2024年2月下旬〜3月上旬
雪が積もった休耕地でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が越冬する営巣地を自動撮影カメラで見張っています。
シーン1:2/28・午後13:02・くもり・気温7℃(@0:00〜)
雪がほとんど溶けて、地表面が露出しています。
白昼堂々、右からホンドギツネ(Vulpes vulpes japonica)が登場しました。
尻尾の毛が抜け落ちて細く見える個体「細尾」で、疥癬の症状と思われます。
関連記事(20日前の撮影)▶ 疥癬で毛が抜けたホンドギツネがニホンアナグマの越冬用巣穴を覗いて回る【トレイルカメラ】
雪原に立ち止まっている間に、左後脚で左前脚を掻いたり、そのまま座り込んで左脇腹を掻いたりしています。
やはりヒゼンダニが体外寄生した皮膚の猛烈な痒さに悩まされているようです。
この営巣地のタヌキに感染が拡大しないことを祈るしかありません。
疥癬キツネは立ち上がって一旦手前の二次林に立ち去ったものの、すぐに同一個体が戻ってきました。
今度はタヌキの巣口Mfに真っ直ぐ向かい、覗き込んで匂いを嗅いでいます。
奥の巣口Mbおよび右の巣口Rも順に点検し、そのまま巣穴Rの中に侵入したので驚きました。
同じキツネでも「フサ尾」個体よりも大胆でした。
巣穴の主のタヌキから全く抵抗を受けませんでした。
タヌキの巣穴Rを(留守中に?)あっさり乗っ取ったのでしょうか?
シーン2:2/29・午後20:37・気温2℃(@0:45〜)
新機種のトレイルカメラでも、画角の縦方向の動きを検知するのは苦手で、どうしても起動が遅れてしまいます。
翌日の晩に、尻尾の毛が抜け落ちた疥癬個体の「細尾」が、営巣地からまっすぐ手前の二次林に立ち去るところでした。
もしも出巣Rした直後だとすると、巣内で丸一日以上も過ごしたことになります。
シーン3:3/2・午前2:04・降雪・気温-3℃(@0:52〜)
2日後の深夜、寒の戻りで雪が降っていました。
雪面の足跡を読み取ると、疥癬キツネの「細尾」が巣穴Rから外に出てきて手前までやって来たようです。
シーン4:3/2・午前8:55・晴れ?・気温0℃(@1:00〜)
約7時間後の明るい朝、辺りは新雪に覆われ一面の銀世界になっていました。
疥癬キツネの「細尾」が画面右下隅の匂い転がりポイントで立ち止まり、身震いしてから右へ立ち去りました。
雪面が眩しくて見づらいのですが、自動色調補正を施すと、キツネの足跡が巣穴Rから手前に続いていました。(@1:07)
シーン5:3/2・午前9:20・晴れ・気温4℃(@1:11〜)
約30分後、快晴となり雪原は強烈に眩しくなりました。
右下隅から登場した疥癬キツネの「細尾」が自分の足跡を忠実に辿って、まっすぐ巣穴Rに帰巣しました。
シーン6:3/4・午前8:40・降雪・気温0℃(@1:27〜)
2日後、雪がしんしんと降りしきる朝に疥癬キツネの「細尾」が右からやって来ました。
いったん巣口Mbに立ち寄って中を覗き込んでから、巣穴Rの中に潜り込みました。
シーン7:3/5・午前10:08・晴れ?・気温11℃(@1:49〜)
翌日の朝、雪は降り止んでいました。
疥癬キツネの「細尾」が出巣Rする瞬間をいつも撮り損ねてしまいます。
手前の右へ立ち去りました。
左の巣穴Lに向かって2列の足跡が付いているのに、そのシーンが撮れていないのも気になります。 (誰の足跡か不明)
シーン8:3/6・午前10:08・くもり・気温11℃(@1:56〜)
翌朝も出巣Rシーンを撮り損ねたのか、疥癬キツネの「細尾」が手前に向かって歩いて来ました。
奥の雪原は眩しく白飛びしていて、巣穴が全く見えません。
シーン9:3/7・午後21:02・気温-2℃(@2:03〜)
翌日の晩に、監視カメラが起動しました。
前日にキツネが付けた古い足跡が巣口Mfから手前の二次林に向かって続いています。
外出から戻った疥癬キツネの「細尾」が奥の営巣地に向かって歩く後ろ姿が写っていました。
雪面は固く凍結していて、キツネが歩いても新しい足跡は残りません。
身震いしてから右の巣穴Rに潜り込みました。
シーン10:3/8・午前10:15・晴れ・気温12℃(@2:22〜)
翌日の明るい朝遅く、疥癬キツネの「細尾」が出巣Rしたシーンをまた撮り損ねたようです。
眩しい雪原で身震いしてから右手前に立ち去りました。(二次林内へ)
シーン11:3/9・午前4:42・気温-3℃(@2:29〜)
翌日の未明、左下手前から戻ってきた疥癬キツネの「細尾」が右へ回り込んでから入巣R。
監視カメラの電池が消耗したせいで、暗視用の赤外線が遠くまで届かなくなりました。
※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。
【考察】
まったく予想外の展開になりました。
疥癬に感染したホンドギツネ「細尾」が、ホンドタヌキが越冬する巣穴Rをあっさり乗っ取ったようです。
タヌキと違ってキツネは自力で巣穴を掘れるはずなのに、チャンスがあれば乗っ取りも辞さないのでしょう。
タヌキと激しい争い(巣穴を巡る闘争)があったのか、少なくともこの監視カメラには写っていませんでした。
タヌキの留守中を狙ったのでしょうか。
以前、このキツネがタヌキの営巣地で転げ回って自分の毛皮に先住者の匂いを付けていたのは、やはり巣穴への侵入・乗っ取りが目的だったのかもしれません。
タヌキの巣穴の乗っ取りに成功した以降、キツネは地面転がりの行動をやらなくなりました。
関連記事(同所同時期の撮影)▶ ホンドタヌキが越冬する営巣地の端で雪面や地面を転げ回って匂い付けするホンドギツネの謎【トレイルカメラ:暗視映像】
あるいは、タヌキとキツネが「同じ穴の狢 」として仲良く同居しているのかもしれません。
関連記事(2/29および3/11に帰巣Mf)▶ 晩冬の雪原に帰巣するホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】
2種が同居したとなると、ますますヒゼンダニの感染拡大が心配になります。
この営巣地には巣穴の入口が少なくとも4つあり、内部構造がどう連結しているのか分かりませんが、キツネはタヌキの巣穴の一部を間借りしているだけかもしれません。
今のところキツネは巣口Rに、タヌキは巣口Mfに出入りしています。(棲み分け?)
いずれにせよ、穴居性のキツネが別種(タヌキ)の巣穴を乗っ取って住み着いたのは、巣穴を掘る労力を節約するための労働寄生と言えます。
そもそも、この営巣地は元々ニホンアナグマが掘った巣穴をタヌキが乗っ取ったのではないかと、私は疑っています。
そのキツネにはヒゼンダニが体外寄生しており、複雑な生態系を織りなしています。
キツネは夜だけでなく明るい昼間も巣外で活動しているのが意外でした。
素人の予想では、疥癬キツネの「細尾」はおそらく♀で、これから巣穴Rの中で出産しそうです。
しかし、生まれた子供も授乳など母親♀との濃厚接触により疥癬に感染してしまうでしょう。
私はまだキツネの観察歴が浅いのに、いきなりトリッキーな(入り組んだ)応用問題に直面して、困ってしまいました。(嬉しい悲鳴)
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