2012/05/23

繭から出したイラガ前蛹(蛾)の激しい徘徊運動【微速度撮影】




サイカチの木の棘だらけの枝先にイラガMonema flavescens)の繭があちこち作られているのを見つけました。
春になってから(4月)、害虫駆除と称して繭を大量に採集してきました。
手の届く範囲だけでも15個と豊作です。
成虫の羽化を観察するのと被寄生率を調べるのが目的です。






2本のサイカチ枝が交叉した部分という風変わりな場所に作られた繭を採集する際に、枝を無理に引き剥がそうとしたら硬い繭が割れてしまいました。



背面


側面


腹面




中身は意外にも未だイモムシ様の前蛹でした。
『イモムシ・ハンドブック』p54によると、イラガは前蛹で越冬するらしい。
なーるほど。




冬にアカゲラが嘴でイラガの繭を砕いて捕食するのを観察したことがあります。

繭から引きずり出して食べていたのはイラガの蛹ではなく前蛹ということになります。


閑話休題。
幸い体が傷ついていないようなので、前蛹を割れた繭から取り出して清潔なプラスチック容器に移してみました。
蛹化および変態の様子を観察できる絶好の機会です。
果たして剥き出し(裸)の状態でうまく育ってくれるでしょうか?



2012年5月上旬・室温24℃


それまで大人しかった前蛹がある日、容器内で激しく蠕動を始めました。
内径30mmの丸い容器内を壁に沿って前進しています。
遂には脱走しそうな勢いで壁を登り始めました。
越冬明けの前蛹にこれ程の運動性が保たれているとは知りませんでした。

特に遮光していないので、暗い所を探しているのだろうか。
剥き出しの状態では心細く、まさか繭を作り直すのかな?
もし食草を与えたら摂食するだろうか?

5秒間隔で93分間インターバル撮影した写真を元に早回し映像を製作。
蛹化の前兆かと内心では期待したものの、結局、前蛹は疲れ果てたように静止しました。
この意味不明の散歩は、単に休眠状態から目覚めただけなのかもしれません。

ひょっとして自然界でも狭くて暗い繭の中で前蛹がぐるぐると激しく寝返りを打っているのかもしれない…と想像すると楽しいですね。
レントゲンか何かでイラガ繭の中を透視できたら面白そうです。


イラガの蛹化【後日談】
明らかに居心地の悪い不自然な状況なので、蛹化前に激しい運動で消耗しないか心配でした。
そのまま前蛹の飼育を続けたところ(ただ放置するだけ)、20日後に最終脱皮を行い無事に蛹になりました(@5月下旬)。














成虫の羽化が楽しみです。
イラガの成虫出現期は6~9月とのこと。


つづく→「イラガ(蛾)の蛹が尻尾を回す運動


【追記】
余談ですが、サイカチの棘について面白い豆知識を知りました。
植物は、さまざまに工夫をして、トゲを作っている。たとえば、バラやタラノキ、サンショウなどは表皮を変化させて、トゲを作っている。サイカチのトゲは、枝を針状にしたものである。  (稲垣栄洋 『たたかう植物: 仁義なき生存戦略 』(ちくま新書) p142より引用)


2012/05/22

雪面を走るクロモンサシガメ終齢幼虫



2012年4月下旬

林道上に残った雪の上を黒光りする見慣れない虫が元気に徘徊していました。
サシガメの仲間で、翅芽が未だ短いことから幼虫のようです。
前脚の腿節が太い気がします。
おそらく越冬明けの幼虫と思われます。

和名をご存知の方は教えてください。

カメムシBBSにて問い合わせたところ、クロモンサシガメPeirates turpis)の終齢幼虫(5齢)だろうとご教示頂きました。

翅が未だ短い


採寸

側面
腹面

【追記】
『カメムシ:おもしろ生態と上手なつきあい方』p30によると、
普通に見られるクロモンサシガメは、翅の長さは個体によってさまざまで、ほとんどが短翅型でまれに長翅型が見られる。





2012/05/21

モズ♂の鳴き声と羽繕い【野鳥】



2012年4月下旬

鳴いているモズ♂(Lanius bucephalus)を撮れたのは初めて。
見晴らしの良い木の天辺に止まり、長い尾羽を常に上下させています。※
ときどき鳴いたり羽繕いしたりしていました。
辺りを飛び回っている虫を捕食するかなと期待したものの、モズは興味を示しませんでした。

モズは他の鳥の鳴き真似をするらしい。(「百舌」の語源)
いつか鳴き声の声紋解析で実際にどれだけ似ているのか調べてみたいものです。
その前にまずはバードウォッチングやバードリスニングの経験値を上げないといけませんね。

※【追記】
木の枝などにとまっているときは、胸をはって、長い尾ばねをたえず左右にふる癖があります。(『科学のアルバム:モズのくらし』p42より)

尾羽をぐるぐる回すように振るのがモズの特徴。(『スズメの少子化、カラスのいじめ:身近な鳥の不思議な世界』p173により)

『雪国動物記』p120-に「モズのテリトリー」を秋に調べた結果の章あり。








ランダムに記事を読む