2023/10/16

早春の池に産み付けられたトウホクサンショウウオの卵塊をすくって見る

 

2023年4月上旬・午後14:05頃・晴れ 

里山で雪解け水が流れ込む池の水中に見慣れない卵嚢を見つけました。 
前の年に岸辺に生えたまま枯れたアブラガヤの1株が根元から倒れて水没しています。 
その茎に巨大な卵塊が産み付けられていたのです。 
枯れ茎ごと慎重に手繰り寄せてから、ブヨブヨの卵塊の下に右手を差し込んで掬い上げてみました。 
両生類に疎い私は現場でアカハライモリの卵塊なのかと思ったのですが、画像検索したら明らかに違います。 
どうやらトウホクサンショウウオHynobius lichenatus)の卵塊らしい。 
卵嚢はアブラガヤの枯茎にしっかり固定されていました。 
これは何匹の♀が産卵した結果なのかな?
黒い胚は球形で、胚発生は未だ進んでいません。 
トウホクサンショウウオ♀が産卵したばかりなのでしょう。 

動画の前半で水中の卵塊にズームインしたら、1匹の黒い幼生が浮上しかけ、再び卵塊に戻りました。(@0:43〜) 
これはおそらく同じ池で先に孵化したヤマアカガエルの幼生(オタマジャクシ)が無関係の卵塊に潜んでいたのだと思います。 

手前の岸辺に見えるヤマアカガエルRana ornativentris)の卵塊と比較すると対照的です。 
サンショウウオの卵塊は透明度が低く、やや白っぽい。 

いつかトウホクサンショウウオを飼育してみたいものです。 
今回は卵鞘をそのまま水中に戻してやりました。 

画像を自動色調補正したら、水中の卵塊がクリアになりました。




関連記事(別地点で半年前の撮影)▶ 山の泉で育つトウホクサンショウウオ幼生をすくって見る 
半年前に幼生を見つけた池は今回の池よりも標高が高いので、これから登って見に行けば産卵シーンが見れるかもしれません。

動画を撮影中に、池の周囲の山林でウグイス♂(Horornis diphone)が囀る声が聞こえますね。
繁殖期の始まりはホーホケキョ♪ときれいに鳴けません。
囀りさえずりが未だ下手糞で、練習しているようです(ぐぜり)。


2023/10/15

深夜の笹藪で動きを止め周囲を警戒するニホンノウサギ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年4月上旬・午前0:21・気温3℃ 

笹薮の中にあるタヌキの溜め糞場rpを見張る監視カメラに深夜ニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)が写りました。 
河畔林の林床に座り込み、一歩も動きませんでした。 
残雪が完全に溶けたので、そろそろ夏毛に生え変わらないといけないはずですが、残念ながら笹に隠れて毛皮の色がよく見えません。 

手前に生えた笹の葉陰でノウサギの白く光る目が瞬きしています。 
よく見ると長い耳をときどき動かして、周囲の物音を油断なく聞いています。 
明らかにトレイルカメラの存在に気づいており、葉陰に隠れて警戒しているようです。 
2個の赤外線LEDが点灯するとうっすらと赤く光り、まるで捕食者の目に見えて怖いのかもしれません。
それとも、トレイルカメラがかすかに発する電子ノイズが耳障りで警戒しているのかな? 



越冬明けの早春に求愛するキタテハ♂と交尾拒否する♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年3月下旬・午前11:40頃・晴れ 

川沿いの枯れ草に覆われた土手に越冬明けのキタテハPolygonia c-aureum)秋型が止まり、翅を開閉しながら日光浴していました。 
やがて自発的に飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:09〜) 
フィールドで見かけるキタテハの性別を私は自信を持って見分けられません。 
この個体はなんとなく、縄張りを張る♂が、飛来したライバル♂を追い払いに行ったように見えました。 
あるいは♂が♀を待ち伏せしていて、飛来した♀を追いかけて飛び立ったのかもしれません。 

『フィールドガイド日本のチョウ』という図鑑でキタテハ♀♂の識別法を調べると、
キタテハ:秋形では♀の(翅:しぐま註)裏の外縁は一様に濃褐色で、♂では淡黄色を帯びる。(p223より引用)
しかし翅裏に正対して見ないと、太陽光の角度によって色の濃淡は変わって見えます。 
翅裏を斜めからしか撮れていない動画で性別を見分けるのは難しいのです。

辺りを探すと、堤防路の道端で枯れた落ち葉の上に2頭のキタテハ♀♂が並んで止まっていました。 
♀は翅をしっかり閉じたまま、じっとしています。 
一方、♂は斜め後ろから頭部を♀の翅裏に密着させ、翅を半開きにしました。 
これがキタテハ♂の求愛行動なのでしょうか? 
♂の触角は♀の翅裏に触れています。 
もしかすると♀の性フェロモンの匂いを嗅いだり体に直に触れたりして、同種の♀であることを確認しているのかな? 

キタテハの求愛行動をじっくり記録するために、私は240-fpsのハイスピード動画に切り替えました。(@0:48〜1:46) 
♂は前脚で頻りに♀の翅裏に触れています。 
翅を広げた♂は日光浴しているようです。 
交尾に備えて体温を上げているのでしょうか。 
春風が吹くと、キタテハ♂の翅が煽られます。 
キタテハ♀が翅を閉じたままなのが交尾拒否の意思表示なのでしょう。 
シロチョウ科の交尾拒否行動とは全く異なります。 
しばらくするとキタテハ♂は紳士的に諦めて飛び去りました。(@1:25〜) 
翅をしっかり閉じた♀は全く無反応で、反射的に♂につられて飛び立つこともありませんでした。 
煩わしい♂から解放されてしばらくすると、ようやく♀も身動きするようになり、自発的に飛び立ちました。(@1:37〜) 
低空で羽ばたき、前方に飛び去りました。 

キタテハ♀の交尾拒否行動を観察できたのはこれが2回目です。
関連記事(9年前の撮影:6月下旬)▶ キタテハの交尾拒否 
どうやら♀が翅を固く閉じたままなので、♂は腹端の交尾器を連結できないでいるようです。 (交尾に成功すれば互いに逆向きに連結するはずです。) 
これがキタテハ♀の交尾拒否行動なのでしょう。 
やがて諦めた♂は飛び去りました。 

堤防路の少し離れた地点でも同様のシーンが繰り広げられていました。(@1:48〜) 
地上に2頭のキタテハ♀♂が並んで止まっています。 
さっきと同一の♀♂ペアなのか別個体なのか不明です。 
枯れ葉の上で翅を閉じていると、翅裏は枯葉のように地味なため、見事な保護色で見つけにくくなっています。 

今回も♀♂ペアは共に翅をしっかり閉じています。 
高画質のFHD動画で交尾拒否行動を記録しました。
♀の閉じた翅裏に対して♂が正対してアプローチするのがキタテハ♂の求愛の流儀なのでしょう。 
体の向きは互いに直交しています。 
♂は頭部や触角を♀の翅裏にぐいぐい押し付けながら、♀の背後に回り込んでマウントしようと試みます。 
しかし♀が翅を閉じたままなので、腹端がしっかり隠されていて交尾器を結合できません。 
この間に♂が翅を少し開閉しました。 
これが求愛の儀式的な行動なのかどうか、定かではありません。 
♀の背後で♂が翅を広げて美しい翅表を見せつけたところで、♀には見えない気がします。 
♀の閉じた翅を♂が手足を使ってこじ開けることは出来ず、♂は交尾を諦めて飛び去りました。 
♀に交尾拒否された♂が飛び去る様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:06〜) 

キタテハの翅裏は地味なので、地上で翅を閉じたままだと周囲の枯葉や落葉に完全に紛れています(隠蔽擬態、保護色)。 
翅の外縁の不規則なギザギザ(鋸歯)も隠蔽効果を高めています。 
地上で翅を閉じたまま静止している同種♀を♂はどうやって探し出すのでしょうか? 
今回のケースでは♂の求愛を拒否したので、地上の♀が性フェロモンを放出して♂を誘引しているとは思えません。 
(♂を誘引した上で、求愛しに来た♂を♀が品定めしている可能性は残ります。)
可視光しか見えないヒトとは違って昆虫の視覚は紫外線のスペクトルでも見えているので、もしかすると紫外線の下では♀の姿がよく目立つのかもしれません。 
紫外線カメラでキタテハを撮影し、確かめてみたいものです。 


採集したキタテハ♀の標本(死骸)を野外に放置したら、♂が求愛に来て交尾を試みるのかどうか、実験してみるのも面白そうです。 
♂の標本に対してはどんな反応をするでしょうか? 
同性に誤認求愛するでしょうか?
もしも近縁種シータテハ♀の標本を使うと、キタテハ♂はしっかり異種だと見分けられるでしょうか?
異種に誤認求愛するかな?
(ヒトが翅裏を見ただけでシータテハとキタテハを見分けるのは、蝶に詳しいマニアでなければ難易度が高いです。)

地上で休んでいるキタテハ♀を♂が目敏く見つけて横に舞い降りたとは限りません。
♂の縄張り内に飛来した♀を追尾して乱舞になり、一緒に着陸したのではないかと思います。 
この過程はあまりにも動きが激し過ぎて、しっかり観察・撮影できていません。(見失いがち)

交尾済みの♀にとって、♂のしつこい求愛(セクハラ)は煩わしいだけです。 
キタテハでは交尾拒否の決定権が♀にあり、♂が♀の意志に反してむりやり交尾することは物理的に不可能です。 
交尾拒否された♂はあっさりと紳士的に諦め、次の♀を探しに行きます。 
キタテハで求愛が成就して交尾に至る例を私は未だ一度も観察できていません。 
♀が翅を開いて♂を受け入れれば互いに逆向きで連結するはずですが、そもそも交尾中のキタテハ♀♂も未見です。
かなり古い本ですけど、保育社『原色日本昆虫生態図鑑IIIチョウ編』(1972)を紐解いてキタテハの配偶行動について調べると、
秋型の交尾は一般に越冬後に行なわれるが、9月に交尾した記録もある。(p228より引用)

独りになった♀はようやく翅を開くようになりました。(@3:01〜) 
後翅外縁部の損傷が激しい個体で、越冬の厳しさを物語っています。 
最初に観察した♀とは別個体であることが判明しました。 
日光浴で体温を上げると、自発的に飛び立ちました。(@3:28〜) 
そのまま低空で飛び続け、オオイヌノフグリの花が咲き乱れる土手を下りて行きました。 


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