2009年12月上旬
クサグモ(Agelena silvatica)幼体の飼育容器に小さなハエ(種名不詳)を投入してみました。
出嚢して以来、初めて与える生き餌です。
もう冬なので雪国では餌となる虫を見つけてやるのも一苦労です。
容器内に不規則に張り巡らせた棚網の糸に粘着性は無いものの、ハエは網に足を取られて歩きにくそうです。
やがて腹を空かせたクサグモ幼体が何匹も集まってきました。
ハエの方が大きいので警戒してしばらくは遠巻きに様子を眺めています。
飛ぶ元気もないようですが身の危険を感じたのかハエが暴れて網を壊しながら容器の下に落ちると、一斉にクサグモ幼体が食いつきました。
ハエはあっという間に体液を吸い尽くされてしまいました。
後半は獲物の横でクサグモ幼体同士の小競り合いも見られました。
クモが集団で捕食するシーンを初めて目撃して興奮しました。
なかなか凄い迫力です。
日本にはいない珍しい社会性クモの狩りの話を彷彿とさせ、興味深く思いました。
ただし、狭い容器に閉じ込めたままクサグモ幼体を高密度で同居させているので、かなり不自然な状況である可能性が高いでしょう。
自然界では出嚢した幼体はすぐ分散して各自が単独生活を送るものと思われます。
共食いさえ防ぐことが出来れば、集団で飼育すると棚網が出来上がるのも早く、好都合かもしれません。
(つづく)
【追記】
『クモのはなしII:糸と織りなす不思議な世界への旅』p186-187によると(第24章 社会生活をするクモ)、
アゲレナ・コンソシアタ ――この社会性のクサグモ(タナグモ科)は西アフリカのガボン共和国に棲んでいて、一次林のやぶに直径三メートルにも及ぶ巨大な棚網をつくります。この網の中には最大1000匹をこえるクモが共同生活をしていて、網づくりも餌とりも共同でなされます。そうすることで彼らは単独では捕獲できないような大きな餌をとれるのです。
2009年12月上旬
出嚢してから飼育容器内で張り巡らした棚網上でクサグモ(Agelena silvatica)幼体が次々に脱皮していました。
小さな抜け殻が網のあちこちにぶら下がっています。
孵化してから何も食べていないはずなのに、2齢から3齢幼体になったのだろうか。
脱皮直後で抜け殻の傍らでクチクラが固まるまで休んでいる個体にもう一匹の幼体が接近したので、共食いが始まるのかと緊張しました。
触肢で触れてはいるものの、噛みついてはいないようです。
衣替えしたばかりの無防備な個体は身の危険を感じたのか殆んど動きません(擬死?)。
どうやらただのニアミスだったようです。
出嚢後のクサグモ幼体はいわゆる団居の形成を行いませんでした。
一般にクモの幼体は3齢になると分散します。
3齢でようやく毒腺が発達し、自力で虫が倒せるようになるのだそうです。
(つづく)
2009年11月下旬
杉の枝から採集したクサグモ(Agelena silvatica)の卵嚢を室内の飼育容器に入れて放置していたら、15日後に数匹の幼体が出嚢しました。
卵嚢内で一回目の脱皮を済ませた二齢の幼体と思われます。
歩きながら卵嚢の周囲に糸を引き回しています。
少し散歩するとすぐに仲間の居る卵嚢に戻りました。
卵嚢と一緒に採集した母クモの死骸はカビが生えていて残念ながら同定出来ませんでした。
しかし出嚢した幼体の色(頭胸部が赤くて腹部が黒い)から近縁種の中でもクサグモであることが判明しました(コクサグモ、イナヅマクサグモとは違う)。
室温で飼育していること(明暗条件もコントロールしていない)、採集直後に観察のため卵嚢の外側を鋏で切り裂いていることなどから、当地における野外での正常な出嚢時期(おそらく早春?)とはかなりずれていると思われます。
季節外れに早く出てきてしまったものは仕方が無いので、出来る限り飼育を続けてみます。
(つづく)
【追記】
『クモのはなしI:小さな狩人たちの進化のなぞを探る』第20話 加藤輝代子「冬の眠り」p177によると、
(東京付近で調べた)クサグモの冬ごしは、日長で支配される「休眠」でした。10月から12月にかけて、日の長さがだんだん短くなってくると、卵嚢の中の子グモはこれを感じて眠りにつき、たとえ気温が高くても外へ出てきません。そしてある期間低温(冬)の時期を経過すると休眠は消去され、気温さえ高くなればいつでも出嚢できる準備がととのいます。この休眠が消去される時期は、冬至のころと推定されますが、実際に出嚢するのは3月下旬ごろからです。