2025/10/22

岩塩を見つけたツキノワグマの塩対応【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年8月上旬 

シーン1:8/1・午後15:01・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
里山でスギと雑木の混交林にあるニホンカモシカの溜め糞場sr2をまたトレイルカメラで見張ることにしました。 
画面の左から右に向かって斜面が緩やかに登っています。 
手前から奥にも獣道が通っています。 

カモシカの登場頻度が低いので、欲張って新たな撮影テーマを盛り込むことにしました。 
塩を置いてやり、野生動物が舐めに来る塩場を作れないかと考えたのです。 
暑い夏は特に塩分を欲しているはずです。(※追記参照) 
濃い塩水をバケツに入れて置くとか、方法は色々あるらしいのですが、私は一番安価なプレート状のヒマラヤ岩塩を買って、ミズナラの幹にベルトでくくりつけてみました。 
サイズは155×100×厚さ25mmで、重さは870g。
自然光下ではピンク色に見えます。 
ドリルで穴を開けて紐を通したかったのですが、素人がやると岩塩プレートが割れてしまいそうで、そのまま使うことにします。

野生動物が岩塩にどんな反応を示すのか、楽しみです。 
特に草食動物のカモシカが溜め糞場に来たついでに塩を舐めてくれるのではないかと期待しています。 
塩にカロリーはありませんから、野生動物への給餌がもたらす諸問題は起こりにくいはずです。 
塩への強い依存症が出るのであれば、それはそれで興味深い現象です。 


シーン2:8/4・午後19:00頃(@0:03〜) 
獣道を左から登場したツキノワグマUrsus thibetanus)が立ち止まって、林床の匂いを嗅いでいます。 
ふと顔を上げると、目の前のミズナラ幹に固定した岩塩プレートに気づいて匂いを嗅ぎました。 
ツキノワグマが見上げた際に、胸の三日月紋がちらっと見えました。 今回は残念ながら岩塩を舐めてくれなかったようです。 手前にゆっくりノシノシと歩き去りました。 クマは図体に比べて目が小さいですね。 1.5倍に拡大した上でリプレイ(@1:02〜)。 


【考察】 
今回のツキノワグマは塩対応でした。 
現場は暗闇で、初見の異物ですし、美味しそうな匂いもしないので、味見しないことには塩だと気づかないでしょう。 
岩塩プレートに予め蜂蜜を塗れば、匂いに誘引されて味見してくれるかな? 

岩塩プレートの位置と比べて、クマの体高を推定できるかもしれません。 


※【追記】
我々ヒトと違って野生動物の多くは汗腺が発達していないので、夏も汗をあまりかかないそうです。
したがって、暑い夏だからといって塩分を特に欲しているとは言えません。

肉食動物は獲物の生肉や血液から塩分を補給できるそうです。
動物の血液の塩分濃度は約0.9%で、これは一般的なみそ汁の塩分濃度とほぼ同じです。

一方、草食動物はミネラルが不足しがちです。
植物食の性質上ナトリウム不足に陥りやすいため、自然に存在する塩場で土壌や岩壁などに含まれる塩分やミネラルを直接舐めて補給します。
この行動は生理的に非常に重要で、体内の電解質バランス維持や生理機能正常化、さらには植物に含まれる毒物の解毒にも寄与するとされます。
日本で塩場に集まる草食獣を具体的に挙げると、ニホンジカ(シカ科)、イノシシ(ブタ科)、カモシカなどが知られています。
塩場に草食動物が多く集まるようになると、それを狙って肉食動物も集まることが予想されますが、日本には上記の草食獣を狩れるほど大型の肉食獣がいません(ニホンオオカミは絶滅)。

アオバトなど一部の鳥類では、夏季に果実食中心になることで塩分(ナトリウム)が不足し、海水や鉱水を飲んで塩分補給する行動が知られています。

…という定説を頭に入れて塩場プロジェクトの真似事を始めたのですが、まったく予想外の結果になりました。
今後の展開をお楽しみに。

つづく→

0 件のコメント:

コメントを投稿

ランダムに記事を読む