2018/09/06

ハンノキ樹上でトビとハシボソガラスの神経戦(野鳥)



2018年3月下旬


▼前回の記事
縄張り意識の強い早春のハシボソガラスに怒られた(野鳥)

防風林に囲まれた農地(残雪に覆われた田畑)の上空を帆翔していたトビMilvus migrans)がハンノキの大木に止まりました。
落葉した枝には実がなっています。
この辺りを縄張りとするハシボソガラスCorvus corone)が1羽、先程からハンノキの樹上に止まっていて、トビはその下の枝に陣取りました。

先客のハシボソガラスは天敵のトビを見下ろしながら嘴を足元の枝に激しく擦り付けています。
これは欲求不満の現れ(転移行動)なのでしょうか?
やがてカラスは飛び上がって少し上の枝に移動しました。(@0:45)
トビから離れるようにハンノキの梢で上へ上へと移動します。

しばらくすると、樹上のハシボソガラスがお辞儀しながら鳴き始めました。(@2:35)
下の農地で採食しているつがいのパートナーに呼びかけているのかもしれません。
しかし私が撮影している横の用水路を雪解け水が流れていて、その水音のせいで遠くのカラスの鳴き声がほとんど聞き取れません。
やがて意を決したように、ハンノキ樹上のカラスが枝を下へ下へと少しずつ飛び降り始めました。(@3:24)
ようやく勇気を出して、恐る恐るトビに心理的圧力をかけているように見えました。
カラスが尾羽根を扇のようにパッパっと開閉しているのは、緊張の現れでしょうか。

素人考えでは喧嘩の際に上に位置した方が精神的にも優位に立てるはずなのに、トビは頭上のカラスには全く構わず、辺りの農地を悠然と見回しています。
トビの尾羽根には特徴的な三角の切れ込みがあります。

なぜこのハシボソガラスはもっとしっかりモビング(擬攻撃)して天敵の猛禽類を縄張りから追い払わないのでしょうか?
未だ経験の浅い若鳥で、トビに立ち向かって行く自信や勇気が無いのかな?
繁殖期が始まったばかりの早春は、縄張り意識が希薄なのでしょうか?
意気地なしの♂は♀にもてないだろう、と余計な心配をしてしまいます。
もう少し季節が進んだ4月下旬には、カラスが鳴き騒いで近隣の仲間を呼び寄せ、樹上のトビを共同で追い払う激しいモビング行動を見ています。

▼関連記事
樹上のトビを激しく襲うカラス混群【HD動画&ハイスピード動画】(野鳥)


急に樹上のハシボソガラスが枝から飛び降りて急降下し、姿を見失ってしまいました。(@6:37)
雪解けして土が露出した畑で何か植物質の餌を見つけて食べているのはつがいの別個体だと思います。

うるさいカラスが居なくなっても、トビは相変わらずハンノキ樹上で休んでいました。
今回のモビングは中途半端で消極的な心理戦・神経戦で終わり、トビの貫禄勝ちといった印象です。
通年観察していると、トビもこの辺りを縄張りとしているようで(防風林のどこかに営巣?)、顔馴染みのカラスとの攻防戦を日々繰り返していました。
今回そもそも、ハシボソガラスが止まっているハンノキにトビがわざわざ飛来したのも、カラスに心理的な圧力を掛けて存在感を示し、追い払おうとしていたのかもしれません。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→ハンノキ樹上から飛び立つトビ(野鳥)


トビ(野鳥)vsハシボソガラス@ハンノキ樹上+心理戦

2018/09/05

クモの円網に捕まって暴れるコミスジにトンボエダシャク(蛾)が誤認求愛



2018年7月上旬・午後15:48〜16:18

平地の用水路沿いにスギ林があり、その林縁にクモの大きな正常円網が張られていました。
垂直円網の辺縁部(上部)に1頭のコミスジNeptis sappho)が囚われていて、擬死(死んだふり)していました。
下手に暴れると振動でクモにすぐ感づかれてしまい、捕食されるからです。
ときどき意を決したように必死で羽ばたいて暴れても、強力な粘着性の横糸が外れません。
(コミスジが休んでいる状態の映像は退屈なので、編集でカットしました)
おそらくオニグモの仲間(コガネグモ科)が造網したと思われますが、なぜか網の主は獲物を捕食しに現れず放置しています。

  • 昼間は網の外の隠れ家に潜んでいるのかな?
  • 脱皮直前の眠で食欲がない?
  • 天敵の捕食者にやられた?

コミスジは翅を全開にした姿勢で囚われの身となっています。
チョウの翅一面に敷き詰められている鱗粉は剥がれやすく、クモの網にかかっても逃げやすいように進化しています。(※追記2参照)
しかしチョウの胴体や足にクモの網の粘着糸が付着してしまうと、万事休すです。

その一方、周囲のスギ林の林縁やマント群落をトンボエダシャクCystidia stratonice stratonice)と思しき蛾が何頭も飛び回っています。
群飛と呼べるかどうか分かりませんが、何をしているのか気になります(映像公開予定)。

クモの網にかかったコミスジを撮っていると、そうした蛾がときどき飛来します。
残念ながら窮地のコミスジを助けに来たのではありません。
クモの網に捕らえられたコミスジに軽くぶつかっただけで、あっさり飛び去ります。
おそらく翅の色が白黒の模様で似ていることから、交尾相手と誤認して求愛しに来たのでしょう。
しかしすぐに別種と気づいて飛び去りました。
飛来した蛾がコミスジに誤認求愛したシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみます。(@1:59〜2:42)
蛾に誤認求愛されたコミスジは必死に羽ばたいて暴れます。
その羽ばたきを見た蛾は更に興奮したように周囲を飛び回るものの、やがて離れて行きました。

我々ヒトの目から見るとコミスジとトンボエダシャクは、確かに翅の模様が白黒という点は共通ですけど、それほど模様が似ているとは思えません。
ひょっとすると、性フェロモンの分子構造が似ているのかもしれません。
もしトンボエダシャク♀を生け捕りにしてクモの網に付けてやると、辺りを飛び回る同種♂が誘引されて次々と死の罠にかかってしまうかな?(ゴキブリ・ホイホイならぬ、トンボエダシャク・ホイホイ)
色々な鱗翅目(蝶や蛾)の死んだ標本あるいは翅だけをクモの網に付けておいたら、トンボエダシャクの誘引効果はどうなるでしょう?
適当な白黒模様の紙片を網に付けておくだけで誘引効果があるでしょうか?
試しに実験してみたかったのですが、残念ながらこの日の私は捕虫網を持ってきていませんでした。

ところで、網に囚われたコミスジの周りをずっと飛び回っている小さな双翅目も気になります。
クモの網にかかった獲物や食べ残しに集まる吸血性のブヨなのかな?
クモの網の粘着糸に着陸しても飛び立てるようです。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



つづく→スギの林縁を飛び回るトンボエダシャクの謎(蛾)


【追記】
蝶と蛾の性別を見分けられないのに誤認求愛だろうと解釈してしまいましたが、縄張り意識の強いトンボエダシャクがコミスジを追い払いに来た、という別の解釈も成り立つかもしれません。
しかし、トンボエダシャクはクモの網にかかったコミスジに対して軽くぶつかっただけですぐに飛び去ってしまうので、闘争行動ではなさそうに思います。


【追記2】
大谷剛『昆虫―大きくなれない擬態者たち』p67によると、
「鱗粉は外敵に捕まったときに、逃げるのに非常に有効」とある。翅をくわえられたら、鱗粉を残してスルリと逃げる。そしてこれは「クモの巣に対しても有効」とも書いてある。
(中略)古い個体になると、鱗粉も少なくなってクモに捕らえられてしまうのだった。これは「大福餅の粉」ではないか。大福餅には手にべたつかないように片栗粉がまぶしてある。べたつくところに粉をつければ、べたつかなくなる。(p98〜99より引用)
鱗粉が「大福餅の粉」という例えはとても秀逸で、私もこれから使わせてもらいます。

コミスジ@オニグモsp(蜘蛛)正常円網:捕囚
コミスジ@オニグモsp(蜘蛛)正常円網:捕囚
コミスジ@オニグモsp(蜘蛛)正常円網:捕囚
コミスジ:翅裏@オニグモsp(蜘蛛)正常円網:捕囚
コミスジ@オニグモsp(蜘蛛)正常円網:捕囚・全景
コミスジ@オニグモsp(蜘蛛)正常円網:捕囚・全景
コミスジ@オニグモsp(蜘蛛)正常円網:捕囚・全景


縄張り意識の強い早春のハシボソガラスに怒られた(野鳥)



2018年3月下旬

季節を戻して早春の観察記録です。
未だ残雪に覆われた広大な畑で採食していたハシボソガラスCorvus corone)のつがいのうち、一羽が飛び上がって近くの落葉樹(クルミ? クリ?)に止まりました。
(映像はここから。)



【追記】:秋に現場を再訪し、樹種はオニグルミと判明しました。

カラスはオニグルミの枝から樹冠へ飛び上がって移動しました。
止まり木で尾羽根を何度もパッパッと開閉しているのは何を意味するボディランゲージなのでしょう?(誇示行動?)
私の方を向いてお辞儀しながらガーガー♪鳴き騒ぎました。
やがて飛び立つと私の頭上を旋回します。
空中から私に糞を落としてくるのではないかと用心しながら撮り続けると、ハシボソガラスは近くに立つハンノキ高木の枝に止まり直しました。
再び飛び降りると、縄張りを旋回飛翔しながら鳴き♪、初めに居たクルミの樹冠に戻りました。
私に対するモビング(擬攻撃)行動なのかな?
そろそろ繁殖期が始まる頃ですから、縄張りを守っているのでしょう。
近くに巣を作ろうとしているのかもしれません。
カラスがもっと怒ると木の枝を折って威嚇するのですが、今回そこまではしませんでした。

▼関連記事
木の枝を折って威嚇するハシブトガラス【野鳥】

私がカメラを左にパンすると、猛禽類のトビMilvus migrans)が農耕地(田畑)の上空を帆翔していました。
羽ばたきと滑翔を交互に繰り返しています。
私に対して示威飛行するぐらいなら、なぜハシボソガラスは天敵のトビを迎撃・モビングして縄張りから追い払わないのか、不思議でなりません。
未だ経験の浅い若鳥でトビに立ち向かって行く自信や勇気が無いのかな?と想像したりしました。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
この処理の副作用で、青空を背景にトビが帆翔するシーンの一部が勝手に暗転されてしまいました。

いつの間にかハシボソガラスはクルミの梢から農地の奥にそびえ立つハンノキ喬木まで飛んで行き、枝に止まりました。

つづく→ハンノキ樹上でトビとハシボソガラスの神経戦(野鳥)


ハシボソガラス(野鳥)@ハンノキ樹上

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