触診で体内寄生されていない健常個体と判定された2頭のアカタテハ(Vanessa indica)垂蛹b,cを卓上に置いていると、誰も触れていないのにときどきブルブルッと自発的に暴れだすことに気づきました。
タイミングが予測不能で突発的なので、ハンディカムで長撮り監視してみました。
屋外で工事している騒音・振動に反応しているのか?と思ったりしたのですが、深夜の静かな時間帯(草木も眠る丑三つ時)でも変わらずに突発的な蠕動を繰り返していました。
「蛹は全く動かないもの」という先入観があるヒトが見れば、まるで怪奇現象です。
ブルブルッと自発的に震えてから、しばらく左右にブラブラと揺れています。
睡眠中のヒトがたまにビクッと急に動くジャーキング現象みたいなものなのかな?
変態期間中に何度も繰り返すと体力を無駄に消耗するのではないかと心配になります。
白色LED照明を点けると眩しくて警戒するかと思いきや、照明の有無は無関係で蠕動していました。
もしかすると私も気づかないぐらい微小なアリやダニなどがアカタテハ垂蛹の上を這い回っていて、それを振り落とそうと暴れていたのかもしれません。
暴れているのはいつも特定の個体(右)だけ、というのも不思議です。
おとなしくしている左の個体は表面が黒ずんでいて、変態の進行が早いようです。 (翌日に羽化しました)
羽化が近づくと運動性が消失(低下)するのかもしれません。
隣の個体の振動が伝わって蠕動が連鎖するということもありませんでした。
つづく→#11:アカタテハの羽化b【10倍速映像】
【追記】
大谷剛『昆虫―大きくなれない擬態者たち』によると、
蛹は基本的に動けないが、ピクリとも動かないのは羽化がごく近いときだけで、たいていはピクピクと腹部を動かす。動かないと思ったものが、ちょっとだけ動くと、ギクッとするものだ。蛹はその効果を狙う。「蛹」という漢字の「つくり」のほうは、ピクピクとかヒラヒラとか動くさまを表す。(p58より引用)
最後の一文が初耳で面白く思ったのですが、『Super日本語大辞典』の漢和辞典で「蛹」の解字を調べると、違うことが書いてありました。
諸説あり、ということなのでしょうか?
会意兼形声。「虫+音符甬(ヨウ)(=通。上下つつぬけ、筒型をなす)」。筒の形のまゆや、からの中にこもっており、筒型の外形をした虫。