースコープが必要になりそうです。
写真家の福田幸広氏による名著『アナグマはクマではありません』を読むと、ラジコンのキャタピラ車にCCDカメラを取り付けて巣穴の奥を撮影してみたいという構想が確かあとがきに書いてありました。
私の予想では、おそらく筆者はファイバースコープを使っても上手く撮れなかったのでしょう。
ラジコンカーの作戦が成功したのかどうか、気になります。(首を長くして続編をお待ちしています。)
秋になると様々な野生動物(タヌキ、キツネ、テン、ハクビシン、イタチ、野ネズミなど)がアナグマの巣穴(空き巣)に足繁く通ってくるのは、穴居性のカマドウマを獲物として捕食するためだったようです。
カマドウマは、何か対捕食者戦略を進化させていないのでしょうか?
群れを作り、ピョンピョン跳んで逃げ惑うだけなのかな?
カマドウマの長い後脚は、強い跳躍力を得るためだけでなく、捕食者が噛みつきにくいように嵩張り、口に刺さるように棘を生やしているのだそうです。
Gemini AIによれば、
カマドウマの脚には鋭いトゲ(棘)がたくさん生えており、特に後脚の脛節(細長い部分)に集中していて、これで跳躍したり、捕食時に獲物を捕らえたり、外敵から身を守ったりするのに役立っています
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