2021/04/06

ニホンミツバチ♀がナギナタコウジュの花で採餌

 

2020年10月上旬・午後14:40頃・くもり 

山間部の道端に咲いたナギナタコウジュの群落でニホンミツバチApis cerana japonica)のワーカー♀が忙しなく訪花していました。 
正当訪花で吸蜜している蜂の後脚をよく見ると、花粉籠は空荷でした。
▼関連記事(1年前の撮影) 
ナギナタコウジュの花で採餌するニホンミツバチ♀

2021/04/05

夜明け前に塒から飛び立つダイサギの群れ【10倍速映像】:「情報センター仮説」の直接検証

前回の記事:▶ ヒマラヤスギ樹上に塒入りするダイサギの群れ(冬の野鳥)
2020年11月中旬・午前5:43〜6:07(日の出時刻は午前6:22)・晴れ 

前回の観察から2日後の夜明け前からダイサギArdea alba)が群れで寝ている集団ねぐらの様子を見に来ました。 
快晴のため、無風でも放射冷却現象で気温がかなり下がりました。 
水たまりが凍ったり地面に霜柱ができるほどではありませんが、下草に白い霜が降りていました。 
ダイサギが塒を離れて朝食採餌に出かける様子の一部始終を動画で記録してみましょう。 
気温が下がる早朝にレンズの結露を防ぐため、鏡筒にUSBレンズヒーターを巻いてモバイルバッテリーから給電しました。 
朝日に対して順光のアングルになるように三脚カメラを設置。 

手持ち夜景モードに切り替えたカメラに動画撮影を任せ、私は木陰に身を隠しました。 
あいにくこの現場には本格的なブラインドを張れそうな場所が無くて、隠し撮りするのに苦労します。 
暗いうちは良いのですが、明るくなると私の姿を見つけた途端に警戒心の強いダイサギは塒から飛び去ってしまいそうです。 
しかし、今回ダイサギは警戒声を発せず黙って塒から1羽ずつ飛び去り、他個体がつられて連鎖的に(一斉に)飛び去ることもありませんでした。 
したがって、私の撮影行為自体がダイサギに及ぼした影響は小さいはずです。 

離塒の間隔を分かりやすくするために、10倍速の早回し映像に加工しました。 
(等倍速の映像も下に掲載しています。)
動画編集時にコントラストを少し上げました。 
実際の空より少し暗くなるものの、白鷺が際立ちます。 

ヒマラヤスギ高木のあちこちの枝で白鷺の群れが互いに少し離れて寝ています。 
針葉樹林の黒いシルエットにまるで白い花が咲いたようです。 
未だ真っ暗な時刻に中程の高さの枝から1羽のダイサギが飛び立ったものの、すぐに舞い戻って来ました。 
寝ぼけて夢遊病のように飛び出してしまった個体なのか、あるいは暗くても私の存在に気づいた個体が警戒したのかもしれません。

やがて目覚めた個体から順に樹上で背伸びをしたり翼をバサバサと羽ばたいたり、身震いしたりしています。 
続いて朝の羽繕いを始めました。 

結論を先に述べると、朝日が昇る(午前6:22)前の午前6:06にはダイサギの全個体(計13羽)の離塒りじが完了しました。 
1羽ずつばらばらに離から飛び去ったことが重要なポイントです。 
しかも塒から飛び出す方角はまちまちでした。 
塒の上空で旋回してから採餌場へ飛び去る個体もいます。 
相次いで塒を離れた場合でも、先行する個体を慌てて追いかけるのではなく、別方角へ飛び去りました。 
おそらく空腹に耐えられなくなった個体から順に離塒するのでしょう。 
大型の鳥ダイサギが飛び去ると、それまで止まっていたヒマラヤスギの枝がしばらく揺れています。 

夜が明けると、周囲ではカラスが鳴き始めました♪。 
毎朝午前6:00には大音量でサイレンがウーーーー♪と鳴り響きます。 
ダイサギはこのサイレンの音を合図にして一斉に離塒している訳ではありませんでした。 
サイレンが鳴る前にも後にも個々に集団塒のヒマラヤスギ樹上から飛び去っていました。 

ヒマラヤスギ林を占拠していた白鷺の群れが居なくなると、ハトやカラスなど他種の野鳥が飛来して止まり木として利用するようになりました。 
まるでダイサギが居なくなるのを待ちかねていたようです。 
ただの偶然かもしれませんが、猛禽でもないのに大型のダイサギを恐れていたのですかね? 

撮影地点で測定した気温は、午前5:44で気温4.7℃・湿度54%。 
午前6:10には気温2.4℃・湿度76%まで下がりました。 

さて、種々の鳥類がなぜ群れで集まり塒をとるのか?という鳥類生態学の問題に対して、これまで幾つかの仮説が提唱されてきました。 
その一つの「情報センター仮説」をここでは検討します。 
少し長くなりますけど、上田恵介『鳥はなぜ集まる?:群れの行動生態学』という本の第2章「ねぐらはエサの情報センター」から引用します。
エサを見つけられなかった鳥が餌探しに成功した鳥のあとをついてエサ場に行くのではないだろうかというのがワードとザハビの「情報センター仮説」です。(中略) ワードとザハビの論文が出されるなり、これにすばやく反応して研究をおこなったのが、オックスフォード大学のJ・R・クレブスでした。彼は留学していたカナダの、オオアオサギのコロニーでこの仮説が正しいかどうかを調べたのです。  彼はこう考えました。もしサギたちがコロニーを情報の交換場所に使っているならコロニーを飛び立つ時に、サギたちはバラバラに飛び立っていくのではなく、前日に十分エサをとった鳥のあとを、エサがとれなかった鳥がついていくように飛び立つだろうと予測しました。彼は朝、飛び立つサギたちの飛び立ち間隔を調べ、それをサギたちがもしランダムに飛び立ったらどうかという理論値と比較してみました。するとオオアオサギたちは、バラバラに飛び立っているのではなく、ある個体が飛び立つとそのあとを何羽かの個体がついていくように飛び立つ傾向にあることを発見しました。 よく引用されるクレブスの仕事です。しかし先に飛び立った鳥が前日にエサを十分に食べた鳥かどうかはわかっていませんし、グループで採食に行くということ自体、情報センターを仮定しなくてもサギたちにとって十分有利なので、彼のこのデータはあくまでも状況証拠にしかすぎません。直接的には個体識別した鳥をねぐらとエサ場で観察すればよいのですが、それがなかなかむずかしいのです。(p20-21より引用)
ちなみに原著論文はこちらです。
Krebs, J. R. (1974). Colonial nesting and social feeding as strategies for exploiting food resources in the Great Blue Heron (Ardea herodias). Behaviour, 51(1-2), 99-134.
原著論文の要旨だけでもよく読むと、筆者のクレブスはオオアオサギの塒ではなく繁殖期のコロニー(巣の集まり)から朝に飛び立つ個体を調べていました。 
私にとってこの区別は結構重要に思えるのですが、孫引きした総説や鳥の入門書では区別せずにさらっと流している(混同している)ことが多いです。 
鳥の巣と塒は基本的に別物です。

今回私が観察したダイサギは冬季の集団塒から1羽ずつバラバラに飛び去ったので、サギ類では定説になっているはずの「情報センター仮説」(the Information-Centre Hypothesis;ICH)はあっさり否定できそうです。 
ただし、私の観察したダイサギの群れは文献の生データよりも個体数(13羽)が少なすぎる点が問題となる(証拠として弱い)かもしれません。
定量データ(離塒間隔)の統計処理もしていないので、クレブスの研究の厳密な追試ではありません。 
しかし塒から個別に飛び去った証拠映像があれば反例として充分ではないかと思います。
クレブスの時代(1970年代)にはビデオカメラを野外で気軽には使えなかったので苦肉の策として統計処理に頼ったのではないでしょうか?
次回の撮影では、離塒したダイサギの各個体がどの方角に飛び去ったか餌場の方角をしっかり確認するために、もっと広角で記録する必要がありそうです。

そもそも冬にこの地域の川や池には魚影が薄い(ダイサギの餌となる獲物の密度が低い)ので、個々のダイサギが広い餌場を必要とします。
つまり昼間にダイサギは群れを作らず単独で採食します。
仮に仲間について行っても分け前が更に減るだけですから、喧嘩になるでしょう。
夕方になるとダイサギは各自の餌場から再び集団塒に戻って来るのですが、ダイサギの冬塒で「情報センター仮説」が成り立たないのは当然かもしれません。

 

↑【おまけの動画】 
長撮りしたオリジナル素材の長編動画(21:05)をブログ限定で公開します。 

4日後にも定点観察で追試しました。


体内寄生されたナシケンモン(蛾)幼虫の異常な巣作り【200倍速映像】

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#7

前回の記事:▶ 体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫が繭を作る場所を探索【10倍速映像】
2020年11月上旬 

ナシケンモンViminia rumicis)の被寄生終齢幼虫は食草だったベニバナボロギクの葉裏に落ち着くと、営繭用の巣を作り始めました。 
微速度撮影したので200倍速の早回し映像をご覧ください。 
白い絹糸を口から吐いて周囲の葉を綴り合わそうとしています。 
三田村敏正『繭ハンドブック』によると、ナシケンモンは
餌植物の葉を綴って繭を作る。(中略)繭層は非常に薄く、中の蛹が透けて見える。(中略)繭全体が葉でくるまれていることもある。 (p61より引用)
ところが巣作りが遅々として進まず、休んでいる時間の方が長いです。 
寄生されていない正常個体の営繭行動を私は未だ観察したことがないのですが、もしかすると、オトシブミのように葉裏から葉脈に噛み傷を付けて萎れさせ、巣材を加工しやすくしているのか?と初めは思ったりしました。 
ベニバナボロギクの葉がみるみる萎れていくのは、至近距離から照明を当てているためのようです。 
対策として、途中で花瓶の水を追加しました。 

ナシケンモンの幼虫は自身の体の周りの葉裏に辛うじて少量の絹糸を張り巡らしただけで動かなくなりました。 
あまりにも異例尽くめなので、この時点になると体内寄生されてることを確信しました。 
絹糸腺は寄主の生存に不可欠な器官ではありませんから、おそらく寄生蜂の幼虫にほとんど食われてしまい、巣作りや営繭に必要な絹糸を吐けなくなったのでしょう。 
この個体の徘徊運動がギクシャクとぎこちないのは前からですが、葉裏に静止している間もピクピクと不規則に蠕動しています。 
筋肉組織や運動神経系も寄生蜂の幼虫にどんどん食い荒らされているのでしょう。 

体内寄生虫が寄主の行動を操作して自らの生存に都合の良い構造物(巣)を作らせる「延長された表現型」の事例はいくつか知られています。 
しかし、今回の観察例もそうなのかどうかは疑問です。 
せいぜい、寄主が力尽きる前に全身を植物にしっかり固定させているぐらいだと思います。
比較のために、寄生されていない正常個体の営繭行動を観察するのが次の宿題です。

    

↑【おまけの映像】 
 同じ素材で早回し速度を半分の100倍速に落とした動画をブログ限定で公開します。 

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