2026/01/29

【キノコの微速度撮影】成長するスッポンタケのグレバに群がり吸汁するハエ類

 



2024年11月上旬 

ニホンアナグマの営巣地(セット)を目指して私が二次林の林床を歩いていると、ベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)の群れが地上から一斉に飛び立ちました。 
何に集まっていたのか気になってその地点を調べると、スッポンタケの子実体が1本だけ生えていました。 

関連記事(14、2年前の撮影)▶ 


まだもう少し成長しそうなので、スッポンタケを微速度撮影で記録することにしました。 
トレイルカメラで1分間隔の終日インターバル撮影する設定にしました。 
私が持っているタイムラプス専用カメラは昼間しか撮れませんが、トレイルカメラを使えば暗い夜も赤外線LEDを照射しつつ暗視写真を撮り続けてくれます。 
周囲の邪魔な落枝や落ち葉を撤去してからミニ三脚を林床に置いて、スッポンタケを至近距離から狙うことにしました。 
盗難防止のため、トレイルカメラにワイヤーロックをかけて横の木の根元に巻きつけて固定しました。 
こんな所に来るヒトは私以外にいないのですが、好奇心旺盛な野生動物がカメラを咥えて持ち去ってしまうと困るのです。 

4日後に現場入りすると、スッポンタケ子実体の柄が途中で折れていました。 
先端部のグレバが横の林床に落ちていて、ハエ類が依然として集まっていました。(映像公開予定) 
グレバの残骸に鼻を近づけると、かすかにアンモニア臭がした。 

撮れたタイムラプス映像を確認すると、スッポンタケ子実体は夜にも柄がニョキニョキと成長を続け、立派に屹立していました。 
暗い夜もハエ類が飛来して先端部の黒っぽいグレバに群がり、臭い粘液を舐めていました。 
明るい昼間は夥しい数のベッコウバエが集まっていました。 

スッポンタケの仲間は、悪臭のする粘液をグレバから分泌してハエ類を誘引します。 
そのハエが飛び去ることで、胞子を遠くまで散布してもらい分布を広げる戦略なのです。 
グレバが乾くと、白い柄が途中から自然にポキっと折れていました。 

撮影期間中に、野生動物(タヌキやアナグマなど)や野鳥が何も写っていなかったのは、ちょっと意外です。 
スッポンタケを食べに来る物好きな大型動物はいないようです。 
スッポンタケの長い柄は、通りすがりの野生動物や野鳥がぶつかったり食べようとしたりして折れたのではなく、自然に折れていました。 

落葉性広葉樹からの落ち葉が次々と林床に降り積もっていることがタイムラプス映像から分かります。
秋雨が降ってもレンズについた水滴がすぐに乾いてくれて助かりました。 
トレイルカメラの利点として、タイムラプス動画には気温も刻々と記録されています。 
晩秋の明け方はかなり冷え込んでいました。 
ただし、暗い夜間は赤外線LEDを照射しますから、1分間隔のインターバル撮影を繰り返すことでカメラ内部の温度が上昇して異常値を示している可能性はあります。 




 

↑【おまけの動画】 
同じ素材でさらに10倍速に加工した早回し映像をご覧ください。 
スッポンタケの柄の伸長と折れるまでの過程が分かりやすいです。 
ただし、グレバに誘引されるハエ類の様子はだいぶスキップされてしまいます。 


関連記事(@ナゾロジー)▶ 一夜の内に屹立しその後萎えていく「立派なキノコ」のタイムラプス
数日後、スッポンタケは腐敗を始め、ゆっくりと地中に戻っていきました。 キノコ自体には男性器にちなんだ名前がつけられていますが、この腐敗して白くなり倒れている様は、「死体の指」と呼ばれているようです。

2026/01/28

地中から貯食物を掘り出して持ち去るニホンリス【トレイルカメラ】

 



2024年11月上旬・午前7:50頃 

里山の林縁で斜めに伸びている古い朽木の先に給餌箱を設置し、その中にヒマワリ(向日葵)の種子を一杯に詰めておきました。 
リスや野ネズミが食べに来てくれることを期待しています。 



ある朝、ニホンリスSciurus lis)がようやく現れました。 
倒木の途中に乗ったリスが上体を起こし、給餌箱の方を凝視していました。 
美味しそうなヒマワリ種子の匂いがするはずなのに、ニホンリスは警戒しているのか給餌箱には近寄らず、手前の林床に飛び降りました。 

地中の浅い所に埋めて隠しておいた餌を掘り出すと、口に咥えて手前に持ち去りました。 
監視カメラの画角の死角に入ってしまったのが残念です。 
ちらっと見えた餌は黒っぽかったので、おそらくオニグルミの堅果を貯食していたのでしょう。 
実はこの場所は、オニグルミの古い巨木が横にそびえ立っています。 
空腹のリスがその場でクルミの殻を割って食べたのか、それとも(貯食物を盗まれないように)別な場所にオニグルミ堅果を埋め直したのか、見届けられませんでした。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
昼行性のリスへの給餌実験がどうしても上手く行きません。 
夜行性の野ネズミは同じ給餌箱に通ってくれるのに、リスの警戒心の強さが際立ちます。

それでも今回は貯食物の掘り出しという貴重なシーンを垣間見ることが出来たので、一歩前進です。
人為的に給餌なんかしなくてもニホンリスの自然な営みを撮影できるのなら、それに越したことはありません。

この里山にはオニグルミの木が点在しているのですが、過去に伐採された結果なのか、連続したクルミ林になっていません。
オニグルミを主食とするニホンリスにとっては暮らしにくそうですが、アカマツや植林されたカラマツなども利用して細々と暮らしているのだろうと推測しています。




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スッポンタケの臭いグレバに集まり吸汁するハエ類(ベッコウバエ・キンバエ・ニクバエなど)

 


2024年11月上旬・午後14:00頃・晴れ後くもり 

平地の二次林の林床で成長中のスッポンタケを見つけました。 
白い柄の上部にある黒っぽいグレバに多種多様なハエが多数群がり、口吻を伸縮させてグレバの粘液を吸汁しています。 
私の鼻が詰まっていたのか、特に悪臭は感じれませんでした。 
せっかくの機会なので、鼻を近づけてグレバをしっかり嗅ぐべきでしたね。 

ときどき足先を擦り合わせて身繕いしているハエもいました。 
スッポンタケの白い柄を歩き回るハエはほとんどおらず、グレバの方が圧倒的に魅力的なようです。 
スッポンタケの横を私が歩いたり近づいたりすると、ハエの群れは一斉に飛んで逃げるものの、すぐに舞い戻って来ます。
近くの下草の葉や落ち葉に留まって順番待ちをしているハエも居ました。 
交尾相手を待ち伏せする♂なのかな? 

来ていたハエの中で、私にちゃんと名前が分かるのは、ベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)ぐらいです。 
他にはキンバエの仲間、ニクバエの仲間などが来ていました。 
ベッコウバエ♀の黒い腹部を横から見ると膨満しているのは、卵巣が発達しているのでしょう。 
この映像で見る限り、ベッコウバエの♂は近くに居る♀に交尾を挑もうとしませんでした。 
ベッコウバエをよく見かけるタヌキの溜め糞場では翅を素早く開閉して斑点の翅紋を誇示するのですが、スッポンタケの上ではそれもしていません。 

ここではベッコウバエが最大の種です。 
ベッコウバエが歩き回ると、他種のハエは遠慮して場所を譲りました。 
樹液酒場に集まる昆虫の間で力関係があるように、スッポンタケに集まるハエの間にも微妙な力関係があるのかもしれません。 
吸汁中に隣のハエが近づきすぎないように、脚を伸ばして互いに牽制しているのが興味深く思いました。 
集まったハエの個体間でさり気ない占有行動があるようです。 

余談ですが、動画の後半で甲高くヒッヒッ♪と聞こえるのは、冬鳥ジョウビタキPhoenicurus auroreus)の鳴き声かな?



【考察】 
ChatGPTに質問を繰り返して、スッポンタケとハエの関係について理解が深まりました。

・グレバに誘引されて吸汁したハエ類の♀は、スッポンタケに産卵することはほとんどない。
スッポンタケを主食として育つ“専食的な蛆虫(ハエの幼虫)”は、少なくとも確立した例は知られていません。

・スッポンタケのグレバは、ハエにとって魅力的な匂いを放つが、繁殖に寄与するほどの栄養価はなく、最低限の報酬だけを与えて胞子分散に利用する、強く非対称な関係である。(相利共生ではない)

・腐肉に擬態する悪臭グレバをもつスッポンタケ類は、形態進化としては単系統だが、ハエを利用するという生態的戦略自体は、菌類進化史の中で収斂的に繰り返し現れている。


進化的に見ると、この戦略はかなり「おいしい」条件が揃っています。


ハエ側の条件

腐敗臭に対する感度が極めて高い

行動範囲が広い

摂食と移動が強く結びついている


菌側の条件

腐敗臭の化学物質は、代謝的に作りやすい

子実体を栄養源として守る必要がない

幼虫を育てる必要がない(=一方通行)


そのため、「腐った匂いを出すだけで、勝手に運んでくれる」という設計は、進化的に再発明されやすい。



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