2023年1月下旬・午後12:15〜12:45頃・晴れ
スノーシューを履いて雪深い里山を探索し、アニマルトラッキングするのが雪国の冬のささやかな楽しみです。
夏の山は藪で覆われるために決められた山道しか歩けませんが、積雪期の雪山は自由度が一気に増します。
また、野生動物が雪面に残した足跡を辿って体力が続く限り追いかけることができます。
今季の目標は、ニホンカモシカ(Capricornis crispus)の糞塊を見つけてトレイルカメラを設置し、本当に溜め糞場として同じ場所に通って排便しているのかどうか確かめることです。
よく晴れたせいで、この日の雪質は、やや重い湿雪でした。
私が息を切らせて斜面を登っていると、前方を雪煙を蹴立てながら右から左へ横切って走り去るカモシカを目撃。
残念ながら動画に撮り損ねてしまいました。
シーン1(@0:00〜)
早速、新鮮な蹄跡を辿ってカモシカを追跡開始。
スギ植林地の斜面をカモシカが駆け下りたばかりの足跡を辿って行きます。
せっかく苦労して登ってきた斜面を下ることになりました。
逃げたカモシカはスギ山林をぐるっと回り込み、私がさっき付けたばかりのスノーシューの足跡をしばらく逆行していました。
シーン2(@1:57〜)
谷を下り、雪に埋もれていない細い沢を渡りました。
渡河直後は足跡の雪が泥水で汚れています。
その後、カモシカの足跡はカラマツ倒木の下をくぐっていました。(映像なし)
しんどいラッセルをするほどの深雪ではないので、逃げたカモシカになかなか追いつけません。
私にしつこく追われているのに気づいたのか、カモシカは追手をまくような動きをするようになりました。
カモシカの古い足跡の上をわざとクロスしながら歩いたり、別の動物の足跡の上を歩いたりして、追手の混乱を誘っています。
縄張り内で親子(母子)2頭が行動を共にしている可能性も考えたのですが、残念ながら2頭が一緒に逃げる姿を直接観察(目撃)できませんでした。
結局、この日は二度とニホンカモシカと再会できませんでした。
シーン3(@2:20〜)
カモシカの足跡を辿って、崖のような急斜面を登ります。
斜面があまりにも急なのでスノーシューを脱ぎ、壺足で直登します。
壺足のキックステップでもあまり雪に潜らずに登れました。
急斜面の途中に立つ落葉樹(樹種不明)の下で、カモシカが排尿した跡を見つけました。
立ち止まって小便を排泄したようで、雪面を黄色く染めながら尿の体温で丸く溶かしていました。
関連記事(1年前の撮影)▶ 雪山で排尿するニホンカモシカ♂
シーン4(@2:40〜)
雪山の急斜面を更に登ると、落葉高木(樹種不明)の下にカモシカが雪面に長時間座った跡を見つけました。
雪面はカモシカの体温で少し溶けた後、再び凍っています。
カモシカは夜行性でもあり昼行性でもあるので、いつ寝るのかはっきりと言えませんが、睡眠を取るための塒 または休憩所なのでしょう。
反芻しながら何時間も座位休息していたのかもしれません。
外敵(捕食者)が容易に近づけないよう、崖のような急斜面の上部の狭いテラスを塒として選んでいました。
塒の上には、降ってくる雪を遮るものが全くなかったことが意外でした。
雪が降る日にここで寝るカモシカは、そのまま雪に埋もれてしまうことになります。
関連記事(10年前の撮影@川原の木陰に塒)▶ ニホンカモシカの溜め糞と小便跡@雪面
テラス状の塒 を採寸すべきでしたが、その余裕がありませんでした。
斜度がきつくて、私はふくらはぎの筋肉が攣りそうになりながらも立っているのがやっとでした。
木の根元には氷柱がぶら下がっています。
塒の周囲に少し見える常緑の葉は、おそらく大木に巻き付いた蔓植物のツルマサキだと思います。
カモシカが休憩所にどっかり座り込みながら、口が届く範囲のツルマサキの葉を食べたのかもしれません。
関連記事(10年前の撮影)▶
今回、私から逃げたカモシカがこの塒に戻ってきたということは、毎晩同じ場所で寝るのでしょうか?
予定を変更して、ここにトレイルカメラを設置することに決めました。
後日、他の場所に設置しているトレイルカメラを外して持ってこないといけません。
ところが、携行していたGPSロガーがこの日に限ってGPS衛星の電波を正常に受信していなかったことが、帰宅後に判明しました。
せっかくカモシカの塒を雪山で初めて見つけたのに、正確な位置座標をGPSで記録できておらず、二度と再訪できなくなってしまいました。
痛恨のミスです…。
アクションカメラを自分の体に装着して雪山でのアニマルトラッキングの一部始終を動画に撮り続けていたら、その映像を元にしてカモシカの塒まで再び辿り着けたかもしれません。
しかし今回は、断片的にしか動画を撮っていませんでした。
カモシカ安住の塒に私がずかずかと踏み込んだ足跡が雪面に残っていますから、警戒したカモシカはもう二度とここでは寝なくなったかもしれませんね。
それから、今回は雪山でカモシカの糞塊を見つけられませんでした。
私が追いかけたせいかもしれませんが、前回の山行で見つけた溜め糞場?にカモシカは向かいませんでした。
関連記事(11ヶ月後の撮影)▶ 雪山でニホンカモシカの寝床を見つけた!【アニマルトラッキング・フィールドサイン】
余談ですが、雪山の森をスノーシューで歩くとき、木の根元はスカスカの空洞になっていることがあり、積もった雪で隠された落とし穴をうっかり踏み抜くと非常に危険です。
この空洞を指す「ツリーホール」という専門用語があることを雪山遭難事故の記事で最近知りました。
これまで私はツリーホールを踏み抜いたせいで、スノーシューの金具やフレームを毎年のように計何足も壊してしまいました。
山スキーやスノーボードでバックカントリーを滑走するときも同じなのですが、木の根元をなるべく避けて歩きましょう。
気温の低い厳冬期は未だ大丈夫なのですけど、晩冬から初春にかけて雪が緩んでくると危ないです。
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