2025/07/09

アナグマ空巣の横で新たに穴を掘るホンドタヌキの謎【トレイルカメラ】

 



2024年6月中旬

シーン0:6/11・午後13:26・くもり・気温35℃(@0:00〜) 
シーン0:6/11・午後14:10・くもり・気温37℃(@0:04〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の様子です。 
平地の二次林で越冬中に死んだニホンアナグマMeles anakuma)の旧営巣地(セット)を2台の自動撮影カメラで見張り続けています。 
地中に2つの巣穴L、Rが掘られていますが、内部でつながってはいないようです。 


シーン1:6/12・午前4:44・気温15℃(@0:07〜)日の出時刻は4:13。 
早朝で日が昇っているのに、木の葉が生い茂る初夏の二次林内はかなり薄暗いです。 

単独でセットに現れたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が、通りすがりにアナグマの巣口Lのすぐ左の地点の匂いを嗅ぐと、なぜか前足で地面を掘り始めました。 
巣口Lを拡張する土木工事(造巣行動)とは違うようです。 
タヌキはどうやら、何か地中に隠れた虫や野ネズミ(ノネズミ)などを狩ろうとしているようです。 

一旦アクセストレンチを降りて巣口Lの匂いを嗅いでから、穴掘り作業を再開しました。 
巣口Lの横にマルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)の灌木が自生しているのですが、その邪魔な根っこをタヌキは掘り返そうとしているのかな? 


シーン2:6/12・午前4:45・気温16℃(@1:07〜)
別アングルに設置した監視カメラでも撮れていました。 
タヌキが巣口Lの横で穴を掘り、その合間に巣口Lに顔を突っ込んで匂いを嗅ぎました。 


シーン3:6/12・午前4:46・気温16℃(@2:07〜)
トレイルカメラはセンサーで熱源の動きを検知すると起動するのですが、そのとき周囲の照度を測り、自然光で撮るか赤外線を照射しながら暗視動画に撮るかを二択で決めます。 
その閾値になる薄明薄暮の時間帯だと、かなり薄暗いフルカラー録画になったり、赤外線の暗視モードで録画したりと、トレイルカメラの挙動が交互に変わります。 
トレイルカメラの同じ機種でどの個体でも同じ症状が出るので、これはトレイルカメラの欠陥(不良品)やシステムのバグではなく、仕組み上、仕方がないようです。 
私としては、動物の行動がモノクロでも明瞭に写って欲しいので、充分に明るくなるまでは薄明薄暮でもきれいに写る暗視モードで統一してくれた方がありがたいです。 


タヌキの顔が穴掘り作業で汚れて、すっかり真っ黒になりました。
前足を使って黒土を後方に掻き出し、勢い良く跳ね除けます。 


シーン4:6/12・午前4:47・気温17℃(@3:07〜)
次に監視カメラが起動したときにはフルカラー録画に戻りましたが、辺りはまだ薄暗いです。 

タヌキは穴掘り作業を中断すると鼻面を上げて、周囲のマルバゴマキの枝葉やブラブラ垂れ下がっている枯れ枝の匂いを嗅いでいます。 
獣道を少しうろついてから、穴掘り地点に戻って来ました。 

遠くからキジ♂(Phasianus versicolor)がケンケーン♪と鳴く声が聞こえてきました。(@3:53〜) 


シーン5:6/12・午前4:48・気温17℃(@4:07〜) 
別アングルのモノクロ映像に切り替えます。 
穴掘りを止めて左の獣道に消えたタヌキが、すぐに戻ってきて穴掘り地点の匂いを嗅ぎ回っています。 

このカメラでも、遠くのキジ♂が早朝からケンケーン♪と縄張り宣言する鳴き声が録音されていました。(@4:40〜) 


シーン6:6/12・午前4:49(@4:56〜)
別アングルのモノクロ映像に切り替えます。 
タヌキがカメラを見上げてから、左に立ち去りました。 
タヌキが新たに地面を掘った跡は、アナグマのアクセストレンチLを変形・整備したようにも見えます。 


シーン7:6/12・午前4:49(@5:09〜) 
フルカラー録画に戻りましたが、早朝の二次林内は依然として薄暗いです。 
タヌキはもう一つの巣口Rにも立ち寄り、マルバゴマギ根元に開口した野ネズミ巣穴の匂いを嗅いでから、セットを右へ立ち去りました。 



※ キジの鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
タヌキの本格的な穴掘り作業を撮影できたのは、これが初めてです。 
せっかくアナグマが作ったアクセストレンチの斜面を崩して、特定の地点を深く掘り進めていました。 
しかし穴掘りのスペシャリストであるアナグマほど、タヌキは穴掘りが上手くないようです。 
前足の爪もアナグマの方が鋭く発達しています。 

後日私が現場入りした際に、巣口Lから伸びるアクセストレンチが新たに形成されたと思ったのですが、監視カメラの映像を確認すると、タヌキの仕業でした。 
以下に写真を掲載しますが、昼間も薄暗い林内でストロボを焚くと、新しく掘られた穴の立体感や遠近感がいまいち失われてしまいます。







結局タヌキは、野ネズミや虫などの獲物を何も捕れなかったようです。
 「大山鳴動して鼠一匹」という諺よりも効率(コスパ)が悪い採餌行動でした。 
その後もホンドタヌキがこの巣穴Lに転入(引っ越し)することもありませんでした。



ノアザミの花で採餌するコハナバチ♀の一種?

 

2024年6月上旬・午前11:30・くもり 

水田の農道に咲いたノアザミの群落で見慣れないハナバチが訪花していました。 
ノアザミの雄しべの先端から白い花粉が吹き出しています。 
ハナバチが口吻を伸ばして吸蜜しながらノアザミの頭花を歩き回ると、必然的に雄しべの花粉が蜂の体毛に付着します。 
顔の毛や前脚にノアザミの白い花粉が大量に付着していたのに、後脚の花粉籠はまだ空荷でした。 
ミツバチ科だと思ったのですけど、ハキリバチ科の可能性もありますかね? 
腹部下面にスコパの有無を確認できませんでした。 

マクロモードでカメラのレンズをそっと近づけながら接写しても、蜂は逃げませんでした。 
飛び立つとやや高音の羽音を立て、同じ頭花にすぐ舞い戻ってきます。 
再び飛び立つと、ホバリングしてから手前の頭花に着陸しました。 

蜂が居なくなった後でノアザミの総苞片に触れると、粘り気があることを確認しました。 
農道の奥の水田では田植えが終わっていました。
はじめは筒状花から雄しべが現れて、昆虫などが花を刺激すると、接触運動により雄しべから花粉が湧き出てきて、昆虫に花粉を与える[9][10][8]。雄しべが引っ込むと、続いて雌しべが現れて、花粉をつけた昆虫の媒介によって受粉する[8]。頭花の外側にある総苞は緑色の球形で、総苞片は反り返らず、直立して先端は鋭いとげになり、粘液を出して背面はよく粘る[7][5][6]。(wikipedia:ノアザミより引用)
関連記事()▶ 第8話「アザミの花粉放出の巧妙な仕掛け」 


さて、このハナバチの種類(和名)は何でしょうか? 
腹部には黒と茶色の横縞模様。
胸背は黒くてつるつるしています。 
剥げたのか、それとも元々胸背には毛が生えないのか、不明です。 
胸部の辺縁部には白っぽい毛が密生しています。 
オオマルハナバチ♀ほど毛深くありません。 
関連記事(同所同時期の撮影)▶ ノアザミの花で採餌するオオマルハナバチ創設女王 
伸ばした口吻は真っ黒。
後脚だけでなく中脚にも茶色の毛が密生していて、花粉籠が複数あるように見える。

この件でPerplexity AIに相談してみたところ、画像認識もやった挙句にコハナバチ科の一種ではないか?と言われました。 
現在のAI技術は、質問に虫の写真を添付しても、分類学者が作った検索表に従って細部の特徴を検討して種を同定してくれる訳ではありません。 
ただ画像検索で似た写真をインターネット上で探しているだけなので、注意が必要です。 
AIが学習できるほど充分な数の写真データがインターネット上に蓄積されていれば(メジャーな種なら)、その方法(画像認識)でも上手く行くのですが、コハナバチ?のようなマイナーな種類の虫だとあまりあてになりません。 
あいにく私はコハナバチについて疎いので、今回の回答がAI特有のハルシネーション(自信満々の知ったかぶり)かどうかも判断できません。 
ハナバチに詳しい人にぜひ判定してもらいたいところです。
コハナバチ科の中には、ヒトの汗を好んで舐める蜂がいるらしいのですが、今回の個体は私の汗ばんだ手を舐めに来ませんでした。


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2025/07/08

平地の二次林で空咳をするニホンカモシカ【トレイルカメラ】

 



2024年6月中旬・午後14:07・晴れ
平地の二次林で最近暮らすようになったニホンカモシカCapricornis crispus)がニホンアナグマの旧営巣地(セット)で頭を下げて地面の匂いを嗅ぐと、コホッコホッ♪と乾いた咳をしました。 

別アングルに設置した監視カメラでも空咳のシーンが撮れていました。(@0:13〜) 
アナグマの巣口Rを見下ろしながら、空咳をしています。 
その後はペロペロと舌舐めずり。 
「咳をしても独り」という尾崎放哉が詠んだ有名な自由律俳句を思い出します。 
最近この巣穴に出入りしているアナグマやタヌキの残り香を嗅ぎつけてむせたのではなく、呼吸系の疾患かもしれません。 


※ カモシカの咳が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
野生のニホンカモシカで空咳をしている個体を観察したのは、今回が初めてです。 
興味深い症例なので、まずGemini AIに相談してみた回答を掲載します。
野生のニホンカモシカで咳をしている個体を見かけられたとのこと、ご心配ですね。カモシカが咳をする原因は、いくつか考えられます。 考えられる咳の原因 感染症: パラポックスウイルス感染症: ニホンカモシカでは、口唇や眼瞼周囲に発疹ができ、咳やくしゃみなどの呼吸器症状を伴うことがあります。特に、過去に国内で発生した事例があり、注意が必要です。 他のウイルス性・細菌性感染症: パラポックスウイルス以外にも、様々なウイルスや細菌が原因で呼吸器系の感染症を起こす可能性があります。 肺虫症: 肺に寄生虫が寄生することで、咳や呼吸困難などの症状が現れることがあります。 環境要因: 大気汚染: スモッグや排気ガスなど、大気汚染物質を吸い込むことで、呼吸器系が刺激され、咳が出ることがあります。 花粉症: 春先など、特定の時期に花粉を吸い込むことで、アレルギー反応を起こし、咳が出ることがあります。 異物混入: 草や木の枝などを誤って吸い込んでしまい、咳が出る場合があります。 その他: ストレス: 環境の変化や他の個体との争いなど、ストレスによって免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる可能性があります。 老衰: 高齢個体では、呼吸器系の機能が低下し、咳が出やすくなることがあります。
AIの回答はもっともらしくても出典や情報源を示してくれないことが多いので、どこまで信用できるのか、素人には判断できません。 

次にカモシカに関する専門書籍を紐解いてみました。 
大町山岳博物館『カモシカ:氷河期を生きた動物』は出版が1991年で古い本ですが、死んだニホンカモシカ(野生または飼育個体)を計474件も病理解剖した結果がカラーの病理写真とともに詳細にまとめられていて、貴重な資料になっています。 
カモシカの呼吸器系疾患として、以下の病名が列挙されていました。
肺炎(繊維素性胸膜肺炎、誤嚥性肺炎、気管支肺炎、線維性肺炎、化膿性肺炎、ウイルス性肺炎、外因性肺炎、他)、肺充血、肺水腫、感冒、熱射病、日射病、肺出血、胸膜炎、肺壊疽 (p102 表17より引用)
肺炎は呼吸器系の病気の中で最も生じやすい病気で、特に幼獣にとって重要である。(中略)肺炎にかかったカモシカは発熱し、呼吸があらく早くなり、呼吸困難の状態を示す。体力が弱り下痢を併発するものもいる。また、生前はそれと分からず、死亡後の検査で肺炎と診断される場合もある。(中略)肺炎は微生物による感染のほか、寒さやストレスによる体力の低下、異物を吸いこんだり他の病気に併発して発病したりする。幼獣は、成獣に比べ外界の変化に対して抵抗力が弱いから、肺炎にかかりやすいのも当然である。 (p106-107より引用)
他には、肺虫症の症例が多かったそうです。
肺虫は宿主であるカモシカを死に至らせない程度に肺の一部に宿借りし、自分たちの「種」を保存している。肺虫病変は年齢を問わず、検索したカモシカの70%以上に観察された。(p115より引用)
トレイルカメラの映像や空咳の音声だけから呼吸器系疾患の診断をするのは無理ですが、専門書で得た知識を念頭に入れつつ経過を見守るしかありません。 
ただの一時的な軽い症状で、心配いらないかもしれません。
上記AIの回答は、明らかに本書または同一著者(大町山岳博物館館長の千葉彬司 氏)による関連文献を学習した内容が含まれているようで、それほど的外れなハルシネーションはなさそうです。


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