2016年7月下旬
山間部の道端の藪でウラジロイチゴ(=エビガライチゴ)の赤く熟した果実を摘んで食べていると、見慣れないハエトリグモを見つけました。
前脚(第1脚)がやや太く、おそらくキレワハエトリ♀(Sibianor pullus)と思われます。
完熟した赤いウラジロイチゴの果実に長時間居座っているのが気になります。
純肉食性とされるクモがイチゴの実を食べたり果汁を飲んだりしているとしたら非常に興味深いので、胸が高鳴りました。
昨年、花を食べる造網性クモを調べていたこともあり、「クモの植物食」という珍しい習性についてアンテナが敏感になっています。
▼関連記事本当に果実を噛んでいるかどうか口器をじっくり接写したくても、残念ながら撮影アングルを確保できませんでした。
花を食べる造網性クモの謎:2015年
(私が下手に藪に踏み込むとクモは逃げ出してしまうでしょう。)
もしクモがウラジロイチゴの実を噛んで吸汁しているとしたら、噛み跡から果汁が滲む気がします。
しかしマクロレンズで接写しても、そのような噛み跡は見つけられませんでした。
葉の裏面が白く見えるのでウラジロイチゴ。 |
後半は引きの絵で撮ってみると、ハエトリグモが陣取っているのは見るからに周囲で最も熟れた果実でした。
これは果たして偶然でしょうか?
吸汁目的ではなく、甘いキイチゴに来る虫を捕食するため待ち伏せしていた可能性も考えられます。
そのような獲物はカメムシぐらいしか思いつかないのですが、ハエトリグモがカメムシを捕食しているのは一度も見たことがありません。
▼関連記事
・クマイチゴの果実を吸汁するツマジロカメムシ
・クマイチゴの果実を吸汁するトゲカメムシ
『クモの科学最前線:進化から環境まで』で植物食を扱った章を読み返しても木苺の実を食べたり吸汁したりする記述はありませんでした。
勿論、徘徊中のハエトリグモがたまたま木苺の実に居ただけかもしれません(例:写真素材 - ハエトリグモは、小さな野生のイチゴのようなフルーツの上に腰掛けています)。
クモがイチゴの果実を食べたことをどのように証明すれば良いでしょうか?
クモを解剖して吸胃の内容物に木苺由来の果糖(フルクトース)が含まれるかどうか分析するのが確実ですけど、素人には無理な実験です。
飼育下でイチゴの果実を給餌したら、飲み水を一切与えなくてもイチゴを吸汁して生き延びられるでしょうか?
(ハエトリグモの飼育では霧吹きするなどして飲水を必ず与えないと、死んでしまいます。)
体が半透明な種類のハエトリグモを材料にすれば、吸胃がイチゴの果汁で赤く染まるのが透けて見えるかもしれません。
店で売っている食用のイチゴは農薬(殺虫剤)が残留していそうなので、実験するなら野生の木苺の実を使わないといけませんね。※
クモを採集しようか迷いながら動画を撮っていると、まるで私の殺気を感じたかのようにハエトリグモは滑落/懸垂下降し、藪の奥に見失ってしまいました。
カメムシ(おそらくトゲカメムシ)も近くでウラジロイチゴの果実を吸汁しに来ていたのですが、撮り損ねました。
逃げて行くカメムシの後ろ姿 |
ほとんどのクモは迷惑な異物として捨てるでしょうけど、中には味見してみて気に入り、イチゴを食べてくれる個体もいるかもしれません。
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