2020年8月上旬・午後14:50頃・晴れ
堤防路に沿って自生するオオイタドリ群落の葉の上で、ルリイロハラナガハナアブの一種が奇妙な動きをしていました。
腹端を中心として扇状に(ジグザグに)歩き回るのが異性を惹きつける誇示行動(ディスプレイ)なら面白いと思ったのですが、よく見ると摂食行動でした。
葉の表面を効率的に(無駄なく)走査するように舐め回すための動きなのでしょう。
少しだけ飛んで隣の葉に移動し、謎の摂食を続けます。
オオイタドリの花から葉に落ちた白い花粉を舐めているのだとすれば、どうして訪花して直接舐めないのでしょうか?
イタドリの仲間には葉柄の根元に花外蜜腺の存在が知られています。
葉の表面もほのかに甘いのでしょうか?
だとすれば、アリのように花外蜜腺を直接舐めに行かないのは不思議です。
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後半はマクロレンズを装着して接写してみました。
被写体の動きが素早いために目が回って酔いそうな映像なので、1/5倍速のスローモーションでご覧頂きます。(@2:36〜)
どうやらルリイロハラナガハナアブ♀は、葉の表面に粉を吹いたような白い点々を舐め取っているようです。
この白い粉状の物体はアブラムシが排泄した甘露なのかな? (※追記参照)
一方、鳥が葉に落とした白い糞?には執着しませんでした。(@4:15)
最後、葉上の落花を見つけて舌で触れた途端に、飛んで逃げてしまいました。(@4:30)
口吻を葯に押し付けたら落花が動き、それに驚いたようです。
左右の複眼が離れているので♀です。
撮影後にビニール袋で採集を試みたものの、間一髪で逃げられてしまいました。
おそらくナミルリイロハラナガハナアブ(Xylota amamiensis)またはミヤマルリイロハラナガハナアブ(Xylota coquilletti) だと思います。
※【追記】
日本植物病理学会『植物たちの戦争:病原体との5億年サバイバルレース』という本(ブルーバックス・シリーズ)を読んでいたら、「オオイタドリの葉の表面が白い粉を吹いていたのは、うどんこ病の一種かもしれない」と思いつきました。
ルリイロハラナガハナアブがうどんこ病の白い菌糸?(胞子?)を積極的に摂取しているのだとしたら、とても興味深い習性です。
宿主特異性が高いので、昆虫が植物病原菌を食べても病気になることはまずありません。
ルリイロハラナガハナアブは、植物群落でうどんこ病の感染を広める媒介生物になっている可能性が考えられます。(※追記2参照)
植物病理学に関して私は未だ勉強を始めたばかりなので、全く的外れな仮説かもしれませんが、備忘録として残しておきます。
この分野もなかなかエキサイティングですね。
「日本植物病名データベース」サイトで検索すると、タデ類を宿主とするうどんこ病の病原菌が突き止められているそうです。
宿主 タデ類, イブキトラノオ, ツルソバ, イタドリ, ツルタデ, ミズヒキ, ヤナギタデ, サナエタデ, オオイヌタデ, イヌタデ, タニソバ, オオケタデ, イシミカワ, ハナタデ, ママコノシリヌグイ, アキノウナギツカミ, ミゾソバ, ムカゴトラノオPolygonum spp.病名 うどんこ病病名読み udonko-byo病名英名 Powdery mildew病原 Erysiphe polygoni de Candolle文献 野村幸彦ら:東農大農学集報 22:301, 1977丹田誠之助:日本植物病害大事典(岸 國平編):1206, 1998備考 イヌタデ・オオイヌタデに発生外部サイト 日本植物病害大事典 (BOUJO.net)
この菌(Erysiphe polygoni)は、タデ類の他にキュウリやオシロイバナなども宿主とするらしい。
※【追記2】
例えばキイロテントウ(Illeis koebelei)は、成虫・幼虫ともに、植物につくうどんこ病菌などの菌類を食べる益虫として知られています。
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