2023/02/28

渓流沿いの土手で下草を食べるニホンカモシカの母子

 

2022年9月中旬・午後15:10頃・くもり 

里山の渓流沿いの土手でニホンカモシカ♀(Capricornis crispus)を見つけました。
野草の生い茂った土手に佇み、正面から私を見据えています。 
途中から横向きにもなりました。 
カモシカの眼球は顔の横に付いているため、正面からよりも真横から横目で見た方がしっかり見えるのでしょう。 
口をモグモグと動かしているので(草を咀嚼)、どうやら採食中だったようです。 
カモシカは近視で私の姿がよく見えないらしく、頻りに鼻を上げて風の匂いを嗅いでいます。 
湿った鼻孔がヒクヒクと開閉していて、風上に立つ私の体臭を嗅ぎ取ったはずです。 
耳介の向きを変えて辺りの物音を油断なく聞きとっています。 
たとえ視覚が弱くてもカモシカは嗅覚と聴覚で警戒を怠りません。 
顔を激しく振ったのは、顔にたかる虫を追い払ったのでしょう。 
(私に対する苛立ちからの転移行動かも?) 

ようやく警戒を解くと、採食を再開してくれました。 
頭を下げて下草を採食するので、首から胸元にかけての毛皮に「ひっつき虫」が大量に付着しています。 
林道や土手の草地にはイヌタデ、キンミズヒキ、ツリフネソウなどの花が咲いている他、オニグルミの幼木なども生えていました。 
残念ながらカモシカ♀の採食メニューの詳細(植物種)まではしっかり観察できませんでした。 
カモシカ♀はイネ科の単子葉植物ではなく、広葉の草をむしゃむしゃと食べています。 
あまり植物種の選り好みをしているようには見えません。 

何か気配を感じた私がカメラを少し左に振ると、いつの間にかカモシカの幼獣も傍に来ていました。 
このとき初めて、撮影していたカモシカ成獣が母親♀なのだと分かりました。 (外性器は見えませんでした。)
草深い林道上で母子が向かい合って採食しています。 

しばらくすると幼獣も顔を上げて、私の存在に気づいたようです。 
見知らぬヒトとの遭遇で不安になったのか、幼獣は歩いて母親に近づき、顔を寄せました。 
母親の匂いを嗅ぐと安心するようです。 
幼獣に角は未だ生えておらず、頭部から1対の突起が生えかけているだけです。 

遂に母親♀は採食を止めて移動し始めました。 
土手を登ると林道をゆっくり横断し、左の山に帰って行きました。 
幼獣も母親の後を追います。 

この間、母親のニホンカモシカ♀は私に対して鼻息を荒げた威嚇♪を全くしてきませんでした。 
顔馴染みの私に対してある程度は信頼してくれているとしたら、嬉しいことです。 
鼻息威嚇は♂だけの行動なのかな?(要確認)

関連記事(同日に別地点で撮影)▶ ニホンカモシカは野山で有毒植物のトリカブトを味見するか?

カモシカが毒草を食べないのは先天的な本能で忌避するのか、味見して学習するのか、親から教えてもらうのか、という問題が最近気になっています。 
ニホンカモシカ母子の採食行動を観察したのは今回が初めてです。 
これを見る限り、母親は子供に食草をいちいち教えたりしていませんでした。 
ただし、「教育期間はもう終わっている(修了)」とか「今回の現場に有毒植物は生えていなかったので指導する必要がなかった」と言われたら、そうかもしれません。 
カモシカの幼獣は母親と行動を共にして母親が採食する様子を離乳前から見ていますから、見様見真似で自ずと食べられる植物と食べてはいけない有毒植物を学習するのでしょう。

ハネフリバエ科Euxesta属の一種がタヌキの糞を舐める様子を接写してみる

 

2022年9月中旬・午後13:35頃・晴れ 

里山の尾根道にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場cに様々なハエが多数群がっています。
その中でハネフリバエ科Euxesta属の一種(Euxesta sp.)に注目してマクロレンズで接写してみました。 
小さいながらも綺麗なハエで、緑色の金属光沢が直射日光を浴びて美しく輝いています。 
一緒に居たキンバエ類の鮮やかなメタリックグリーンとはまた違う、ちょっとくすんだ渋いメタリックグリーン(緑がかった金色?)です。 
最近名前を知ったばかりのちょっとレアなハエなので、ここにも来ていたか!という嬉しさがあります。 
まさに知る人ぞ知る「掃き溜めに鶴」。 

冒頭でEuxestaの足元の糞塊がモコモコと大きく上下したのは、おそらく糞虫がその下で活動しているためでしょう。

Euxestaには透明な翅に黒い縁紋が2つあり、それを誇示するように左右の翅を絶えず開閉しています。 
口吻を伸縮させて獣糞から吸汁している間も、身繕いする間も、ひたすら翅紋誇示を続けています。 
左右の翅を同時に動かしたり別々に動かしたり、素人目には不規則な動きに見えます。 
Euxestaは「手旗信号」で一体どんなメッセージを誰に対して発しているのか、解読したくなります。 
普通に考えれば、求愛か威嚇のディスプレイ(誇示行動)でしょう。 
千客万来で繁盛している「うんちレストラン」で隣客(キンバエ類やオオマダラヒロクチバエ、ニクバエ類など)が図々しく割り込んできたりして距離が近くなり過ぎると、Euxestaは翅開閉の頻度を上げるようです。 
激しく翅紋を誇示して牽制したところで、結局は体の大きなハエに遠慮して場所を譲ってしまいます。 
次に機会があれば、Euxesta同種間で交流しているときの翅紋誇示をじっくり観察してみたいところです。 

快晴の尾根道は自然光の光量が強く、マクロレンズを装着した接写には絶好のコンディションでした。 
ちなみに前回はやや日陰での接写でした。

2023/02/27

スギ林道を跳んで横切る夏毛のニホンノウサギ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年9月中旬・午前3:10頃・気温17℃ 

杉山林に設置した自動センサーカメラに夏毛のニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)が写りました。 
実はこの地点でノウサギが撮れたのはかなり久しぶり(半年ぶり)です。
前回の記事:3月下旬 ▶ スギ山林の雪道を嗅ぎ回る冬毛のニホンノウサギ【暗視映像:トレイルカメラ】
画面の下に立ち止まっていたノウサギが林道を手前に横切り、画角の外へ消えました。 
短い跳躍移動を1/4倍速のスローモーションでリプレイ。 
林道脇の法面を登って行ったのかもしれません。 
トレイルカメラが起動する前も、おそらく画面奥の斜面を登って来たのでしょう。

赤外線の暗視カメラはモノクロの映像になりますが、それでもノウサギの夏毛と冬毛の違いは歴然としています。 
冬毛に変わると暗視映像でも本当に純白に写ります。 



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