2018/09/08

スギの林縁を飛び回るトンボエダシャクの謎(蛾)



2018年7月上旬・午後16:16
▼関連記事
クモの円網に捕まって暴れるコミスジにトンボエダシャク(蛾)が誤認求愛

トンボエダシャクCystidia stratonice stratonice)と思しき蛾がスギの林縁を飛び回っていました。
群飛と呼べるかどうか分かりませんが、遠目から見ると同種らしき白黒模様をした翅を持つ蛾が何頭も林縁を飛び回っていて、羽ばたきがチラチラとよく目立ちます。

飛んでいる1頭に注目して動画に撮ると、杉の葉に止まったときに腹端を曲げて擦り付けたように見えました。
それも一瞬で、すぐに忙しなく飛び去ってしまいます。
これは♀による産卵行動なのでしょうか?
Cystidia属の蛾の幼虫の食草を「みんなで作る日本産蛾類図鑑」サイトのデータベースで調べて抜き書きすると

トンボエダシャクは、ニシキギ科:ツルウメモドキ。
ヒロオビトンボエダシャクは、ニシキギ科:ツルウメモドキ、マユミ。
ウメエダシャクは、バラ科:ウメ、モモ、サクラ、エゴノキ科:エゴノキ、スイカズラ科:スイカズラ、ニシキギ科:ニシキギ、ツルウメモドキ、カバノキ科:カバノキ、ブナ科:ブナ。
とありました。
したがって、動画の個体がたとえ♀だとしても、スギの葉に産卵するはずがありません。

別個体だと思いますが、スギ林に絡みついたクズの葉で休んでいた蛾の写真を撮るとトンボエダシャク♀(Cystidia stratonice stratonice)でした。
腹端にヘアペンシルと呼ばれる毛束が無いので♀と判明。

トンボエダシャク♀(蛾)@スギ林縁:クズ葉。腹端にヘアペンシルが無いので♀

これ以外の飛んでいる個体や、クモの網にかかったコミスジにちょっかいをかけている(誤認求愛?)個体の性別はしっかり見分けられませんでした。
トンボエダシャク♀が産卵するためにホストの蔓植物:ツルウメモドキを探し求めて飛んでいるのでしょうか?
幼虫にとって適切な食草かどうか、産卵姿勢になってみて腹端の感覚毛で植物に触れて判断する、というのはあり得る話です。
しかしスギとツルウメモドキは葉の形状も匂いもまるで違いますから、蛾の大雑把な視覚・嗅覚でも見分けられそうな気がします。
あるいはもし群飛しているのが♂だとすると、♀を誘引する性フェロモンを林縁の植物に擦り付けているのかもしれません。
各個体の飛び方を見ていると、林縁のある区画を往復しているようだったので、テリトリーがありそうです。
今回の映像は、クモの網にかかったコミスジを撮影する合間に(ついでに)ちょろちょろっと撮っただけなので、未だ観察が不十分です。

たまたま今回はスギ林で撮りましたが、群飛の舞台となる樹種には特にこだわりが無いようです。
この時期はスギ林に限らず、様々な灌木林でも群飛していました。(映像公開予定:別日にクリの木の周囲を群飛)
謎解きのためには、更にじっくり観察する必要がありそうです。
とりあえず、交尾中の♀♂ペアや産卵中の♀を見つけるのが次の目標です。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


【追記】
日本大百科全書(ニッポニカ)で「トンボエダシャク」を参照すると、

とんぼえだしゃく / 蜻蛉枝尺蛾
[学]Cystidia stratonice
昆虫綱鱗翅(りんし)目シャクガ科に属するガ。はねの開張50~60ミリ。はねも腹部も細長い。腹部は橙(だいだい)色の地に、各節に黒紋を規則正しく連ねる。はねは黒く、白色の帯が1本あり、基部は白い。触角は棍棒(こんぼう)状に近いが、雌では細い。北海道から屋久(やく)島までと、対馬(つしま)、朝鮮半島、シベリア南東部から中国に分布する。成虫は年1回、初夏に発生し、昼間、食樹の近くを飛び回る。

しかしながら、触角の性差に関する下線部の記述は不正確なようです。
いつもお世話になっているDigital Moths of Japanサイトでトンボエダシャクを参照すると、以下の記述が♂♀標本の写真に添えられていました。
この属では, 触角は♂♀とも単純で先端部が太まる. 
トンボエダシャク?(蛾)@スギ林縁+飛翔+産卵?
トンボエダシャク?(蛾)@灌木林縁:用水路沿い+飛翔

0 件のコメント:

コメントを投稿

ランダムに記事を読む