2019年7月下旬・午前6:50〜6:55
山麓林縁のクリ(栗)樹上で若いニホンザル♀(Macaca fuscata fuscata)が横枝に横たわっていました。
体を掻いたり欠伸したりと非常にくつろいでいます。
左手で股間を掻いているのは自慰行為でしょうか?(@0:29)
それともデリケートゾーンが痒くて掻いていただけかな?
私をチラチラ見下ろしているものの、羞恥心や罪悪感とは全く無縁です。
その後は寝転んだまま暇潰しに樹皮を引っ掻いていましたが、採食というほど本気ではありません。
(食べ物の少ない冬になるとニホンザルは樹皮をかじって食べます。)
しばらくすると起き上がり、クリの枝に座っていました。
私を不思議そうに見下ろしながら頻りに体を掻いています。
このとき股間に陰核(クリトリス)が一瞬見えたので♀と確定しました。
睾丸はありません。
さて、野生ニホンザルの自慰行為は報告されているのでしょうか?
ネットで検索してみても、意外に情報は少ないようです。
『ニホンザルにおける稀にしか見られない行動に関するアンケート調査結果報告』という論文がヒットしました。
2008年にニホンザルの研究者約40人にとったアンケート調査の中で、稀にしか見られない性行動として
7. ♂のマスターベーション(ペニスいじり)という質問項目が含まれていました。
8. ♀のマスターベーション(クリトリスいじり)
これを尋ねるということは、野生ニホンザルの自慰は研究者でもなかなか見られない行動のようです。
これをまとめた結果が2011年に報告されており、全文PDFが無料公開されていました。
中川尚史; 中道正之; 山田一憲. ニホンザルにおける稀にしか見られない行動に関するアンケート調査結果報告. 霊長類研究, 2011, 27.2: 111-125.少し長くなりますが、♀の自慰行為に関する部分を引用します。
メスのマスターベーション(クリトリスいじり)は,嵐山,勝山,高崎山で合計 6名が観察していたが,純野生個体群からは屋久島の1名のみであった。その結果,餌付け個体群と純野生個体群の観察頻度の差が 50%を超えたが,餌付けと関連する理由が見当たらない。「雌がその生殖器を何かにこすりつける」マスターベーションは,古くから地獄谷で記載があるが(Enomoto, 1974),調査票には「クリトリスいじり」というかなり限定した定義を併記してしまった。限定したのは,雌間のマウンティング時にみられる自身の生殖器を自身の尾や相手の背中,さらには相手の生殖器にこすりつける行動(Vasey & Duckworth,2006)とは区別して,明らかなマスターベーションだけを抽出したかったためであったが,回答者により従来の定義と限定的な定義のどちらに基づいて解答するかが一致せず,今回たまたま限定的な定義に基づく回答者が純野生群の研究者に多かったせいかもしれない。私が観察したのは餌付け群ではなく、純野生群です。
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