2020/11/10

干上がった小川の土手に巣穴を掘って隠れるアメリカザリガニ

 

2020年8月上旬・午後15:20頃・晴れ 

川の本流に注ぐ用水路が梅雨明けすると、すっかり干上がっていました。 
昼間も薄暗い河畔林を横切る小川(出水樋門の下流)の底を私が歩くと、靴が辛うじて沈まない程度に泥が締まっていました。 

泥まみれのアメリカザリガニProcambarus clarkii)が1匹、干上がった川底を横断していました。 
4対の歩脚で歩いています。 
歩行運動に大きなハサミ脚は使わず、少し持ち上げています。 
やがて水路の横の土手の急斜面に達すると、難なく登り始めました。 
登攀時はハサミ脚も少し使っていました。 

土手に小さな穴を見つけると、ハサミ脚を使って入り口の泥をかき出し始めました。 
どうやらこのザリガニは、「穴があったら入りたい」ようです。 
穴が浅いと土手の探索をやり直します。 
土手に大き目のえぐれた窪みを見つけると、再び水平坑を掘り進めます。 
掘り出した土砂と一緒に急斜面を少し滑落したものの、再び登り直して穴に潜り込みました。 
穴掘り作業に疲れると、「頭隠して尻隠さず」の状態で一休み。 
アメリカザリガニの穴掘り作業を微速度撮影したいところですが、三脚を持ってこなかったので、手持ちカメラで作業を見守ります。  
どうやら掘った穴の奥に空洞があったようで、アメリカザリガニは巣穴にスルリと潜り込み、姿を消しました。 
涸れ水路の土手のあちこちに開いている小さな穴もザリガニの巣なのかもしれません。 

この個体は、用水路が干上がるとともに川(本流)へ逃げ遅れたのかな? 
それとも採餌のあとに帰巣しただけでしょうか?
川底の泥に残されたザリガニの足跡を逆に辿れば、どこから来たのか突き止められたかもしれません。 
特定の決まった巣穴と採餌場を往復しているようには見えませんでした。 
適当に掘った穴に隠れただけのような気がします。 
あるいは異性が潜んでいる巣穴を探し当てて、同棲のため潜り込んだのだとしたら面白いですね。(ザリガニの配偶行動はそうではないと後に本で知りました。また、冬越しの巣穴には複数個体が同居することもあるそうです。)
  

そもそも、水生動物だと思っていたザリガニが陸上でも呼吸できることに驚きました。 

▼関連記事(3年前の撮影) 

小田英智、大塚高雄『ザリガニ観察ブック』という本(見事な生態写真集)を読むと、私が抱いた疑問への回答がほとんど書いてあり、とても勉強になりました。
ザリガニは、エラがじゅうぶんに湿っていれば、陸の上でも呼吸できます。空気中の酸素がエラの表面をぬらす水分にとけ、この酸素をエラから吸収することができるのです。 
 あなたは、水辺からはなれた陸の上を、どろまみれになって歩くザリガニをみたことはありませんか。きっと、新しい水辺をもとめて冒険にでかけるザリガニでしょう。(p8より引用)

ザリガニはある意味で、両生類なのですね。

ザリガニは冬がくると、水田や川岸の土手に深い穴をほって、もぐりこみます。地下の水がしみだしてたまった深い穴のなかは、凍りつく心配もありません。この穴のなかで、ザリガニは寒さの冬をねむってすごすのです。そして春がくると、穴からはいだし、ゆたかなえさがある水辺をもとめて移動します。(p6より引用)
今回私が真夏に見た行動が冬越しのための穴掘りとは思えませんが、ザリガニは水が干上がると巣穴に潜り込んで、再び小川の水が満ちてくるまで夏眠するのかもしれません。

湿地に穴を掘って生息し、夜になると出歩いて餌を探す。雨天では日中もしばしば活動し、岸辺に上陸して動き回る姿も見られる。冬は穴に潜んで冬眠する。(wikipediaより引用)


夜になるまで待って、アメリカザリガニが巣穴から再び出て来て採餌を始めるかどうか確認すべきでしたね。 

野生のザリガニの観察も面白そうです。


関連記事(1年後の撮影)▶ 雨上がりの堤防路に上陸したアメリカザリガニ♀と遊ぶ:威嚇・起き上がり運動・一時捕獲など



【追記】

若林輝『武蔵野発 川っぷち生きもの観察記』を読んでいたら、少し違った記述を見つけました。

(川辺りの) 湿った場所の穴は、のちにアメリカザリガニの巣穴と知った。深く掘られた穴の奥には水が溜まっていて、ザリガニが潜んでいるのだ。穴の周囲を足でギュッギュッと踏みしめると、振動に驚いてザリガニが顔を出すことがわかった。 (p197より引用)


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