2020/04/29

キボシカミキリ♀♂の交尾行動(交尾器のクローズアップ)



2019年10月下旬・午後16:23〜16:34(日の入り時刻は午後16:41)


▼前回の記事
キボシカミキリ♀が桑の幹を移動しても追従する♂(配偶者防衛行動)


キボシカミキリ♀♂(Psacothea hilaris hilaris)2ペアの交尾行動をマクロレンズで接写することができました。
薄暗い夕方なので、補助照明の白色LEDを点灯しています。
本来キボシカミキリの配偶行動は夕方から夜にかけて活発に行われるらしいのですが、照明が眩しくても幸い交尾行動に影響はなさそうです。

ヤマグワの樹皮を大顎で齧って傷つけて産卵加工している♀を撮っていると、前傾姿勢で大顎に力を込める♀の腹端で産卵管(焦げ茶色の細い筒状)が少し伸縮していました。
♀の口元には樹皮を削り取った木屑が付着しています。
♀の背後からマウントした♂がときどき♀の背中を口髭で舐めて(リッキング)います。
やがて♂が腹端を強く曲げて交尾器を伸ばし始めました。
茶色い♀産卵管の末端から♂交尾器を挿入したようです。
初めて見るキボシカミキリの♂交尾器は黄色くて細長く、ねじれていました。
1分足らずで♂が交尾器を引き抜くと、長いペニス(腹部の長さとほぼ同じ)は直ちに縮んで腹端に格納されました。
交尾に挑むマウント姿勢が浅い気がしたのですが、これほどペニスが長いのであれば納得です。
交尾中も♀は構わずに産卵加工を続けています。
交尾が済んでも♂は♀の元を離れずに交尾後ガードを続けます。

2組目のカップルでは交尾開始を見逃してしまいました。
この♂の交尾器は白かったです。
ペニスの色の違い(黄色/白色)は撮影角度や照明の有無によるものか、それとも移精の有無によるものか、どちらでしょう?


キボシカミキリは♂同士で精子競争があるそうです。
深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』によると、

 キボシカミキリの♂は、精子置換(sperm displacement)を行う。交尾の最初の段階で、短い間交尾器で接続する行動を反復し、このときに♂は♀体内にある先に交尾していたライバル♂の精子を、生殖器の先の逆だった鱗状の構造によって掻き出して除去している(sperm removal)。このあとに交尾器での長時間の接続を行い自分の精子を注入する。この掻き出しにより98%の精子が除去されるという。甲虫の♀が複数♂と交尾したとき最後に交尾した♂の精子が受精に有利とされている (『カミキリムシの生態』第5章p175より引用)



しかし撮影時の私はそこまで深い知識が無かったために、何回目の交尾行動なのかじっくり観察していませんでした。
つまり、今回撮れた映像が精子置換行動なのか、それとも射精を伴う本当の交尾行動なのか、不明です。
交尾器の挿入時間が短くてすぐに引き抜いてしまうのが意外でした。
(カメラの眩しい照明のせいで交尾を中断した可能性は?)
特定の♀♂ペアの動向を長時間ひたすら注目するべきでしたが、私にはその余裕がありませんでした。
桑の木のあちこちで繰り広げられる♀♂複数ペアの交尾行動を、目移りしそうになりながら夢中で接写していたのです。

つづく→キボシカミキリ♂同士の喧嘩(配偶者防衛に成功)




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