2020/01/17

交尾相手を足蹴にするエサキモンキツノカメムシ



2019年8月下旬・午前10:15頃

川沿いに生えたヌルデの葉に乗って交尾中のエサキモンキツノカメムシ♀♂(Sastragala esakii)を見つけました。
下側に居る大型の個体がおそらく♀なのでしょう。
その♀が後脚で相手の腹端を蹴るような(擦っている?)謎の動作を繰り返していました。
この♂とはもう別れたくて交尾器の結合部を引き抜こうとしているのでしょうか?
それなら♀は嫌がって♂を引きずるように歩き回っても良さそうなものです。
ところがしばらくすると、♀も動かなくなりました。
その間、上側に居る♂はひたすら静止しています。

エサキモンキツノカメムシのトレードマークとなっている胸部小楯板のハートマークは、上の♂が黄色で下の♀が白色でした。


▼関連記事(12年前の撮影)
エサキモンキツノカメムシの交尾


エサキモンキツノカメムシ♀♂@ヌルデ葉+交尾
エサキモンキツノカメムシ♀♂@ヌルデ葉+交尾。左上で別個体が訪花中

2020/01/16

岩場でクサガメ♀の甲羅に乗る♂



2019年8月下旬・午後13:40頃


▼前回の記事
クサガメ♂の岩登り


蓮池の岩場でクサガメMauremys reevesii)♂成体が隣の大型の♀(※)の甲羅に前足を掛けて横からのしかかろうとしていました。
(※ クサガメは♂よりも♀の方が大型になるのだそうです。)
上に乗った♂は喉をヒクヒクさせています。
やがて上の♂が向きを変え、互いに前後逆方向になりました。
交尾目当てのマウントではないことがはっきりしました。
クサガメの交尾は水中で行なうのだそうです。
まさか別個体の甲羅と認識せずに、ただの大きな岩だと思って登ろうとしているのかな?

1年前にもここで同様のシーンを見ています。

そのときは、♀の上に乗った♂だけがちゃっかり日光を浴びていました。
▼関連記事
クサガメ:親亀の上に子亀を乗せて?


岩が幾つも並んでいる中でも亀の甲羅干しに適した岩というのは、実は限られています。
しかし亀が日光浴をするために岩の争奪戦をしている様子を私は見たことはありません。
「親亀の上に子亀」状態になれば、後から来た個体も日光を浴びることが可能になります。
逆に、下になってしまった大型♀は、どうして怒ったり上の♂を振り落としたりしないのでしょうか?
全く気にする様子もなく寛容でした。
ヒトの世界で日照権の侵害は民事訴訟になったりします。
このとき2頭が居る岩は、平らで広いものの周囲に繁茂するハスの葉に遮られて日陰になっていました。

手前にある尾根のように細くて狭い岩は日当たりが良く、別の若い小型のクサガメaが跨って甲羅干しをしていました。
更にもう1匹の若い小型の個体bが、手前にある別の狭い岩(日当り良好)に上陸しました。
この個体は、甲羅が苔むしたような緑色でした。

気づけば岩場に計5匹の亀が大集合していました。
その内訳は、大型のミシシッピアカミミガメ×1、クサガメ♂成体×1、小型の若いクサガメ×2、大型のクサガメ♀×1でした。
日光に対して各個体の体の向きはバラバラでした。



つづく→池の岩場に集まる生き物の営み【10倍速映像】亀・鯉・鴨


クサガメ♀♂@蓮池:岩場+乗り上げマウント
クサガメ:若い個体a@蓮池:岩場+甲羅干し
クサガメ:若い個体a@蓮池:岩場+甲羅干し
クサガメ:若い個体b@蓮池:岩場+甲羅干し

川辺りで激しく縄張り争いするハグロトンボ♂



2019年8月下旬・午前10:05頃

平地を流れる川の支流(正式用語は「側方流」?)で多数のハグロトンボ♂(Calopteryx atrata)が激しい空中戦を繰り広げていました。
メタリック・グリーンに輝く長い腹部が♂の特徴です。(♀は黒色)
あまりにも激しく飛び回るので、途中で見失ってしまうことも多く、流し撮りに苦労しました。

2匹の♂同士が空中で争ったり相手を追い回したりして縄張りの端に来ると、今度は隣の縄張りの主♂が参戦し、三つ巴の争いになります。
止まった場所を中心とした縄張りにライバル♂が領空侵犯すると直ちにスクランブル発進し、縄張り争いの連鎖反応が目まぐるしく繰り広げられます。

激しい縄張り争いに疲れたのか、川岸に生えたタニウツギ灌木の葉に3匹の♂が止まりました。
休戦状態でも漆黒の翅を素早く開閉して誇示しています。
強く反り返った腹端を持ち上げるのも威嚇誇示なのかな?(腹端下面が白いことに注目:後述)

図鑑『日本のトンボ』p47によると、

(ハグロトンボの)成熟♂は日中、川辺の植物や石に静止して縄張り占有する。気温の高い日には、時おり翅をパッと開く
今回は気温を測り忘れました。

1匹の♂が川岸のヨシの葉に止まっていると、隣の縄張りから飛来しました。
するとヨシの葉の上に止まったまま腹端を高々と持ち上げ、黒い翅を羽ばたかせました。
これは侵入したライバル♂に対する威嚇誇示なのでしょう。
その傍で侵入♂は挑発的にホバリング(停空飛翔)します。
すると縄張りの主は堪らずヨシの葉から飛び立ち、追いかけっこが始まりました。
近くに居たもう一匹の♂も参戦し、狂乱状態になります。
あちこちで争いの連鎖が勃発するので、どこにカメラを向けたら良いのか目移りしてしまいます。

ハグロトンボ♂の空中戦を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:40〜)
清流の水面に映る影の羽ばたきも美しいですね。
2匹の♂が羽ばたきながら空中でかなり接近し、互いに向き合いつつ一瞬ホバリングしていました。
一方が逃げ出すと他方が追いかけます。
一体どうやって勝敗が決まるのか、私には分かりませんでした。

コンクリートのブロックで護岸された水際では2匹のハグロトンボ♀が並んで休んでいました。(@4:05)
ハグロトンボ♀は腹部も含めて全身が真っ黒です。
左の♀個体が翅を閉じたまま静止している間、右の♀個体は真っ黒な翅をパッパっと開閉してアピールしています(誇示行動)。
翅に偽縁紋が無いので、アオハダトンボ♀ではありません。
産卵中の♀は見ていません。
この小川には小魚の群れが泳いでいるので、もしハグロトンボ♀が水中に産卵したら、ほとんど魚に捕食されてしまうでしょう。
だからハグロトンボ♀は植物の組織内に産卵するのでしょう。
♂は縄張り争いに明け暮れるばかりで、近くに居る♀と交尾しようとしないのは、とても不思議でした。
おそらくこの辺りは最強の♂の縄張りで、♀を囲ってがっちり警護しているのかもしれませんが、私は見落としました。


ハグロトンボ♂を片端から捕獲して個体識別のマーキングを施してから放ち、縄張り争いを長時間観察したら面白そうです。
目立つ色で翅にペイントしてしまうと、ハグロトンボの行動(種の認識)に悪影響を及ぼしてしまうかな?
(胴体にペイントしたら大丈夫?)

人工的な色を塗るのではなく翅に小さな切れ込みを入れて個体標識するという手もあります。

今回はてっきりハグロトンボ♂だと思い込み、撮影しただけで採集していません。
しかし映像を見直すと、本当にハグロトンボ♂なのか、気になる点がありました。
葉に止まったときなど、上に反り返った腹端の下面(腹面)が白い個体が居ました。
これはアオハダトンボ♂(Calopteryx japonica)の特徴です。
ここには2種のトンボが混棲しているのでしょうか?
しかし図鑑『日本のトンボ』によれば、アオハダトンボは準絶滅危惧種NTらしく、山形県南部に分布するという記録は無いようです。
今回同じ水域で見かけた♀は間違いなくハグロトンボでした。
撮影した8月下旬はアオハダトンボ成虫の出現期(6〜7月)にしては遅く、ハグロトンボ成虫の出現期(7〜8月)に合致しています。

この同属2種は出現期をずらして棲み分けをしているのでしょう。
今回は強い日差しが反射した結果、ハグロトンボ♂の腹端が白く見えただけ、という可能性もありそうです。(苦しい言い訳?)
来季は念の為にトンボを採集してしっかり同定するつもりですが、秋の台風で川がひどく増水したので棲息環境が破壊されてしまったかもしれません。
川底から湧き水が出て、年間を通して水温が安定していることがハグロトンボのヤゴの生育に必要なのだとか。(参考:月刊かがくのとも2014年6月号・吉谷昭憲『はぐろとんぼ』)



ハグロトンボ♂@タニウツギ葉+翅開閉誇示
ハグロトンボ♂2@タニウツギ葉+翅開閉誇示(左の個体は上に曲げている腹端腹面が白いのでアオハダトンボ♂かも?!)
ハグロトンボ♀2@小川岸+翅開閉誇示

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