2021/04/26

寄主アカタテハの蛹から羽化した寄生蜂の群れ【名前を教えて】

 

アカタテハの飼育記録#14 


今季はカラムシの群落で見つけたアカタテハVanessa indica)の垂蛹を計4頭採集し、室内で飼育してきました。 
そのうち3頭a-cは無事に成虫が羽化したものの、残る1頭dは蛹の時点で異常でした。 
しつこく蛹をつまんだりしても全く無反応だったので、体内寄生されているだろうと予想しました。
▼前回の記事(24日前の撮影) 
アカタテハ蛹の体内寄生チェック

2020年11月中旬・午後 

被寄生アカタテハ垂蛹dを密閉容器(直径10cm、高さ8cmの円筒容器)に隔離して放置していたところ、ようやく予想通り微小な寄生蜂の成虫が多数羽化していました。 
羽化の前兆が全く分からなかったので、その瞬間を動画に記録できなかったのが心残りです。 
寄主のアカタテハ垂蛹に黒くて丸い穴が一つ開いています(脱出孔)。 

寄生蜂はかなり微小で全身が黒光りしていて、脚だけが黄土色。 
素人目にはずんぐりむっくりの体型に見えます。 
触角もコマユバチと比べて短いようです。 
腹面から接写しても腹端に産卵管も見えないのが不思議です。(♂だから?) 

寄主の蛹に産卵する殺傷型内部捕食性多寄生蜂のようです。 
可能性は低いものの、高次寄生蜂(寄生蜂に寄生する蜂)かもしれません。 
寄生蜂の終齢幼虫が寄主の外に脱出して繭を紡ぐことはしなかったので、コマユバチ科ではありません。 (寄主アカタテハの蛹を解剖したら内部に寄生バチの繭が多数残されているのかな?) 

表面が汚れている透明プラスチック容器越しに撮ったので、やや不鮮明な映像です。 
(予め容器の蓋を外して代わりに薄いサランラップを張っておくべきでした。) 
立ち止まって身繕いしている個体がいました。 
しかし容器内を飛び回る個体は見当たりませんでした。 

昼行性なので当然ながら正の走光性があり、照明(白色LEDのUSBリングライト)の光に向かって画面の左上に進みます。 
その結果、明るい照明に向いた容器壁面に寄生蜂は集結していました。 
円筒容器をくるくる回すと、寄生蜂は光が射す方向に歩いて移動し、再集合します。(走光性の実演) 
このとき交尾している♀♂ペアが居たのに気づきませんでした。(@1:40:画面中央) 

森昭彦『イモムシのふしぎ:ちいさなカラダに隠された進化の工夫と驚愕の生命科学』という本でアカタテハについて調べると、
 アカタテハは寄生率がとても高く、4齢から終齢に育ったころ、ちいさなハチの子が20〜30匹もでてくる。(p170-171より引用)
残念ながら寄生蜂の名前(学名)を正確に記されていませんでした。 
ただし、今回私が観察した寄生蜂はアカタテハの幼虫ではなく蛹から成虫が出てきたので、この本の記述とも違いますね。 

寄生蜂の種類を同定してもらうために、容器内に多数残された寄生蜂の死骸を接写して写真を掲載する予定です。 
(動画の整理で忙しく、なかなか手が回りません…。) 
肉眼では黒色に見えたのですが、写真を撮るためにストロボを焚くと体表が金属光沢の緑色(構造色のメタリックグリーン)に輝くようです。
少なくとも羽化した個体数と性比ぐらいはしっかり調べるつもりです。 
寄生蜂の成虫の翅脈を接写すれば、ヒメバチ科かコマユバチ科か簡単に見分けられるのだそうです。 

今のところ何の根拠もありませんが、素人のあてずっぽうでコガネコバチ科のアオムシコバチ(Pteromalus puparum)の仲間かな?と勝手に予想してみました。 
ただしアオムシコバチの寄主はシロチョウ科およびアゲハチョウ科と書いてあり(『狩蜂生態図鑑』p148)、タテハチョウ科は含まれていなかったので、おそらく別種と思われます。 (※追記参照)
そもそもアカタテハの幼虫はいわゆる「アオムシ型」ではありません。 

Information Station of Parasitoid Waspsサイトで寄主から検索しても、アカタテハは今のところ登録されていませんでした。 

※【追記】
英語版Wikipediaではオーストラリアに産するタテハチョウ科のVanessa iteaに蛹寄生する蜂の一例としてアオムシコバチ(Pteromalus puparum)が上げられていました。
どうやら寄主選択性が低く、タテハチョウ科にも寄生できるようです。

シリーズ完。

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