ナミツチスガリ営巣の定点観察#5
2012年8月中旬
巣穴cに出入りするナミツチスガリ♀(Cerceris hortivaga)の活動について映像をまとめました。
この個体の活動が最も活発で、しかも撮影し易い巣穴です。
なるべくここを集中的に監視してみました。
獲物の搬入
外出した蜂が空荷で帰ることもありますが、狩りに成功して麻酔した獲物を搬入するときがありました。
腹に獲物を抱えて空中運搬します。
本種の狩る獲物はコハナバチ類とされていますが、映像では小さくてよく分かりませんね。
先に蜂が頭から巣内に入り、中で方向転換してから巣口に置いた獲物を大顎で引きずり込み貯食しています。
一瞬の隙を見て獲物をピンセットで取り上げ、巣口から少し離れた所に置いてやれば、もしかすると再び毒針を刺して麻酔するかもしれません。
帰巣時の目印について
この個体♀cは巣口横に生えた一本の草(イネ科)を目印として覚えているような印象を受けました。
巣穴にペットボトル容器を被せておくと帰巣した蜂は迷子になり、近くで似た地形の草の横を重点的に飛び回って巣穴を探していました。
邪魔な蓋を外してやると、ようやく自分の巣に辿りつけました。
もしも巣口に蓋をするのではなくて横の草を抜いてしまったら、帰巣する蜂は自分の巣穴を正しく見つけられるでしょうか?
目印の草を横にずらして移植する操作実験は難しそうです。
巣口の閉鎖行動について
この個体♀cは隣の♀b、♀cとは異なり、帰巣の度に行うはずの巣穴一時閉鎖を省略している(真面目にやらない)点が興味深く思いました。
行動的な個体差なのでしょうか?
巣口が常に小石で半分塞がれていて天然の落とし戸(trap door)のようになっていることが影響しているのかもしれません。
この落とし戸は偶然の産物なのか、蜂が意図的に設置したのか気になります。
蜂は毎回この中途半端な落とし戸の隙間をすり抜けるのに苦労しています。
もし本当に蜂にとって邪魔なだけの障害物だとしたら、外出前にこの小石を除去するはずです。
むしろ出巣の際に落とし戸で巣口を戸締りして行くようにも見えました(偶然かもしれませんが小石を斜めにずらして巣口を軽く塞ぐ)。
取り除きたくても非力で運べないのかな?
もし私が介入して落とし戸(巣口を塞ぐ小石)をピンセットで除去してやったら、♀cは他の個体と同様に中から土砂を掻き出して巣口を一時閉鎖するようになるでしょうか?
下手な介入(撹乱)のせいで蜂が帰巣出来なくなると困るので、この実験はやりませんでした。
ところが最後だけ巣坑の中から土砂を掻き出して一時閉鎖しました。
この個体では初めて見た行動です。(やれば出来る娘なのだ!)
ナミツチスガリの一時閉鎖行動は常に後ろ向きで行うので、お尻の縞模様が見えます。
この日の活動は終了なのか、巣口は中から完全に塞がれました。(店じまい)
落とした獲物の亡骸? |
また、このナミツチスガリ集団営巣地で蜂のような黒い虫の死骸が転がっているのを見つけました。
私にはこれがコハナバチ類の胸部なのか見分けられないのですが、もしかするとナミツチスガリが狩ってきた獲物を運搬中に落としてしまい、麻痺状態のままアリなどに解体された死骸かもしれないと思いました。
にわか雨が降り出したので観察を打ち切って帰りました。
6日後(8月下旬)に営巣地を再訪したときには、蜂の活動は無くなっていました。
車の往来のためか、巣口周囲の砂利の配置も乱れていました。
育房を発掘してみるつもりが、巣の位置が分からなくなってしまい残念。
シリーズ完。
これから外出 |
獲物を搬入 |
斜坑の巣口を落とし戸のような小石が塞いでいる |
1円玉を巣口に並べて置く |
一時閉鎖後の巣口 |
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