谷川沿いの雪原(川原)でニホンカモシカ(Capricornis crispus)の足跡を辿っていたら、大木(樹種不明)の陰に溜め糞を見つけました。
風雪を凌げるここをおそらく塒(ねぐら)としていたと想像されます。※
※ 【追記】『野生のカモシカ:その謎の生活を追う』p170によると、カモシカは自分たちの休息する場所には絶対に糞をしないそうなので、塒ではなくただのトイレかもしれません。一方、宮崎学『森の写真動物記〈7〉草食獣 (森の写真動物記 7)』には異なる見解が書いてありました。「カモシカは夜、雪の中に少し穴をほって休みます。そうした場所には、細長い粒状のふんが、かたまって落ちています。」(p12より)宮崎氏の見解の方が、今回の私の推測・解釈と合います。
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雪面に大量の溜め糞が2回に分けて?排泄されていました。
新鮮な糞の状態からカモシカの健康状態は良好のようです。
一つの溜め糞の横には排尿で溶けた雪の跡も見つかりました。
写真で記録しただけですが、動画でも撮れば良かったですね…。
溜め糞@全景 |
降雪をしのげる大木の下を塒としている様子 |
溜め糞と小便跡@雪面 |
15cm定規で採寸 |
カモシカの小便跡@雪面 |
塒(ねぐら)から改めて雪面に残された足跡をトラッキング開始。
ニホンザルの群れが通った足跡と交差していて分かり難いのですが、しばらく進むと雪面に再びカモシカの溜め糞を発見しました。
杉林と雑木林の境を歩いている途中に再び便意を催したのでしょうか。
今度は動画でも記録しました。
『Winter Field Guide SNOW FOREST 冬の森へ』p79によれば、カモシカの足跡は
雪の上を歩くときは、前足の足痕の一部分に後足が重なるため、はっきりと残るのは、後足の蹄 のあとです。
興味深いこと、今回の溜め糞のすぐ横に一匹のクモが居ました(種名不詳)。
触肢の状態から亜成体♂のようです。
糞に集まる虫を捕食するため待ち伏せしているのかと一瞬思いました。
しかし触れても動きません(仮死状態?)。
雪山の春は未だ遠く(気温が低く)ハエも飛んでいませんし、私の考え過ぎでしょう。
虫を誘引するような糞の臭いは特に感じませんでした。
おそらく雪の重みで折れた枝と一緒に、越冬していたクモが林床に落ちてそのまま凍えてしまった(行き倒れ)のだと想像しました。
足跡のトラッキングを再開すると、私が数時間前に歩いたスノーシューの踏み跡の上にカモシカの足跡が付いています。
明らかについさっき通った証拠です。
案の定、前方にカモシカを見つけました。
ようやく糞と足跡の主まで辿り着きました。
つづく→採食行動
【追記】
一説によればニホンカモシカの糞も溜糞であるという。だが、タヌキのそれとは多少異なる。社会的な意味をもつ共同トイレなのかどうかまだ確実ではないし、規模が大きいところからも「糞場」と呼ぶのが妥当なところであろう。(中略)糞をどのような目的で小山のように積み上げるのか、まだ良くは分かっていない。(『イヌはそのときなぜ片足をあげるのか:動物たちのウンコロジー』p116より)
【追記2】
平田貞雄『ニホンカモシカ・ミミの一生』によれば、
カモシカは生活域内で、だいたいきまった場所で排便します。その場所を「ふん場」と呼びますが、山地で生活している場合には、斜面の棚状の地形のところをふん場とします。そういう地形のところはそんなにたくさん無いから同じ場所でふんをすることになり、そこにはふんが小高く積もります。そして、ふん場にはかなりこだわるようです。(中略)山の麓の方とか、平地の森林内で生活しているカモシカの場合は、棚状の地形に似たところ、たとえば小高い土手のわきなどをふん場とします。(p78-79より引用)
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