A1: ハラブトハナアブ属(Mallota)の越冬態については、日本語文献では情報が少ないのですが、現在得られる情報を見る限り、少なくとも日本産のタカサゴハラブトハナアブ(Mallota takasagoensis)は成虫越冬とされています。 (Insect)
ただし、属全体としては少し注意が必要です。
Mallota属全体の生活史
Mallota属の幼虫は、樹洞(うろ)や腐朽木の水たまりに生息する、いわゆる「ラットテイルマゴット(尾呼吸管をもつ幼虫)」です。(ウィキペディア)
ヨーロッパや北米の種については、
幼虫は樹洞の腐植質や微生物を食べる
成虫の出現期間は短い
多くの種は春から初夏に見られる
ことが知られています。(ウィキペディア)
一方で、Mallota属全体について「成虫越冬が一般的」と明記した信頼できる総説は見つかりませんでした。
成虫越冬の可能性
日本の昆虫図鑑ではタカサゴハラブトハナアブについて
冬は成虫で過ごす
と記載されています。(Insect)
また、ヨーロッパ産の近縁種では春のかなり早い時期(4月頃)から成虫記録があり、成虫越冬を示唆する場合があります。(ResearchGate)
ハナアブ科全体で見ると、成虫越冬する種は珍しくありません。たとえばホソヒラタアブ類やナミホシヒラタアブ類では、受精雌成虫が物陰で越冬します。(RHS)
結論
現時点で言えるのは、
日本産のタカサゴハラブトハナアブは成虫越冬とされる。 (Insect)
Mallota属全種が成虫越冬とは断定できない。
ただし、少なくとも一部のMallotaでは成虫越冬が行われている可能性が高い。
ということです。
もしお調べの対象が日本産のハラブトハナアブ類(タカサゴハラブトハナアブ、アシブトハナアブ類など)であれば、学術論文や『日本産ハラブトハナアブ属の再検討(Hirooka & Maruyama, 2015)』などをさらに追って、種ごとの越冬態を調べることもできます。現状では「属としては不明だが、日本で普通に見られるタカサゴハラブトハナアブは成虫越冬」というのが最も確実な答えです。
Q2: 5月中旬に低山で観察したハラブトハナアブ属の成虫は、翅先が擦り切れていました。羽化直後にしては翅の損傷が激しいので、越冬明けの個体だろうと推測したのです。
A2: その推測は十分に合理的だと思います。
ハナアブ類では、羽化直後の個体は通常、
翅縁が滑らかで欠損がない
翅膜にしわや摩耗がない
体毛がよく残っている
という状態です。
一方、成虫越冬した個体では、
翅先や翅縁の欠損
翅膜の擦れ
胸部や腹部の毛の脱落
体色の退色
などがしばしば見られます。
5月中旬という時期も興味深い点です。もしその種が春に羽化するのであれば、新成虫が出始めていてもおかしくありません。しかし、「翅先が明らかに擦り切れている」という観察事実は、単なる春羽化個体よりも、前年から生存している成虫を示唆します。
特にMallota属は一般的なヒラタアブ類のように何世代も繰り返すタイプではなく、幼虫期間が長く、樹洞環境に依存する種が多いため、春先に見られる個体が越冬成虫である可能性は十分考えられます。
もちろん、翅の損傷だけでは確定できません。例えば、
羽化後しばらく活動した個体
鳥やクモの攻撃を受けて逃れた個体
樹枝や下草との接触が多かった個体
でも翅は傷みます。
ただし、
「5月中旬」
+
「翅先の摩耗が顕著」
+
「Mallota属の一部で成虫越冬が知られている」という3点を合わせると、その個体が越冬明けの成虫だったという仮説はかなり説得力があります。
もし記録写真が残っていて、胸部や腹部の毛並みも確認できるなら、毛の摩耗状態も重要な手掛かりになります。ハラブトハナアブ類は本来かなり毛深いので、越冬個体では「全体にくたびれた印象」になることが少なくありません。翅だけでなく体毛まで摩耗していれば、越冬成虫説はさらに強まるでしょう。
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