2023/01/10

夜の林道で水溜りを避けて歩くホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月下旬 

里山の林道でヌタ場と思しき水溜りをトレイルカメラで見張っていると、2夜連続でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が通りかかりました。 

シーン1:8/28・午後21:06 
水たまりを避けるように林道の右端を歩いて、右から左へ通り過ぎました。 
後に分かったことですが、タヌキは林道を外れて奥の斜面を下る獣道を選んだようです。 

シーン2:8/29・午後21:18 (@0:08〜) 
どうしても自動センサーカメラの起動が遅れてしまうのですが、前日とは逆のルートでタヌキが谷側の斜面から林道に登場した気がします。 
今回もタヌキは暗闇の林道で水たまりを避けて林道の端を歩き、左から右へ通過しました。 
進行方向には水場があるので、池畔に設置した別のトレイルカメラをチェックしてみたものの、タヌキは写っていませんでした。 

 ※ 動画編集時に自動色調補正を施して、明るく加工しています。 



アカタテハ終齢幼虫の巣作りも兼ねたトレンチ行動【マクロ動画】

 

アカタテハの飼育記録:2022年#4 



2022年8月下旬・午後16:00頃・室温24℃ 

アカタテハVanessa indica)の幼虫による巣作りには、明確な「完成状態」はありません。
造巣がある程度進むと、食餌と同時並行かつ臨機応変に行われます。 
マクロレンズを装着して造巣行動の一部を接写してみました。 
終齢幼虫が白い絹糸を吐いて食草クサコアカソの赤い葉柄の間に何本も張り巡らせています。 
糸の張力で周囲の葉や穂先を引き寄せ、巣材として綴り合わせるのです。 
絹糸を見やすいように、背景を黒にするべきでしたね。 

やがて、赤い葉柄の下面を齧り始めました。(@0:30〜) 
茎に切れ目を入れて、巣材として加工しやすく(折り曲げやすく)しているのです。 
この工作をしないと、巣材の茎や葉柄を曲げようとしても、それに逆らう茎の弾性に糸の張力が負けて切れてしまいます。 
穂先についた実を食べる前のトレンチ行動も兼ねていると考えられます。 
茎に大きく傷を付け、防御物質の流入を防いでから、ゆっくり食餌するのです。 
しかし、アカタテハ幼虫が齧っているクサコアカソ茎の傷口から防御物質を含む汁は滲み出していませんでした。 
植物の種類によっては、白い乳液(ラテックス)などが傷口から分泌されます。 

折れ曲がった果穂の先に糸を付けて、周囲の葉などと一緒に巻き込んで隠れ家を作ります。 

【参考文献】 
 井出純哉「アカタテハの巣作り行動」@環境Eco選書『チョウの行動生態学』の第3章p39〜50 

2023/01/09

ニホンイノシシによる泥汚れ?(2)獣道の下草

 

2022年8月下旬・午後14:00〜15:00頃・くもり 


里山で下草の生い茂るの林道を歩くと、あちこちに泥汚れが付着していて、それが白く乾いていました。 
草だけでなく、幼木の枝葉、落枝などにも白い泥汚れが点々と残っているのです。 
手の爪でこそげ落としてみると(@1:54〜) 、鳥の糞が葉に落ちたのではなく、泥が白く乾いたものと分かります。

土砂降りの大雨による泥の跳ね返りではあり得ない高さ(私の膝下ぐらい)まで白く汚れていました。
雨の跳ね返りなら、葉の裏面が汚れているはずです。 

林業や登山客の車が通り、わだちから泥水を跳ね上げたという可能性も考えました。 
しかし林道入り口を塞いでいる巨大な倒木が放置されているせいで、車は通れないはずです。 
また、林道上には雨水が溜まった轍はありません。 

ニホンイノシシSus scrofa leucomystax)は泥浴びが大好きです。 
ヌタ場で転げ回った直後に林道を通過すると、泥まみれになった体から泥水が滴り落ちたり、下草と体が擦れて泥汚れが移ったりするのでしょう。 
まるで誰かがバケツ一杯の白ペンキを盛大にぶちまけたような地点もありました。 
獣道で立ち止まったイノシシが身震いして、泥を振り落とした(撒き散らした)のだろうと想像しました。 
もしかして、イノシシは縄張り内を意図的に泥でマーキングしながら歩いているのでしょうか? 
何頭のイノシシが往来した結果なのか、気になります。 
トレイルカメラを設置したら証拠映像が撮れるかな? 
熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』によれば、
イノシシのケモノ道は、腰をかがんで探すようなケモノ道とは違い、(中略)踏み分けられた道になる。近くに泥場があり、ケモノ道周辺に生えた植物の下のほうに泥がついていたら、イノシシ道と考えて間違いないだろう。(p82より引用)

泥汚れが付いた植物の名前を映像から分かる限り列挙してみました。 
現場は東北地方日本海側の多雪地帯で、ブナ帯よりも標高が低いミズナラ帯です。
この辺りの植生(植物相・フローラ)が大体分かるはずです。
葉の食痕は草食獣によるものではなく、虫食い穴だと思います。 

幼木:クロモジ、エゾユズリハ?、キイチゴ類?、コナラ、ミズナラ、クロモジ、ハウチワカエデ、ガマズミ?(葉が対生)、イヌツゲ(常緑、葉が互生)、タニウツギ、ウリハダカエデ、リョウブ、イロハカエデ、スギなど 
下草:笹類、オカトラノオ(実がなっている)、イネ科の草、キンミズヒキ、トリアシショウマ、アザミ類、ススキ、オオバコ、ミゾソバなど 
蔓植物:ミツバアケビ、フジなど 
羊歯:シシガシラなど 

笹やシダ植物について勉強不足なのはさておき、羽状複葉で対生の葉(鋸歯なしの全縁)がついた幼木の名前が分かりません。(@0:55、4:55、5:33、6:15、7:02〜) 
フィールドでよく見かける植物なので、この機会にどなたか教えてもらえると助かります。 
イヌザンショウ?(互生なので除外)、ハゼノキ?(東北地方の雪国には分布しないはず)。
もしかすると幼木ではなくて草本なのかな? 
蔓植物のフジの葉ですかね?

林道上に点々と残る泥汚れを辿ると、ヌタ場らしい水溜りに辿り着きます。(@5:00〜) 
真夏で水溜りの水が干上がりかけていて、ただの泥濘に見えます。 
ここの泥に有蹄類(カモシカまたはイノシシ)の足跡が残っているのをよく見かけます。 
その横の法面(斜面)を少し登るとカラマツの大木がそびえ立ち(@5:50〜)、その幹の根元付近にもイノシシが泥汚れを擦り付けた跡が残っていました。(前回の記事参照) 

白い泥汚れのついたミゾソバの群落でスジアカハシリグモ♀(Dolomedes silvicola)を見つけました。(@6:30〜)
茶色の赤味が強い個体です。 
カメラのレンズを正面から近づけると、歩脚を振り上げて威嚇してきました。 
よく見ると、右の歩脚が2本、左が3本しかありません。(8本足のうち3本の欠損) 
天敵に襲われた際に自切して逃げ延びたのでしょう。 
周囲の植物に白い糸を粗く張り巡らしてあります。 
ミゾソバ下部の葉裏に丸くて白っぽい卵嚢らしき物体がちらっと見えました。
しかし残念ながら、撮影中の私は卵嚢の存在に気づきませんでした。 
目の前で指を振り立てると、スジアカハシリグモ♀は葉裏に避難しました。 
卵嚢をガードしていたのかもしれません。




ミゾソバ
タニウツギ+ウリハダカエデ幼木
リョウブ幼木
クロモジ幼木
スギ幼木+落枝
トリアシショウマ?
イヌツゲ幼木
ミツバアケビ

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