2013年10月上旬
道端の石垣でフタモンアシナガバチ♂(Polistes chinensis antennalis)が群飛していました。
♂は顔(頭楯)が薄黄色で触角の先がカールしているので簡単に見分けられます。
石垣で日光浴(休息)しながら交尾相手の新女王♀が飛来するのを待ち伏せしているようです。
ところが集まるのは♂ばかりで、♀との交尾に成功した♂は一匹も見当たりません。(深刻な嫁不足)
そそっかしい♂は周囲の♂を♀と誤認してお互い手当り次第に飛びついて交尾を試みています。
巣がどこにあるのか不明です。
このようにあまりにも忙しない行動を記録するにはハイスピード動画(240-fps)の出番です。
気づいた点をメモ。
- 石の上で身繕いしている♂に別の♂が飛び付いて来ます。
- 空中戦のように飛んで追いかけっこしている♂達もいます。
- 石の上で休む♂は、別個体♂がマウントしようと迫ると腹部を高く持ち上げることがあります。これが交尾拒否の姿勢なのでしょうか。
- 襲われても腹端や翅を持ち上げたりせず従順にじっとしている♂もいます。もちろん同性愛的な行動ではないでしょう。相手がすぐに誤認に気づき、勝手に飛び去ってくれました。
- 飛びつかれる前に自分から飛び去って身をかわす♂もいます。
- ♂が♂にマウントしているところに更に3、4匹目の♂が飛来・参戦して組んず解れつの大騒ぎになるケースがありました。
- 襲いかかる方は誤認しようがとにかく似た相手を確保するスピードを優先するようで、体の前後の向きが逆にマウントすることも多々あります。
- ♂には毒針がないので、襲われても噛み付くぐらいしか反撃の手段がありません。しかし喧嘩や闘争にはなりません。♀と交尾する前に♂同士が戦って順位を決めているのだとしたら非常に面白いですけど…。ニホンザルのように儀式的なマウント合戦を繰り返して社会的な順位を決めている…とか妄想してみました。
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』p74-75によれば、
日本産のアシナガバチ類の交尾は、9〜10月の晴天の日の日中、午前10時から午後1時ごろまでのあいだ、となっている。
種類によって、交尾のおこなわれる場所とその方法が異なり、つぎのような行動型に区別される。(1)巣口待ち伏せ型、(2)一定コース飛びまわり型、(3)縄張り型、(4)空中交尾型
そしてフタモンアシナガバチは「♂は、樹冠の頂部、林縁、山道にそって一定のコースを飛びまわり、そこを通過する新女王をとらえて交尾する」タイプ(2)だと記してありました。
しかし個人的には、タイプ(3)(4)のケースもあり得るのではないかと疑っています。
肝心の交尾行動を未だ実際に観察できていないので、心に秘めているだけですけど。
今回の映像に記録された雄蜂の行動はまさに、「花、岩、樹上などの一定の場所で縄張りをつくり、そこで新女王を待つ」というタイプ(3)縄張り型ではないでしょうか。
ちなみに、セグロアシナガバチの交尾はタイプ(3)らしい。
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