2021/09/06

対人威嚇の波状飛翔ディスプレイを繰り返しながら鳴くノスリ(野鳥)

 

2021年6月下旬・午後17:08〜17:20・くもり 

山麓を流れる用水路沿いの道を私が歩いていると、ノスリButeo japonicus)が飛来しました。 
ピーェ、ピーェ♪と物悲しい高音で鋭く鳴き続けながら、私の上空を飛び回ります。 
高度を上げるために旋回・帆翔するのではなく、停空飛翔(ホバリング)と急降下・急上昇を何度も繰り返しています。 
ノスリが全く羽ばたかず(滑翔のまま)空中の一点で見事に静止する停飛(ホバリング)を間近で見るのも初めてです。 
この日は風がやや強く、上空はもっと強風(夕方の上昇気流?)が吹いているようです。 
この個体の性別を知りたいところですが、私には見分けられません。 

もう一つ重要な問題は、聞こえている鳴き声は飛翔個体が発しているのか?という点です。 
もしかするとディスプレイ飛行している個体は黙っていて、つがいのパートナーが近くで鳴いている可能性も考えられます。(映像公開予定) 
飛翔中の嘴の動きと鳴き声が同期しているかどうか(リップシンクロ)、動きの激しい映像ではしっかり確認できませんでした。 
冒頭でダイビングしながら私の方に向き直って鳴いたように見えたので(@0:09、0:12)、鳴きながら飛んでいると現時点では解釈しています。 
波状に飛ぶ中で鳴き声を発するタイミング(位相)について、規則性は特に無いようです。 
※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

私の真上でノスリが猛スピードで急降下する姿は大迫力でした。 
獲物となるノウサギがこれを見たら凄まじい恐怖でしょう。 
流線形を保って空気抵抗を減らすためにノスリは後脚を胴体に引き付けたままで飛んでいて、鋭い爪を見せつけて威嚇してくることはありませんでした。 

もっと見晴らしの良い広々とした場所から撮影したかったのですが、たまたま私が立っていた地点から林冠ギャップを見上げる体勢でなんとか撮影するしかありませんでした。 
視界が遮られて、もどかしい撮影でした。 
レンズ中央部の汚れがお見苦しくて申し訳ありません。 

白い雲が薄くかかった空を背景に、ノスリが風に乗って急降下と急上昇を高速で繰り返すと、波状に飛ぶことになります。 WWW
撮影時の私は、ノスリのこの奇妙な飛び方の意味が分からず、夢中になって長々と動画に記録しました。 
鳥類学の本ではない昔のベストセラー小説ですが、『かもめのジョナサン』で限界突破のために高速飛翔を練習するシーンをなぜか連想しました。 
私の真上で静止したり、警戒声♪を発し続けたり、急降下を見せつけたりするのは、私に対する威嚇行動なのかもしれません。 
それとも私の存在などノスリの眼中には無く、別の目的があるのかな? 
同じ空域に他の鳥は見かけませんでした。
独りで風に乗る遊び(ウィンドサーフィン)を楽しんでいるのでしょうか? 
猛禽類(ノスリ以外の種)に関する本を読んだときに知った「ディスプレイ飛翔」と似ている気がするものの、6月下旬に異性に求愛するのは時期的に遅過ぎます。 
実は5年前にも現場近くでノスリと思しき猛禽が今回と同じような飛翔行動♪を披露していました。
関連記事(5年前の撮影@4月下旬)▶ ノスリ?(野鳥)のウィンドサーフィン♪(停空帆翔)
当時は飛ぶ姿がやや遠くてノスリかどうかも確認できず、勉強不足の私はウィンドサーフィンで遊んでいるのかと誤った解釈をしてしまいました。
今になって動画を見直すと、これこそが求愛のディスプレイ飛翔♪だと理解できました。 
当地で4月下旬と言えば、里山には未だ残雪が少しある時期です。 

『野鳥の鳴き声図鑑』と称するものでもノスリの鳴き声については解説が絶望的に乏しく、フィールドでの生態調査には役に立ちません。 
フィールドガイド日本の猛禽類vol.04ノスリ』という専門的な資料を紐解いてみると、詳細に解説してあって私の疑問が全て解けました。 
少し長くなりますが、ここで抜粋させてもらいます。
鳴き声 Voice  ノスリはサシバと同様によく鳴く鷹で、最もよく聞かれるのは「ピーエー」や「ピィー」と強く鳴く声である(鳥との距離によっては「ヒャー」あるいは「ピャー」と聞こえる)。この声は1年を通して成鳥、幼鳥とも飛びながら発することが多く、その意味は鷹や人などの外敵に対する威嚇や興奮である。 (p3より引用)
ディスプレイ Display  ノスリの繁殖活動は1月下旬ないし2月下旬から始まり、まずはディスプレイ飛行が見られるようになる。(中略)  よく見られるディスプレイ飛行は翼を浅いV字に保った帆翔と深くゆっくりとした羽ばたき飛翔、および、急降下と急上昇を交互に行なう波状飛行である。典型的な波状飛行は、翼を広げてやや上昇した後、翼先端をすぼめて菱形のような格好になり数十mを一気に急降下する。そしてブレーキをかけるように翼を半開きにすると上昇に転じて急上昇する。稀に翼を半開きにせず、閉じたままこの動作を行うこともある。波状飛行は地上高100m以上の高空から行われることが多いが、徐々に高度を落として林の樹冠付近まで続け、最後はそのまま営巣林へ突入することもある。  これらのディスプレイは、繁殖初期から巣外育雛期である8月まで例えば次のような組み合わせで観察される。よそのノスリが営巣地に侵入してくると、繁殖個体は「ピーエー」と聞こえる強い声を発しながら深く速い羽ばたきでスクランブルし、尾羽を閉じ翼を浅いV字に保って滑空していく。それでも相手が引かないようだと、深くゆっくりとした羽ばたきを交えた旋回上昇で高度を上げ、その後波状飛行に移行することが多い。つまり、これらのディスプレイは排除行動と解釈される。(中略)このようなディスプレイは4月上旬から6月頃まで特によく行われ、抱卵中の♀が巣内から飛び出して他個体を排除する夫に加勢することさえある。 (中略)これらのディスプレイは営巣地付近に長時間居座ったり、巣に近寄ったりする人間に対しても行われることがある。繁殖を妨害しないためにも、ノスリ調査の際にはそのような行動を起こさせないよう十分な配慮が必要である。(p5より引用)
太字にした最後の記述はバードウォッチャーにとって特に重要です。
私も含めて無知ゆえに、繁殖期のノスリ親鳥に対して無自覚に嫌がらせをしてしまっている場合が多いでしょうから、この情報をもっと広く周知・拡散することが必要です。
繁殖期の親鳥が営巣地に侵入した私に対してストレスを感じて発している警戒声および排除行動(威嚇)の波状飛翔だと学んだので、次回からは親鳥に警告されたら悠長に撮影してないで速やかにその場を離れることにします。 
このノスリ♀♂つがいと私はお互いに顔馴染みなのですが、営巣木の位置をなんとか突き止めたいものです。 

私が山麓の小径を進んで行くと…。 

2021/09/05

堤防の階段を深夜徘徊するハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2021年6月下旬・午後22:58および午前2:42・気温12℃ 

堤防のコンクリート階段に残された溜め糞にやって来る野生動物を突き止めるためにカメラトラップを仕掛け、試行錯誤しています。 
今回から設置アングルを変え、古い三脚を持参してトレイルカメラをセットしてみました。 
アルミ製の三脚が銀色に光って目立つので、黒いビニールテープをぐるぐる巻いて偽装しました。 
本当は迷彩柄のテープを使いたいのですけど、通販で取り寄せる暇がないのでとりあえず黒いテープで代用します。 
黒や緑の塗料をスプレーで三脚に吹き付けて塗装しようか迷ったのですが、塗料が完全に乾くまで野生動物は匂いを嫌がりそうです。 
柳の小枝を切り集めてきて三脚の足に被せました。 
センサー感度はMiddle、動画の録画時間を1分間に変更。

溜め糞のある段の一段下に三脚を低く立てて置きました。 
三脚を使った結果、灌木にベルトで巻き付けてトレイルカメラを固定する設置法よりも風揺れの影響が無くなりました。 

午後から激しい雷雨になりました。 
カメラに落雷しないか心配ですが、運を天に任せるしかありません。 
通常の雨ならトレイルカメラの防水性能は全く問題ありませんでした。 

シーン1:午後22:58 

謎の野生動物が不審な三脚を迂回してから階段の左へ足早に歩いて画角から消えました。 
1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
長い尻尾が印象的です。 
センサーの起動が間に合っていません。 
カメラの位置をもう少し下げて画角を広く取るべきでした。 
肝心の溜め糞がある段が画面の下端となり、ほとんど写っていません。 
(トレイルカメラを起動する前に試し撮りをして、画角を入念にチェックすべきでした。) 

※ シーン1に登場した謎の動物はハクビシンではなく、タヌキやネコかもしれない、という気がしてきました。 
尻尾がハクビシンとは違うような…? 

シーン2:約4時間後の午前2:42 

トレイルカメラの正面を右から左へ横切ってセンサーが起動したものの、被写体が近過ぎて赤外線でハレーションを起こしています。 
動画編集でequalizer処理したら、白飛びが改善しました。 

謎の獣は立ち止まってカメラを見たのですが、目がギラギラと光るばかりで鼻面の縦縞はよく見えません。 
尾がとにかく長いので、タヌキやアナグマではなくハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)と判明しました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

こんな平地の堤防に夜行性のハクビシンが出没しているとは知りませんでした。
 (後日もっと鮮明に撮れたハクビシンの映像を公開予定です。) 
溜め糞に残された糞の形状も、ハクビシンの排泄した糞ということで一部は説明可能です。 
しかし溜め糞の上でハクビシンが排泄する証拠映像を撮らないといけません。
どうやら、ここの溜め糞は複数種の野生動物が競い合うように排便して互いに縄張りをアピール(匂い付け)しているようです。 
ただし、今回登場したハクビシン個体は溜め糞で排便したり、興味を示して匂いを嗅いだりすることはありませんでした。 

設置したトレイルカメラの存在自体が野生動物の自然な行動にどれだけ影響してしまっているのか、気になります。 
何日も放置していたら慣れてくれるでしょうか?
トレイルカメラは設置したアングルで設定した通り忠実に作動しますが、全く融通が効きません。 
野生動物との知恵比べで、カメラの調整を繰り返すしかありません。 
獣の気配を感じたらキョロキョロと背後も振り返るように改良して欲しいなーとカメラのメーカーに無理なお願いをしたくなります。
予算が豊富なら複数台のトレイルカメラを運用して多角的なアングルで狙えば死角が無くなるはずです。
その前に、とりあえず初号機で使い方をマスターしないといけません。

中干し中の水田に入って虫を捕りハシボソガラス幼鳥に給餌する親鳥(野鳥)

 

2021年6月下旬・午後16:00頃・くもり 

水田の畦道にハシボソガラスCorvus corone)の親子が並んでいました。 
幼鳥が餌乞いすると、隣りにいた親鳥が口移しで巣外給餌してやります。 
成長した幼鳥の体格は親鳥とほぼ変わりません。 

ここまでは別に珍しくない光景でしたが、しばらくすると親鳥が畦道から水田に飛び降りて、そのまま田んぼの中を歩き回り始めました。 
幼鳥も親鳥の後をついて歩きます。 
カラスが夏の「水田の中に」入って探餌徘徊する行動を見たのは初めてでした。 
草丈高く育ったイネの茂みの中で黒いカラスの姿はほとんど隠れてしまいました。 
梅雨に入ったこの時期は田んぼの水を抜いて「中干し」しているのでしょう。 
泥が半乾きになるとカラスも田んぼの中に入れるようです。 
脚の長いサギ類と違い、カラスは深い泥濘の田んぼに入って採餌することはありません(私が知る限り)。 

親子で一緒に田んぼに入ったということは、親鳥が幼鳥に採餌法を教えてるのでしょう。 
青々と育ったイネの葉が風でなびいて、それだけでも絵になる田園風景です。 
親鳥を見失わないように必死で付いて歩いていた幼鳥が水田から飛び立ち、奥の畦道に移動しました。 
いかにも幼鳥らしく、採餌実習に飽きてしまったのでしょうか? 
親鳥を見失って不安になったのかな? 
中干し中とは言え、足元の悪い田んぼを歩き回るのはやっぱり嫌なのかもしれません。

水田に残った親鳥は構わずに探餌徘徊を続けます。 
何を捕食しているのか見えませんが、虫やカエルなどを探し歩いているのでしょう。 
親鳥の喉袋が膨らんでいるので、幼鳥に給餌するために獲物を貯め込んでいるようです。 
カラスに限らず、夏の田んぼで害虫駆除してくれる鳥は稲作農家にとって大歓迎でしょう。(益鳥)

畦道で待っている幼鳥2羽のうち片方に注目して撮影すると、手前の水田で採餌していた親鳥が飛来しました。 
やって来る親鳥の姿を見つけた途端に幼鳥は餌乞いを始めます。 
畦道に並ぶと親鳥は幼鳥に口移しで巣外給餌しました。 
給餌直後に親鳥は足元の草に嘴を擦り付けて汚れを拭い取りました。 
すぐにまた親鳥は畦道から奥の水田に歩いて入り、獲物を探し始めます。 

畦道に残された幼鳥は、今度は親鳥の後について田んぼに入ることはなく、少し飛んで奥の農道に移動しました。 
自力で何か餌を見つけたらしく、啄んでいます。 
水田の右隅にもう1羽の親鳥が入り込んで採食していました。 
その親鳥が幼鳥に近づくと、農道上で羽繕いしていた幼鳥が餌乞いしながら歩み寄りました。 
しかし親鳥に無視されてしまいます。(未だ餌が取れてないのでしょう。) 
続いて幼鳥は、農道を歩いて来る別の親鳥に対して餌乞いしつつ駆け寄りました。 
今度も親鳥に無視された幼鳥は羽繕い。 
親鳥は農道から水田に入り、探餌徘徊を続けます。
     

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