2024年4月上旬
死んだニホンアナグマ(Meles anakuma)の旧営巣地(セット)をホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が乗っ取ったようなので、引き続きトレイルカメラで見張っています。
シーン1:4/1・午前11:27・晴れ・気温21℃(@0:00〜)
(交通事故が原因で?)麻痺した下半身を引きずって歩く「いざりタヌキ」がいつの間にか現れました。
どこから来たのか不明ですが、平地の二次林にある獣道から巣口Lに向かっているようです。
動きが緩慢過ぎて、トレイルカメラのセンサーが検知しにくいのかもしれません。
シーン2:4/1・午前11:54・晴れ・気温20℃(@1:00〜)
約26分後、いざりタヌキは巣口Lの窪みにすっぽりと丸まるように収まっていました。
動きが乏しいので、5倍速の早回し映像でお届けします。
ときどき周囲をキョロキョロ見回しているので、昼寝している訳ではありません。
シーン3:4/1・午後12:09・晴れ・気温19℃(@1:16〜)
シーン4:4/1・午後12:16・晴れ・気温20℃(@1:28〜)
強い春風が吹いているものの、よく晴れた昼下がりなので、日光浴しているようです。
シーン5:4/1・午後12:24・晴れ・気温23℃(@1:40〜)
もう一つの巣口Rの近くに1羽のハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)が来ていました。 何か細長いものを嘴で地面から摘み上げました。
しかし、どうも真剣な採食行動や巣材集めをしているようには見えません。
採食のふりをしているだけの偵察行動で、いざりタヌキが死ぬのを虎視眈々と待っているようです。
「いざりタヌキ」が日光浴をしている巣口Lにハシブトガラスは近寄りませんでした。
シーン6:4/1・午後12:26・晴れ・気温25℃(@2:40〜)
約1分後、ハシブトガラスは居なくなっていました。
林床に落ちた影を見ると(赤丸)、巣口Lを見下ろす樹上にカラスが止まって、「いざりタヌキ」の様子を見張ってました。
カラスが飛び去ると、その飛影が林床を横切ります。
「いざりタヌキ」は飢えているはずですが、視力は正常なようで周囲を警戒しています。
シーン6:4/1・午後12:26・晴れ・気温25℃(@3:07〜)
シーン7:4/1・午後12:35・晴れ・気温22℃(@3:24〜)
シーン8:4/1・午後12:52・晴れ・気温23℃(@3:36〜)
もはや出歩くことが出来ない「いざりタヌキ」は、巣口Lでひたすら日光浴しています。
シーン9:4/1・午後13:03・晴れ・気温21℃(@3:47〜)
いつの間にか巣口Lから「いざりタヌキ」の姿が忽然と消えていました。
麻痺した下半身を引きずりながら、最期の力を振り絞って手前に立ち去ったのか、それとも巣穴Lの中に入ったのか不明です。
おそらく後者ではないかと予想していますが、この後いざりタヌキが巣穴Lから外に出るシーンは撮れていません。
そして、これが「いざりタヌキ」の生きた姿が撮れた最後になりました。
(その後はまったくトレイルカメラに登場しなくなり、行方不明のままです。)
餌も水も取れなくなれば、死を待つ他ありません。
仲間の健常タヌキが「いざりタヌキ」をいたわって甲斐甲斐しく給餌するような感動的な利他行動は記録されていませんでした。
私も後日、この二次林でタヌキの死骸を探し歩いたのですが、見つかりませんでした。
カラスや仲間のタヌキに死骸を食べられたり持ち去られたのではないかと推測しました。
ところが数カ月後に、「いざりタヌキ」かもしれない腐乱死骸が巣穴Lから運び出され、驚愕することになります。(映像公開予定)
こういう「可哀想な野生動物の映像」を撮って公開すると、「傍観してないで、すぐに保護して動物病院に連れていけ!」と怒る人が必ず出てきます。
ライブカメラではないので、私は現場に設置した監視カメラをリアルタイムで見ている訳ではありません。
数日後に現場入りして、トレイルカメラで録画した動画を確認して初めて、ここで何が起きたかを知るのです。
つまり、どうしてもタイムラグが生じます。
現場周辺を探しても、死を待つ「いざりタヌキ」はどこに隠れているのか、その姿は見つかりませんでした。
「いざりタヌキ」がよく現れた場所にドッグフードや飲み水などを給餌するべきでしょうか?
一方で、野生動物の暮らし(生老病死)にヒトは一切介入するべきではない、というストイックな考え方もあります。
つづく→