2012/11/24

イシサワオニグモ♀を曳くフタモンクモバチ♀




2012年8月中旬

下山中に、クモバチが狩った獲物を曳いて林道を横断するところに出くわしました。
鮮やかなオレンジ色のクモの歩脚の根元を咥え、後ろ向きに歩いて運んでいます。
獲物は少し持ち上げて運ぶため、歩脚の先以外は地面に引き摺ることはありません。
砂利道を横切った後で獲物を置いて休憩。
疲れたのか、身繕いしています。
獲物を残したまま飛び去りました。
営巣地の行き先を偵察に出かけたのかもしれません。
その隙に拉致被害者を調べてみると、イシサワオニグモ♀成体(コガネグモ科)と身元が判明。
毒針に刺され完全に全身麻痺状態です。
大きさの比較対象として一円玉を並べてみます。




その場でじっと待つと、蜂が戻って来ました。
私を警戒しているのか、獲物をなかなか見つけられないでいます。
獲物を取り戻すと、再麻酔することなく直ちに運搬再開。
七つ道具のピンセットを取り出す暇があれば、再麻酔手術を観察するために獲物を押さえて運搬を邪魔できたはずです。
クモバチの毒針に手を刺されると相当痛むらしいので、素手でやる勇気がありませんでした。
蜂は林道を横切り路肩のちょっとした崖を登り切ると潅木帯を越えました。
そこで小休止すると、獲物を地面に置いて再び偵察飛行へ出かけました。
留守中アリに獲物を盗まれないための対策として獲物を草葉に挟む行動は全く見られませんでした。

運搬再開した蜂がそのまま切り立った崖を下ろうとしていたので、私も決断を迫られました。
そのまま営巣地まで追跡するには危険で無理な状況です。
どうしてもクモバチを同定したい一心で、営巣行動の観察は諦めて泣く泣く採集しました。
かなり大型の黒いカリバチで一瞬オオモンクロクモバチ♀かと思ったのですが、眉紋というか複眼と触角の間にあるお洒落な橙色の部分が目立ちます。
腹部に黄色(橙色)の帯があり、翅も半透明の黒色です。


標本

第3腹節の2紋が黄褐色。

複眼内縁が黄褐色。

胸部側面

腹部側面

腹端の毒針側面。死後は毒針が伸びていた。

胸背

右翅

左翅

腹面

クモバチ科♀の触角は死後にゼンマイ状にカールする。


オオモンクロクモバチ♀の個体変異なのかな?と勝手に思いつつ、いつもお世話になっている蜂類情報交換BBSに投稿して問い合わせたところ、青蜂@管理人さんより以下の回答を頂きました。

写真のクモバチは、フタモンクモバチ(フタモンベッコウ)(Parabatozonus jankowskii)ではないでしょうか。蜂類画像一覧の画像は顔面が写っていませんが、資料によると「複眼内縁、第3腹節の2紋は黄褐色」とあります。 オニグモを狩るというのも一致しますね。
日本最大のクモバチらしい。
自分でもすっかり忘れていましたけど、実は2009年に同種の♂を撮っていました。

関連記事はこちら→「ヤブガラシの蜜を吸うフタモンベッコウ♂

つづく→「フタモンクモバチ♀に狩られ麻痺状態のイシサワオニグモ♀を調べる


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