2022年8月上旬・午前11:30頃・晴れ
里山の林道にできた轍 の水溜まりでオオセンチコガネ♂(Phelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)が立ち往生していました。
地上を歩いていて水溜りにうっかり落ちてしまったのか、それとも飛来したオオセンチコガネ♂が水溜りの眩しい水面を地面と見間違えて無謀な着陸をしたのでしょうか?
現場は里山の中腹にある平坦になったスギ植林地(カラマツが点在)を通る林道です。
周囲でやかましく鳴いているのはエゾゼミ♂♪です。
水溜まりに突き刺さった細い落枝にオオセンチコガネ♂がしがみついていました。
止まり木の天辺から飛び立てば脱出できるはずなのに、困ったように何度も昇降を繰り返しています。
離陸用の足場としては細過ぎるのか、飛び立つ前にバランスを崩してしまいます。
背面は美しい赤紫のメタリックカラーに輝き、腹面にも美しい金属光沢があります。
前脚の跗節に棘状の突起があるので♂と判明。
飛ぶのを諦めたオオセンチコガネ♂は、小枝を下に伝って自発的に水中へ潜ってしまいました。
陸生甲虫のオオセンチコガネは足に水かき用の毛が密生していないので泳げません。 (水中で前に推進できない)
水底を歩いて岸に辿り着こうとしても、浮力のせいで爪先のグリップが効かず、うまく歩けません。
泳げないのならむしろ「金づち」のように沈んでしまう方が水底を歩けて良いのです。
遂に水中でひっくり返ってしまいました。
不格好に水面を浮いて、目の前にある極細の落枝を必死で掴もうとしています。
(文字通り「溺れる者は藁をも掴む」)
元の極細落枝には戻れず、なんとかスギ落葉によじ登って水面から顔を出しました。
水中で呼吸がどれだけ続くのか、溺死の危機です。
見かねて最後は救出しました。
もし水溜りに捕食性の水生昆虫がいれば、そのまま成り行きを見守ったかもしれません。
轍に溜まった濁った水中にはボウフラ(蚊の幼虫)しか居ませんでした。
甲虫の中には水中に進出したグループもいますが(水生昆虫)、足に水かきがあったり、鞘翅と後翅の隙間に空気の泡を貯めておいて呼吸したり、様々な適応進化の結果です。
オオセンチコガネは純粋な陸生のようで、泳ぎも潜りも下手糞と分かりました。
(泳ぐ能力を調べるために水溜りに放り込んで実験した訳ではなく、偶然の観察記録です。)
タヌキとアナグマの溜め糞場sに向かう道中だったので、もし新鮮な溜め糞があれば放虫して行動を観察するつもりでした。
しかし、この日は新鮮な糞が残っていなかった(糞虫に運び去られた後だった)ので、オオセンチコガネ♂をそのまま家に持ち帰って飼育することにしました。
糞虫の専門家は野外で排便(野糞)して自分の人糞を糞虫トラップの誘引材にすることもあるそうです。
このとき私に便意があれば「セルフィー」に挑戦したかもしれませんが、朝フィールドに出る前にしっかり済ませてきていました。
興味深いことに、同じ日に別の場所で同様の水難事故に再び遭遇しました。
つづく→ センチコガネの水難事故
↑【おまけの動画】
もう少し長い完全版をブログ限定で公開しておきます。
小枝の天辺からじきに翅を広げて飛び立つだろうと予想した私は、実はハイスピード動画に切り替えて撮影していました。(@0:19〜0:35)
ところが細い小枝は足場が安定しないのか、いつまで経っても飛び立とうとしません。
スローモーションにする意味がないので、早回し加工して等倍速に戻してお見せします。
(手ブレが酷いです。)
飛べないと分かった私は、通常のFHD動画モードに戻して撮影を続けました。
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