2024年6月下旬〜7月上旬
シーン0:6/26・午後13:46・くもり・気温31℃(@0:00〜)
ニホンアナグマ(Meles anakuma)の母子家族(母親♀と幼獣4頭)が転入してきた営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張っています。
ホンドギツネ(Vulpes vulpes japonica)の登場シーンをまとめました。
シーン1:6/27・午前5:37・気温11℃(@0:04〜)日の出時刻は午前4:15。
薄暗い早朝に獣道からキツネが久しぶりにやって来ました。
アナグマの巣口Lを覗き込んで、頻りに匂いを嗅いでから、左へ向かいました。
シーン2:6/27・午前5:37・気温12℃(@0:49〜)
別アングルで設置した監視カメラに続きが撮れていました。
今度はもう一つの巣口Rに頭を突っ込んだものの、巣内には押し入らず、右へ立ち去りました。
奥の二次林に朝日が射し込んでいます。
その間、アナグマの家族は寝ているのか、巣穴に籠城したままでした。
このキツネは夏毛に生え変わり、尻尾の毛並みも正常な個体でした。
シーン3:7/1・午後19:11・気温23℃(@1:23〜)
4日後の晩にもキツネが再登場。
左奥から来てアナグマの巣口Lを覗き込んでいました。
尻尾が健全な個体です。
次は右に来て、もう一つの巣口Rを調べます。
立ち去る間際にホンドギツネが巣口Rでクゥオオオン♪と甲高く鳴きました!(@1:56〜)
アナグマ家族の匂いを嗅ぎ取って興奮しているのか、初めて聞く鳴き方です。
キツネはいつも単独で現れるので、仲間に対して鳴いているとは思えません。
今回もキツネは匂いを嗅ぐだけで、巣穴に強引に侵入することはありませんでした。
二次林内に入り右へ向かいます。
監視カメラの死角に消えてからも再び(キツネの?)奇妙な鳴き声がかすかに聞こえました。
※ キツネの鳴き声が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。
【考察】
ニホンアナグマの母子が籠城する巣穴の入口でホンドギツネが大声で鳴いたのが興味深く、自分なりに解釈を考察してみました。
キツネの狩りのシーンをトレイルカメラで何度か観察しているのですけど、野ネズミを狙っているときなどにキツネが鳴くことは一度もありませんでした。
キツネは野ネズミの巣穴付近で待ち伏せ型の狩りをしますから、わざわざ大声で鳴いて獲物に自分の存在を知らせるはずがありません。
したがって、今回アナグマの巣口でキツネが鳴いたのも、狩りの衝動とは結びつかないでしょう。
キツネが野ネズミを狩る際に、わざと足音を踏み鳴らしながら2つの巣口を往復して、野ネズミを巣外に追い出してから狩ろうとする行動を過去に見たことがあります。
今回のキツネが大声で鳴いたのは、巣内に潜む獲物(アナグマ)を威嚇して巣外に飛び出してくる獲物を待ち伏せする目的だったのかもしれません。(おびき出し仮説)
しかし、キツネの鳴き声に怯えたアナグマ(幼獣)が別の出口から飛び出してくることはありませんでした。
そもそも2つの巣穴は内部でつながっていないため、出入り口は一つずつしかありません。
私の知る限り、この営巣地(セット)では緊急用の脱出口は作られていないのです。
アナグマの家族は日によってどちらかの巣穴を居室として暮らしています。
アナグマの各巣穴に出入口が1つしか無いことを、長期観察している私は知っていますけど、滅多に来ないキツネがアナグマの巣穴の内部構造を把握しているかどうか疑問です。
セットの匂いを嗅ぎ回るだけで、そこまで分かるとは思えません。
巣口の匂いを念入りに嗅いだキツネが、獲物となり得るアナグマ幼獣の存在を知ったことは間違いありません。
それなのに、キツネは巣内に押し入ってアナグマ幼獣を狩ることはなく、立ち去りました。
おそらくアナグマの母親♀が巣内で幼獣と一緒に籠城していたはずです。
動画では聞き取れませんでしたが、巣穴の奥からアナグマの母親♀も唸り声をあげて、侵入しかけたキツネを威嚇・撃退したのかもしれません。
もしもキツネが無理してアナグマの巣穴に強引に侵入すると、追い詰められたアナグマの母親♀が我が子を守るために必死で反撃する可能性が高く、「背水の陣」で「窮鼠猫を噛む」リスクがあります。
それでキツネは狩りを諦めたのでしょう。
つまり、キツネの葛藤が大きな鳴き声として表出した置換行動と思われます。
この記事を書くために、ChatGPTと問答を繰り返し、解釈についてブレインストーミングしました。
結論: キツネがアナグマの巣口で大声をあげたのは、獲物を前にした狩りの衝動そのものではなく、巣を守る母アナグマに対する警戒と、捕食欲求との間で揺れ動いた葛藤の表れだった可能性が高い。
つづく→
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