2025/09/05

ニホンザルの若い♂を巡って争う2頭の♀(非繁殖期のマウンティング)

 



2024年6月中旬・午前11:05頃・晴れ 

山麓の砂防ダム堰堤に5頭のニホンザルMacaca fuscata fuscata)が集まり、寝そべった1頭の♂の毛繕いをしています。
私に気づいて警戒した猿たちが解散したかと思いきや、対他毛繕いを受けていた若い♂が立ち上がって年上の♀aの背後からマウンティングしました。 
♀♂ペアが交尾?を始めると、周りの個体が慌てて離れていきます。 
マウントされた♀aは、背後の♂を仰ぎ見ることはありませんでした。 
また、♂はマウントしながら腰を動かす(ペルビック・スラスト)ことがなかったので、本当の交尾行動ではなさそうです。 
そもそもニホンザルの交尾期は主に秋から冬であり(10月~3月頃)、6月は出産期です。 
したがって、6月中旬に見られるマウンティング行動は、繁殖(交尾)目的ではないと考えられます。 

この若い♂個体の左上腕に黒い大きなホクロがあって、目を引きました。 
まさか人為的な入れ墨なのでしょうか? 
昔は野生動物の研究で個体識別するために入れ墨をした事例もあったそうなのですが、最近では廃れました。 
近年は顔や体の自然な特徴(ホクロや斑紋、傷、毛色など)や、AIによる顔認識技術を用いて識別するのが主流です。 
したがって、入れ墨ではなくて、生まれつきの黒子ほくろなのでしょう。 
今後の個体識別で使えそうな分かりやすい特徴です。 

この♂左腕黒子は、若いのに群れ内の順位が高いのか、それとも♂としてよほど魅力的なのか、周りの♀bがすぐに近寄ってきて機嫌を取るようにノミ取りを始めました(毛繕い)。 
さっき♂にマウントされた年上♀aも、寝そべった♂への対他毛繕いに参加したそうに、ノミ取りを覗き込んでいます。 

手前の茂みが撮影の邪魔なので、私はそっと移動して、堰堤の端から撮影を再開しました。 
幼い子猿たちは私に気づくと怖がって逃げていきます。 

堰堤に残った3頭(♂1♀2)の三角関係がとても興味深いです。 
若い♀bが♂左腕黒子の横に並んで対他毛繕いしようとすると、年上の♀aが嫉妬して、その間に何度もさり気なく割り込もうとするのです。 
遂に怒った(嫉妬に狂った?)♀aが、眼の前に居た若い♀bを攻撃し始めました。 
♀aがライバル♀bを掴まえようと襲いかかると、若い♀bは歯を剥き出し恐怖の表情(あるいはガーニーgurneyと呼ばれる服従の表情)をしながら必死で手前に逃げて堰堤の左下に降りました。 
しかし、逃げる♀bは悲鳴を上げませんでした。
「ガーニー(gurney)」は、サル類の行動学で使われる用語で、上下の歯を見せて口を横に大きく開く表情行動を指します。これは、リップスマッキング(唇をパクパクさせる親和的サイン)と並んで、服従や緊張緩和、親和的なコミュニケーションの場面でよく見られます。 ガーニーは、特に相手に対して敵意がないことや、優位性を認めていることを示すサインとして使われることが多く、**「服従の意を示す表情」**とも言われます。 (Perplexity AIの回答を引用)
♀同士の小競り合いを仲裁するかのように♂が年上♀aを追いかけ、背後から再びマウンティングしました。 
今回♀aは♂を仰ぎ見て、口をパクパクと動かしています(リップスマッキング)。 
怒った♀を宥める社会行動としてのマウンティングなんてあるのでしょうか? 
ニホンザルのマウンティングは、順位の確認だけでなく、個体の興奮や緊張をしずめる目的でも行われることがあるそうです。 

一連の三角関係を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:29〜) 


※ ニホンザルの鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
素人には解釈が難しい行動なので、この記事を書くためにPerplexity AIと問答を繰り返しました。 

交尾期(繁殖期)ではないので、性欲に駆られた行動ではないはずです。 
登場したニホンザルの尻を見ても、赤く発情していません。
したがって、今回の事件を面白おかしく「三角関係」と呼んでも良いのかどうか悩みます。 

♂はマウンティングの対象としては2回とも年上♀aを選んでいるので、♂が積極的に他の♀に浮気をしているようには見えません。 
それでも♀aは♂の寵愛を独占したいのか、ライバルの若い♀bに対して激しく嫉妬して追い払いました。 
♀aが♀bに割り込んだり威嚇したりする行動は、単なる「嫉妬」ではなく、♂との関係や自分の社会的地位を守ろうとする社会的競合の表れと考えられます。ニホンザル社会では、特定の個体との親和的な関係(毛繕い、接近、同席など)が他個体との間で競争の対象となることがよくあります。

今回の若い♂が群れ内で順位が高い(いわゆるボス猿、アルファ♂)のであれば、その♂と懇ろになった♀も自動的に群れ内での立場や順位が上がります。 
つまり、♀同士の権力闘争という側面もありそうです。
ニホンザルは母系社会で、オスは群れを移籍する一方、メスは生まれた群れで一生暮らします。そのため、メスの順位は主に母系を中心に決まりますが、特定の強いオスとの関係がメスの社会的地位向上に影響することもあります。 特に、アルファオスと親しい、あるいは多くのメスから注目されるオスと懇ろなメスは、群れ内での支持や優位を得やすくなります。ただし、順位関係は単純なものではなく、メス同士の家系的なつながりや群れの社会構造も複雑に関与しています。 また、オスの順位は戦いや競争で決まるだけでなく、メスの支持や社会的協力も重要な要素です。つまり、オスとメスの順位関係は相互に影響し合う社会的なものだと言えます。
しかし、今回2頭の♀が取り合った♂はボス猿(α♂)にしては若すぎる気がします。 
♀たちにとって、よほど魅力的な(優しいなど)♂なのでしょうか。
ニホンザルの社会において、順位の低いオスを巡っても、そのオスが特に魅力的であったり、優しい性格であったりする場合には、メス同士が争うことは十分にあり得ます。 理由としては、順位が低いオスでも、彼が持つ個別の魅力や社会的なつながり、例えば育児協力や防御の面で有利であることが評価されるためです。実際、繁殖相手としてだけでなく、社会的ネットワークや安全保障の観点から特定のオスを好むメスもいます。 また、順位の高いオスが必ずしも全てのメスから支持されるわけではなく、メス個体の選好や関係性が多様であることも知られています。そうした状況下で、順位の低いオスを巡ってメス同士が競合することは自然な社会的現象です。


知能の高いニホンザルは、生存のための基本的な行動以外にも社会生活が複雑です。

群れの全個体を識別した上で長期観察すれば、色々と面白いドラマが見えてくるはずです。

しかし、それだけでライフワークになってしまいます。

コナラの樹液に群がるヨツボシケシキスイ♀♂とスジクワガタ♀

 

2024年6月下旬・午後13:05頃・晴れ 

里山で廃道になった細い山道を辿って下山していると、甘酸っぱい発酵した樹液の芳香を嗅ぎ取りました。 
周囲を見渡すと、山道のすぐ横で樹液酒場を発見。 
幹の下部の傷口(カミキリムシの産卵跡?)から滲み出る樹液が白く泡立っていました。 
樹冠を見上げて葉を確認すると、樹種はコナラでした。 
現場は鬱蒼とした雑木林で、晴れた昼下がりでもかなり薄暗いです。 

コナラの樹液酒場に多数のヨツボシケシキスイLibrodor japonicus)が群がっていました。 
体長はまちまちですが、大きさでヨツボシケシキスイの性別は見分けられません。 
♂の方が♀よりも体長がやや大きい傾向があるものの、必ずしも大きさだけで雌雄の区別はできないらしい。 
ヨツボシケシキスイの性別は大顎の形状で見分けられるそうです。 
発達した大顎が左右非対称なら♂、左右対称の小さな大顎なら♀とのこと。 
大顎の形状に性的二型があるのに、ヨツボシケシキスイの♂同士が大顎を使って戦う様子を私は一度も見たことがありません。 

ヨツボシケシキスイの中には、白っぽい微小なダニ(種名不詳)が鞘翅に多数付着した個体がいました。 
これらのダニは吸血性の体外寄生虫ではなく、ただ便乗(ヒッチハイク)しているだけで無害らしい。 

ヨツボシケシキスイの群れを観察すると、♂らしき大型の個体が♀の背後からマウントしようと試みているようです。 
吸汁に専念したい♀は逃げ回ったり、樹皮の割れ目に隠れたりして交尾拒否していました。 
その横では、いつの間にか交尾を始めていた♀♂ペアもいました。 
求愛が成就する瞬間を見逃してしまったのですが、交尾していた♂は体長が小型だったので、小柄な♂個体も繁殖行動のハンディキャップにはならないようです。 
(ただの早い者勝ちなのかな?) 


クワガタムシの仲間も1匹だけコナラ樹液の発酵臭に誘われて来ていました。 
現場ではてっきりコクワガタ♀(Dorcus rectus rectus)かと思ったのですが、ストロボを焚いて撮った写真を確認すると鞘翅に細かな縦筋があったことからスジクワガタ♀(Dorcus striatipennis striatipennis)と判明しました。 
嬉しくなった私が焦ってクワガタを採集しようとしたら、幹の小坑に潜り込んでしまいました。 


ヨツボシケシキスイ♀♂とスジクワガタ♀以外で樹液酒場に来ていた微小な甲虫やハエ、アリなどの名前は分かりません。 

動画の後半は、コナラ幹の傷口から発酵した樹液がシュワシュワと泡立ちながら滲み出る様子をしばらく撮ってみました。 
三脚を持参していれば、樹液が滲み出る様子とそこに集まる昆虫の動向をタイムラプス動画で記録したいところでした。 


関連記事(6年前の撮影)▶  

2025/09/04

昼間の営巣地で独り寝そべって欠伸するニホンアナグマ♀【トレイルカメラ】

 



2024年6月下旬 

シーン1:6/30・午前5:40・気温17℃(@0:00〜)日の出時刻は午前4:17。 

まだ少し薄暗い早朝に、ニホンアナグマMeles anakuma)の母親♀がミズキの根元に座って体を後足で掻いていました。 
やがてその場にゴロンと横になり、欠伸をしました。 
この時期はもう幼獣に授乳をしていませんが、腹面に乳房や乳首が見えます。 
仰向けに背伸びをしながら再び欠伸。 


シーン2:6/30・午前8:15・気温22℃(@0:31〜) 
約2時間半後、すっかり明るくなった時刻にもお気に入りの休憩場所で母親♀が横臥していました。 
林縁にも木漏れ日が落ちて暑そうです。 

途中で体を起こして痒い部位を掻いてから、再び横臥。 
やがて腹式呼吸以外の動きがなくなったので、寝落ちしたようです。 


シーン3:6/30・午後13:28・気温24℃(@0:56〜) 
昼下がりの時刻なのに、葉が生い茂った二次林の林冠が日光を遮っているために暗く、低照度に反応した監視カメラがモノクロで起動しました。 
(しかし暗視モードではなく、赤外線を照射していません。)
おそらく左の巣穴Lから出てきたと思われる母親♀が、巣口Rの手前で腹ばいになり、欠伸をしました。 
巣口Rを覗き込み、周囲を警戒してから、再び口を大きく開いて欠伸。 
ようやく巣穴Rに潜り込みました。 

今回の動画に幼獣は1匹も登場しませんが、4頭全員が巣内で寝ているのでしょう。 




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